講演情報
[T4-P-9]北海道浦河町元浦川上流地域の下部地殻岩石から見た日高変成帯の形成過程
*菅原 菜々美1,2、豊島 剛志2、Satish-Kumar Madhusoodhan2、植田 勇人2、福田 倫太郎2,5、小山内 康人3、Sajeev Krishnan4 (1. 株式会社ナルサワコンサルタント、2. 新潟大学、3. 九州大学、4. インド理科大学院大学、5. 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)
日高変成帯において,約45 Ma以降に複数回の変成・火成作用(熱イベント)によって大陸地殻形成が起こったとされている(Kemp et al., 2007; Jahn et al., 2014;志村ほか,2015;菅野・豊島,2019;Kanno et al., 2020; Takahashi et al., 2021など).また,志村ほか(2018)は,ジルコンの累帯構造から37Maと19Maの変成作用の重複を示した.
元浦川上流地域以南(日高変成帯南部)では,断層によるグラニュライトなどの変成岩・深成岩の繰り返し,デュープレックス構造の発達が報告されている(豊島・卯田,1981;Toyoshima et al., 2004など).野塚岳周辺地域では,貫入関係にある,形成年代の異なる3つの深成岩が識別され,それぞれがグラニュライトを包有する(菅野・豊島,2019;Kanno et al., 2020).これは,年代の異なるグラニュライトがあることを示唆する.さらに,幌満地域では,グラニュライトなどをブロックとして包有する19Maのトーナル岩が,37Maに形成された日高変成帯上部層にシート状に貫入している(福田ほか,2024).元浦川上流地域では,圧力低下しながらの温度上昇の後,東西ないし北東南西圧縮による逆断層運動によって変成岩・トーナル岩の上昇・繰り返しが起こっている(菅原ほか,2024).しかし,日高変成帯形成を引き起こした複数回の熱イベントに関わるテクトニクスや衝突の実体はいまだ曖昧のままである.そこで,日高変成帯の衝突過程・テクトニクスが保存されていると考えられる元浦川上流地域において変形・変成作用の解析とジルコン年代測定を継続し,新知見を得たので報告する.
野外観察および岩石記載に基づき,本調査地域をマイロナイトユニット,グラニュライトユニット,褐色ホルンブレンド角閃岩ユニットに区分した.調査地域中央部では,グラニュライト相条件において逆断層センスの剪断変形によるグラニュライトの繰り返しが起こったと考えられる.
グラニュライトユニットでは,泥質岩のザクロ石・斜長石の化学組成累帯構造におけるCa含有量の変化から,両鉱物のコアからマントルにかけての圧力低下が,ザクロ石のリムにおけるFeの増加およびMgの減少から後退変成作用が示唆される.別の泥質岩においてザクロ石が菫青石に置換される変成組織から,逆断層センスの剪断変形と同時期に圧力低下と若干の温度上昇が起こったことが考えられる.また,ザクロ石–斜方輝石の地質温度計・地質圧力計を用いて,ザクロ石と斜方輝石のそれぞれのコアからリムに向かって圧力上昇・若干の温度上昇が確認された.この圧力上昇・若干の温度上昇は,逆断層運動時の圧力低下・若干の温度上昇に先立って起こった可能性がある.塩基性岩では,閃緑岩貫入に伴って,角閃石が直方輝石に置換されていることから,温度上昇が起こったことが確認された.閃緑岩のジルコン年代から,この温度上昇は37Maに起こったと考えられる.
先行研究(志村ほか,2018;槇納ほか,2018)との比較から,本調査地域のグラニュライトなどの変成岩・深成岩の多くは37 Maに形成されたと考えられる.その際,圧力上昇だけでなく,閃緑岩貫入に伴う温度上昇,逆断層運動時の圧力低下・温度上昇を被ったと考えられる.その後,約19 Maにも変成作用・火成作用を重複して被り,アグマタイト脈が貫入したと考えられる.
以上のことより,菅野・豊島(2019)や福田ほか(2024)を併せて考えると,日高変成帯は,西側が19 Ma,東側が37 Maといった単純な年代分布構造だけではなく,19 Maに形成された地殻の上に37 Maに形成された地殻が単純に重なった構造・接合関係だけではないことが示唆される.同じ日高変成帯であっても地域によって,下部地殻の形成年代・履歴や下部地殻・上部地殻の関係性が異なる可能性がある.また,日高変成帯において,37Maに形成された下部地殻が地層として広がっている可能性のある地域を初めて明らかにした.
引用文献
福田倫太郎ほか(2024)地質学会要旨.
Jahn, B. M. et al. (2014) Amer. Jour. Sci., 314, 704-750.
菅野萌子・豊島剛志(2019)JpGU要旨.Kanno M. et al. (2020) Abstracts of JpGU-AGU.
Kemp, A.I.S. et al. (2007) Geology, 35, 807-810.
槇納吏袈ほか(2018)地質学会要旨.
志村俊昭ほか(2015)地質学会要旨.
志村俊昭ほか (2018) 地質学会要旨.
菅原菜々美ほか(2024)地質学会要旨.
豊島剛志・卯田強(1981)地質学会要旨.
Toyoshima, T. et al. (2004) Earth Planets Space, 56, 1209-1215.
Takahashi Y. et al. (2021) Island Arc, 30, id.e12393, 15 pp.
元浦川上流地域以南(日高変成帯南部)では,断層によるグラニュライトなどの変成岩・深成岩の繰り返し,デュープレックス構造の発達が報告されている(豊島・卯田,1981;Toyoshima et al., 2004など).野塚岳周辺地域では,貫入関係にある,形成年代の異なる3つの深成岩が識別され,それぞれがグラニュライトを包有する(菅野・豊島,2019;Kanno et al., 2020).これは,年代の異なるグラニュライトがあることを示唆する.さらに,幌満地域では,グラニュライトなどをブロックとして包有する19Maのトーナル岩が,37Maに形成された日高変成帯上部層にシート状に貫入している(福田ほか,2024).元浦川上流地域では,圧力低下しながらの温度上昇の後,東西ないし北東南西圧縮による逆断層運動によって変成岩・トーナル岩の上昇・繰り返しが起こっている(菅原ほか,2024).しかし,日高変成帯形成を引き起こした複数回の熱イベントに関わるテクトニクスや衝突の実体はいまだ曖昧のままである.そこで,日高変成帯の衝突過程・テクトニクスが保存されていると考えられる元浦川上流地域において変形・変成作用の解析とジルコン年代測定を継続し,新知見を得たので報告する.
野外観察および岩石記載に基づき,本調査地域をマイロナイトユニット,グラニュライトユニット,褐色ホルンブレンド角閃岩ユニットに区分した.調査地域中央部では,グラニュライト相条件において逆断層センスの剪断変形によるグラニュライトの繰り返しが起こったと考えられる.
グラニュライトユニットでは,泥質岩のザクロ石・斜長石の化学組成累帯構造におけるCa含有量の変化から,両鉱物のコアからマントルにかけての圧力低下が,ザクロ石のリムにおけるFeの増加およびMgの減少から後退変成作用が示唆される.別の泥質岩においてザクロ石が菫青石に置換される変成組織から,逆断層センスの剪断変形と同時期に圧力低下と若干の温度上昇が起こったことが考えられる.また,ザクロ石–斜方輝石の地質温度計・地質圧力計を用いて,ザクロ石と斜方輝石のそれぞれのコアからリムに向かって圧力上昇・若干の温度上昇が確認された.この圧力上昇・若干の温度上昇は,逆断層運動時の圧力低下・若干の温度上昇に先立って起こった可能性がある.塩基性岩では,閃緑岩貫入に伴って,角閃石が直方輝石に置換されていることから,温度上昇が起こったことが確認された.閃緑岩のジルコン年代から,この温度上昇は37Maに起こったと考えられる.
先行研究(志村ほか,2018;槇納ほか,2018)との比較から,本調査地域のグラニュライトなどの変成岩・深成岩の多くは37 Maに形成されたと考えられる.その際,圧力上昇だけでなく,閃緑岩貫入に伴う温度上昇,逆断層運動時の圧力低下・温度上昇を被ったと考えられる.その後,約19 Maにも変成作用・火成作用を重複して被り,アグマタイト脈が貫入したと考えられる.
以上のことより,菅野・豊島(2019)や福田ほか(2024)を併せて考えると,日高変成帯は,西側が19 Ma,東側が37 Maといった単純な年代分布構造だけではなく,19 Maに形成された地殻の上に37 Maに形成された地殻が単純に重なった構造・接合関係だけではないことが示唆される.同じ日高変成帯であっても地域によって,下部地殻の形成年代・履歴や下部地殻・上部地殻の関係性が異なる可能性がある.また,日高変成帯において,37Maに形成された下部地殻が地層として広がっている可能性のある地域を初めて明らかにした.
引用文献
福田倫太郎ほか(2024)地質学会要旨.
Jahn, B. M. et al. (2014) Amer. Jour. Sci., 314, 704-750.
菅野萌子・豊島剛志(2019)JpGU要旨.Kanno M. et al. (2020) Abstracts of JpGU-AGU.
Kemp, A.I.S. et al. (2007) Geology, 35, 807-810.
槇納吏袈ほか(2018)地質学会要旨.
志村俊昭ほか(2015)地質学会要旨.
志村俊昭ほか (2018) 地質学会要旨.
菅原菜々美ほか(2024)地質学会要旨.
豊島剛志・卯田強(1981)地質学会要旨.
Toyoshima, T. et al. (2004) Earth Planets Space, 56, 1209-1215.
Takahashi Y. et al. (2021) Island Arc, 30, id.e12393, 15 pp.
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