講演情報

[T4-P-10]岩手県一関市に産する含コランダムホルンフェルスの温度圧力推定と変成年代

*森 祐紀1、足立 達朗2、浜根 大輔3、宮本 知治4 (1. 兵庫県立大学大学院理学研究科、2. 九州大学大学院比較社会文化研究院、3. 東京大学物性研究所、4. 九州大学大学院理学研究院)
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キーワード:

接触変成作用、ホルンフェルス、コランダム、CHIMEモナザイト年代


 岩手県一関市千厩花崗岩体周辺には六角形で粗粒なコランダム含むホルンフェルスが産する (長谷川,1955)。コランダムは一般にSiO2に乏しくAl2O3に富む泥質変成岩中に産する比較的希少な鉱物であり、その形成条件は地殻浅部の接触変成作用や高温変成作用を理解する重要な手掛かりとなる。そのため本研究では、岩石組織観察・鉱物化学分析・全岩化学分析を実施し、CHIME年代測定・相平衡モデリング・地質温度計の適用によって、その成因解明に取り組んでいる。
 試料は千厩花崗岩体との境界付近で天然記念物指定前に採取されたホルンフェルスであり、主に菫青石、斜長石、黒雲母、カリ長石、チタン鉄鉱、紅柱石、コランダムから構成され、少量の珪線石、ヘルシナイト、モナザイト、ジルコンを伴う。コランダムは最大5 mmに達する六角板状の自形結晶として産し、周囲を粗粒な黒雲母とカリ長石が取り囲み、その間には幅の狭い紅柱石が発達する組織を示す。
 全岩化学組成を用いた相平衡モデリングの結果、コランダムは852〜956 ℃、32〜91 MPaという非常に高温・低圧条件でのみ安定であった。これは地下約1.2〜3.4 kmという極めて浅い深度に相当し、サニディナイト相の接触変成作用を示す条件である。コランダム周囲の粗粒黒雲母はTi-in-biotite地質温度計の結果から816〜882 ℃で形成されたことが示され、コランダム形成後の冷却過程で晶出したと考えられる。一方、マトリクス中の黒雲母と菫青石にTi-in-biotite地質温度計とNa-in-cordierite地質温度計を適用したところ、両者ともに701〜810 ℃の整合的な結果となり、岩石全体はピークから冷却過程までの履歴を保存していることが明らかとなった。
 さらに、チタン鉄鉱中から斜長石・カリ長石・黒雲母・石英・アルミノケイ酸塩鉱物からなる数μm程度のサイズで多角形の外形を示す多相包有物を発見した。これはfelsite-nanogranite inclusion(結晶化したメルト包有物)であり、変成時に部分溶融が生じた直接的証拠である。現在のホルンフェルスは石英を欠くSiO2に不飽和な化学組成である一方、この包有物には石英が含まれることから、原岩である泥岩は現在よりもSiO2に富んでいたと考えられ、高温条件下で珪長質メルトが生成して外へ移動した結果、残留岩がSiO2不足組成となり、コランダムが安定化したと思われる。さらに、コランダム中にも多相包有物が存在し、その構成鉱物にトルトベイト石を見出した。トルトベイト石はペグマタイトから見つかるScを含む希少な鉱物であり、変成岩からの発見は本研究が初とみられる。トルトベイト石の意義については現在検討中であるが、高温低圧の接触変成作用中にScが濃集する過程が存在した重要な発見であると考えている。電子プローブマイクロアナライザーを用いたモナザイトのCHIME年代測定からは前期白亜紀の年代が得られているが、現時点ではデータ数が限定的であるため、追加分析による年代値の検証を進めている。

引用文献:長谷川修三 (1955) 岩手県東磐井郡大東町興田産コランダム及び灰鉄柘榴石. 岩石鉱物鉱床学会誌.

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