講演情報

[T3-O-3]S-Cマイロナイトに伴われるシュードタキライト:下部地殻における延性変形と地震断層の関係

*西山 忠男1、河上 哲生2 (1. 熊本大学、2. 京都大学)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

シュードタキライト、S-C マイロナイト、地震断層、延性変形、脆性-延性遷移領域

 肥後変成岩中の断層帯にS-Cマイロナイトに伴われるシュードタキライトを見出した. 問題のシュードタキライトは, 肥後変成岩のザクロ石・菫青石帯(Maki et al., 2004)中の断層帯に見いだされた. この断層帯は珪質片麻岩と大理岩の間に幅30 mにわたって発達する. 断層帯は珪質片麻岩の走向(N85oE)とほぼ平行に発達し, N70oW~N85oWの走向を有する. 断層帯は南側で大理岩と接し, 北側で幅5~7mの破砕された蛇紋岩を介して珪質片麻岩と接する. 露頭周辺には径1 m程度のスピニフェックス様組織を示す蛇紋岩(Nishiyama et al., 2020)の転石が数個認められる. 大理岩は厚さ50 m程度の層状岩体で, N75oWの走向を示し側方へ数100 m追跡できる. 大理岩岩体の内部は塊状であるが, 中央部は幅数mmの石英脈が多数平行に発達する縞状組織を有し, その走向は岩体の走向と平行である. 以上の構造から, この大理岩は蛇紋岩の構造的貫入を伴う構造運動によって珪質片麻岩の中に定置したものと考えられる. 大理岩中にも幅10 cmに達する黒色シュードタキライト脈が発達し, 境界断層と平行なN70oW, 85 oSの走向傾斜を示す(Nishiyama and Fujimoto, 2019 ).大理岩と断層帯の境界の断層面(N70oW, 85oS)上には, N75oW, 20oのスリッケンラインが確認される. 問題の断層帯内部にはさまざまな変形構造が発達するが, 一部に典型的なS-C マイロナイトの構造が観察される.マイロナイトの波状面構造 ( wavy-shaped foliation: S面 ) をリーデル剪断面(C’面またはR1面)が切る構造が観察される. また断層面に平行な剪断面(C面またはY面)の発達も顕著である. C’面はC面に連結しているように見える. シュードタキライトはC面およびC’面に沿って形成されているものが多い. シュードタキライトは他にinjection veinとしてC面およびC’面以外の剪断面に産したり, network veinを形成していたりする. 鏡下では, 層状構造を示すガラス質のシュードタキライトが黒色層中でフラグメント化し, カタクレーサイト様の組織を示す. フラグメント中の石英粒子は動的再結晶していることから, これらの原岩はマイロナイトであることが分かる. 以上の観察から,マイロナイト→シュードタキライト形成→カタクレーサイト化という順序が確認でき, シュードタキライトは脆性–延性遷移領域で形成されたことが明らかである.S-Cマイロナイトは剪断面の形成を伴う延性変形によって形成され, シュードタキライトは摩擦滑りによる地震発生断層により形成されるとされている. このような異なる変形様式の岩石が共存することは, 地殻下部において変形様式が脆性破壊から延性変形に移行する遷移帯の力学的挙動に対する重要な情報を提供する事例として注目されてきた. シュードタキライトの形成モデルには大きく分けると, 摩擦融解モデルと粘性散逸モデルがある. 摩擦融解モデルは直感的に理解しやすい一方で, 延性変形領域で摩擦融解を引き起こすような高速破壊が生じうるかという疑問を生じさせる. 粘性散逸モデルはひずみが集中した狭い領域でひずみエネルギーが熱エネルギーに転化することで融解が起こるというモデルで, 延性変形領域でのシュードタキライトの形成の説明によく用いられる. しかし融解領域の時間空間スケールは, 天然のシュードタキライトのそれよりはるかに大きい. Shimamoto(1986)は岩塩の変形実験に基づき, 脆性破壊から延性変形に至る遷移帯として準延性変形領域が存在することを示し, そこでの変形様式は延性変形領域のそれと基本的には同じだが, 剪断抵抗は圧力依存であり, 低圧領域では断層運動が生じうることを示した. そしてS-Cマイロナイトはその準延性変形領域で形成されることを主張した. この実験から判断すると, S-Cマイロナイトに伴うシュードタキライトは, 低圧領域での断層運動における摩擦融解によって, S-Cマイロナイトと同時に形成されたと考えられる.   ReferencesMaki, K. et al. (2004) JMPS, 99, 1–18.Nishiyama, T. and Fujimoto, T. (2019) Abstract, JpGU.Nishiyama, T. et al. (2020) Island Arc, 30e12382. Shimamoto, T. (1989) JSG, 11, 51–64.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン