講演情報
[T4-P-2]南極・東ドロンイングモードランドの砕屑性ジルコンと長期変成期間の広域解析によるテクトニクスへの制約
*中野 伸彦1、馬場 壮太郎2、加々島 慎一3、外田 智千4 (1. 九州大学、2. 琉球大学、3. 山形大学、4. 極地研究所)
キーワード:
砕屑性ジルコン、U-Pb年代、変成年代、Hf同位体、ゴンドワナ
東ドロンイングモードランドはゴンドワナ大陸形成時の造山帯を構成し,西から東にかけて,セールロンダーネ山地,やまと・ベルジカ岩体,リュツォ・ホルム岩体,西レイナー岩体に区分され,その全長は1000 km以上におよぶ.これらの岩体は,リュツォ・ホルム岩体の一部を除き,約6〜5億年前の変成岩類を主体とし,その温度ー圧力履歴は各地域で解析されつつある.一方で,セールロンダーネ山地を除き,各岩体の形成テクトニクスの解析までには至っておらず,各岩体の関係性も議論されていない.主たる要因は原岩情報の不足であり,特に大陸集合前の大陸配置や大陸衝突開始時期を制約する変成堆積岩の砕屑性ジルコンに関する基礎データが不足している.本研究では,リュツォ・ホルム岩体とやまと・ベルジカ岩体を対象として,広域的な砕屑性ジルコンの解析を行い,ゴンドワナ造山帯形成テクトニクスの制約を目指す.
リュツォ・ホルム岩体は,ジルコンによる原岩年代によりユニット区分されている [1].岩体西部には約25億年前と20〜18億年前の原岩が分布しており,後者は前者の地殻の再溶融により形成されたとみなされている [2].これらの原岩ユニットをはさみ,東西に約10億年前の原岩ユニットが存在し,東部ユニット中に6〜5億年前の変成作用を欠く日の出ブロックがある.やまと・ベルジカ岩体はリュツォ・ホルム岩体西端から約200 km南西に位置し,6.6〜5.4億年前の変成年代が報告されているが,詳しい原岩年代は不明である.本研究では,25億年前の原岩ユニットとしてルンドボークスヘッタ2試料,東部10億年ユニットとしてオングル島2試料,日の出ブロックとしてちぢれ岩3試料,西部10億年ユニットとしてベストホブデ3試料,やまと・ベルジカ岩体としてやまと山脈南部1試料の変成堆積岩の解析を行った.
ルンドボークスヘッタとベストホブデのジルコンは,コア・マントル・リムの構造が顕著である.一般にマントルはTh/U比が低く,年代がバラつく傾向にある.平均年代はそれぞれ約580〜570 Maと620〜600 Maである.ベストホブデの年代はやまと山脈のジルコンリムの年代 (612±13 Ma) と調和的である.一方で,オングル島のジルコンリムの平均年代は2試料とも546 Maと明確に若い.ちぢれ岩の3試料は950〜940 Maの年代をしめし,約550 Maをしめすジルコンも2粒子確認した.
ルンドボークスヘッタのジルコンコアは多くの場合,ディスコーダント年代をしめすが,そのPb-Pb年代は概ね2.7〜2.4 Gaの範囲におさまる.ちぢれ岩は,3試料中1試料のみに砕屑性コアが認められ,1.1〜0.95 Gaの狭い年代範囲に収まる.他の3地域は750〜700 Maの堆積上限年代をしめし,ベストホブデが1.1〜0.75 Ga,オングル島が1.2〜1.0 Ga,やまと山脈が1.0〜0.7 Gaのジルコンが卓越する.各地域とも約1.9〜1.6 Gaや2.5 Gaのジルコンが含まれ,オングル島では特徴的に古いジルコンコアがTh/U比の低い約950 Maのマントルに囲まれる.1.9〜1.6 Gaのジルコンはベストホブデとオングル島に認められ,前者はεHf値が-16〜-11であるのに対して,後者は-2〜+2に集中する.1.2〜0.75 Gaの年代をしめす砕屑性ジルコンも地域ごとにHf同位体の特徴が異なる.ちぢれ岩のジルコンは非常に枯渇し,そのイプシロン値は+9〜+12をしめす.オングル島の多くのジルコンも正の値をしめし,同ユニットの珪長質片麻岩のジルコンの値 [3]と類似する.ベストホブデのジルコンは多様であるが,-10〜+5のややエンリッチしたものが多い.やまと山脈は約0.85 Gaを境界に古いジルコンは正の値をしめすが,若いジルコンは極端にエンリッチした値 (<-15) をしめす場合が多い.
現時点のデータから,ちぢれ岩をふくむ日の出ブロックは10億年前の初期島弧として良さそうである.オングル島を含む東部10億年ユニットは10億年の地殻を主とした微小地塊として捉え,約950 Maの変成マントルを持つ古原生代ジルコンは,より東部のレイナー岩体由来の砕屑性ジルコンの可能性が高い.一方で,やまと山脈の850 Maよりも古い枯渇したジルコンは,より西部のTOAST (Tonian Oceanic Arc Super Terrane) との関連が示唆される.また,850 Maより若い著しくエンリッチしたジルコンも極めて特徴的であり,今後のセールロンダーネ山地やベルジカ山脈との関連を考える鍵となるだろう.当日は追加データとともに,変成期間の違いも含めて議論する予定である.
引用文献:[1] Dunkley et al., 2020, Polar Sci. 26, 100606. [2] Nakano et al., 2025, Gondwana Res., 142, 73–91. [3] Tsunogae et al., 2015, Precam. Res., 266, 467–489.
リュツォ・ホルム岩体は,ジルコンによる原岩年代によりユニット区分されている [1].岩体西部には約25億年前と20〜18億年前の原岩が分布しており,後者は前者の地殻の再溶融により形成されたとみなされている [2].これらの原岩ユニットをはさみ,東西に約10億年前の原岩ユニットが存在し,東部ユニット中に6〜5億年前の変成作用を欠く日の出ブロックがある.やまと・ベルジカ岩体はリュツォ・ホルム岩体西端から約200 km南西に位置し,6.6〜5.4億年前の変成年代が報告されているが,詳しい原岩年代は不明である.本研究では,25億年前の原岩ユニットとしてルンドボークスヘッタ2試料,東部10億年ユニットとしてオングル島2試料,日の出ブロックとしてちぢれ岩3試料,西部10億年ユニットとしてベストホブデ3試料,やまと・ベルジカ岩体としてやまと山脈南部1試料の変成堆積岩の解析を行った.
ルンドボークスヘッタとベストホブデのジルコンは,コア・マントル・リムの構造が顕著である.一般にマントルはTh/U比が低く,年代がバラつく傾向にある.平均年代はそれぞれ約580〜570 Maと620〜600 Maである.ベストホブデの年代はやまと山脈のジルコンリムの年代 (612±13 Ma) と調和的である.一方で,オングル島のジルコンリムの平均年代は2試料とも546 Maと明確に若い.ちぢれ岩の3試料は950〜940 Maの年代をしめし,約550 Maをしめすジルコンも2粒子確認した.
ルンドボークスヘッタのジルコンコアは多くの場合,ディスコーダント年代をしめすが,そのPb-Pb年代は概ね2.7〜2.4 Gaの範囲におさまる.ちぢれ岩は,3試料中1試料のみに砕屑性コアが認められ,1.1〜0.95 Gaの狭い年代範囲に収まる.他の3地域は750〜700 Maの堆積上限年代をしめし,ベストホブデが1.1〜0.75 Ga,オングル島が1.2〜1.0 Ga,やまと山脈が1.0〜0.7 Gaのジルコンが卓越する.各地域とも約1.9〜1.6 Gaや2.5 Gaのジルコンが含まれ,オングル島では特徴的に古いジルコンコアがTh/U比の低い約950 Maのマントルに囲まれる.1.9〜1.6 Gaのジルコンはベストホブデとオングル島に認められ,前者はεHf値が-16〜-11であるのに対して,後者は-2〜+2に集中する.1.2〜0.75 Gaの年代をしめす砕屑性ジルコンも地域ごとにHf同位体の特徴が異なる.ちぢれ岩のジルコンは非常に枯渇し,そのイプシロン値は+9〜+12をしめす.オングル島の多くのジルコンも正の値をしめし,同ユニットの珪長質片麻岩のジルコンの値 [3]と類似する.ベストホブデのジルコンは多様であるが,-10〜+5のややエンリッチしたものが多い.やまと山脈は約0.85 Gaを境界に古いジルコンは正の値をしめすが,若いジルコンは極端にエンリッチした値 (<-15) をしめす場合が多い.
現時点のデータから,ちぢれ岩をふくむ日の出ブロックは10億年前の初期島弧として良さそうである.オングル島を含む東部10億年ユニットは10億年の地殻を主とした微小地塊として捉え,約950 Maの変成マントルを持つ古原生代ジルコンは,より東部のレイナー岩体由来の砕屑性ジルコンの可能性が高い.一方で,やまと山脈の850 Maよりも古い枯渇したジルコンは,より西部のTOAST (Tonian Oceanic Arc Super Terrane) との関連が示唆される.また,850 Maより若い著しくエンリッチしたジルコンも極めて特徴的であり,今後のセールロンダーネ山地やベルジカ山脈との関連を考える鍵となるだろう.当日は追加データとともに,変成期間の違いも含めて議論する予定である.
引用文献:[1] Dunkley et al., 2020, Polar Sci. 26, 100606. [2] Nakano et al., 2025, Gondwana Res., 142, 73–91. [3] Tsunogae et al., 2015, Precam. Res., 266, 467–489.
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