講演情報

[J-P-18]2025年9月8日と2026年3月3日に起こった皆既月食時の月の明るさの違いは何か?

*鹿児島県立 国分高等学校1 (1. 鹿児島県立国分高等学校)
PDFダウンロードPDFダウンロード
研究者氏名:稲留彩希,坂元伶衣,川原陽飛,山口晴加

私達は,2025年9月8日と2026年3月3日に起こった皆既月食の観測を行った。観測に使用した機材鏡筒は、タカハシ製16cm反射望遠鏡,赤道儀で電動追尾を行った。撮影に使用したカメラはCanon EOS 60D(無改造,直焦点撮影)で,撮影枚数は9月8日が546枚,3月3日が582枚である。観測場所は2回とも霧島市城山公園で,両日とも桜島や霧島新燃岳の降灰の影響はなかった。観測時の天気は,9/8は概ね晴れで,3/3は終始快晴だった。月食時の月の明るさについては国立天文台版「ダンジョンスケール」を用い,皆既食最大の時刻で月の明るさを肉眼で判定した。観測した2回の月食では,Instagramを使って、皆既月食時の月の明るさを肉眼で計測するキャンペーンを実施した。9/8は海外を含めて日本全国から26人の報告があり、平均でL=1.9のやや暗めの月食だった。一方,3/3も同様にInstagramを用いて観測協力をお願いし,国内のみで53人からの報告があった。観測結果は平均L=2.8でやや明るい月食だった。およそ半年の間に起こった2回の月食の月の明るさが異なる原因を次の①~⑤を調べて考察を行った。①天気の違い、②食分の違い、③月の高度の違い、④月食時の霧島市上空の大気の濁り具合、⑤月食時太陽光の入射する地域の大気の濁り具合、①~⑤の5つの観点で原因を調査した。①は両日とも皆既食最大の時刻では共に快晴で違いは無かった。②は9/8は1.37、3/3は1.16で0.21の違いがある。③9/8は高度で32.7度、3/3は高度で29.2度で違いは小さい。④は九州大学竹村先生からエアロゾルの光学的厚みのデータをいただいた。9/8は0.226、3/3は0.031で0.195の差が見られる。⑤は両日の皆既食最大時刻における九州大学SPLINTERSのエアロゾルの光学的厚みと太陽光が地球に届く範囲のデータを照合したところ、9/8は0.450で太陽光が通過する地域が濁りが大きく、逆に3/3は0.085であまり濁っていなかった。以上のことから、②④⑤が2回の最大食時刻での月の明るさの違いに影響したと考えた。②については食分が大きいほど、最大食時の月の明るさは一般的に暗くなるとされるが、先輩達が観測した2022年11月8日の皆既月食での食の最大時の月の明るさはL=3.0で、9/8よりは明るく3/3と同程度であった。このときの食分は1.37で9/8とほぼ同じで、高度は37.0度と差が4.3度であることから推測して、②の影響は小さいと考えた。次に④と⑤については国分高校(2022)によると、火山爆発指数(VEI)=5以上でL=0,L=1の暗い月食になるとされる。今回の2回の月食が起こる前の2年間でVEI=5以上の大噴火は国内外で報告が無かったが、VEI=3~4の噴煙高度が成層圏まで到達している大噴火が6回発生している(気象庁2026,2025,2024)。成層圏まで到達した噴煙から生じた硫酸エアロゾルは数年間、成層圏に滞留するとされる(五藤2024)。また成層圏内ではブリュワードブソン循環により大気が移動しており、NASA(2014)によると1~2m/sの速さである。これらをもとに、9/8最大食時の成層圏の濁りを引き起こした原因になると思われる火山の大噴火を気象庁(2026,2025,2024)の報告から調べたところ、2024年11月7日のインドネシアのレウォトビ火山(噴煙高度16km、VEI=4)と2024年4月30日のインドネシアのルアング火山(噴煙高度19km、VEI=?)の大噴火により放出された噴出物起源の硫酸エアロゾルが成層圏に滞留して、9/8の月食時に月の明るさをやや暗くした可能性がある。

キーワード:皆既月食,ダンジョンスケール,VEI,エアロゾル,成層圏

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン