講演情報

[T4-P-12]蛇紋岩メランジュにおける交代岩基質の形成過程と変形への影響

*森 康1、重野 未来1、永冶 方敬2、氏家 恒太郎3、合地 信生4、西山 忠男5 (1. 北九州市立自然史・歴史博物館、2. 早稲田大学、3. 筑波大学、4. 斜里町立知床博物館、5. 熊本大学)
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キーワード:

蛇紋岩メランジュ、交代作用、変形、神居古潭変成帯、長崎変成帯

 低温高圧変成帯に分布する蛇紋岩メランジュは、沈み込み帯における地殻とマントルの混合および反応の産物と見なされ、近年では物質循環や深部スロー地震の地質学的背景としても関心を集めている(例えば、Bebout & Penniston-Dorland, 2016、Spandler & Pirard, 2013)。蛇紋岩メランジュは、蛇紋岩の基質中に様々な岩石の岩塊を含む地質体と定義されるが、基質の一部あるいは大部分を滑石片岩や緑泥石アクチノ閃石片岩といった交代岩により置換されていることも多い。交代岩基質の形成は、蛇紋岩メランジュの岩石強度や変形に影響を与えると考えられる。本研究は、神居古潭変成帯班渓幌内ユニットと長崎変成帯西彼杵ユニットに分布する蛇紋岩メランジュにおいて、交代岩基質の形成過程と変形への影響を調査した。
神居古潭変成帯班渓幌内ユニットは、主に泥質片岩から成り、苦鉄質片岩、珪質片岩、石灰質片岩を伴う(例えば、榊原ほか, 2007、竹下ほか, 2018)。片岩類のピーク変成温度圧力は、290–350℃、約0.5 GPaと推定されている。蛇紋岩メランジュは、片岩類と構造的接触関係にあり、蛇紋岩を主体とする基質と、苦鉄質変成岩、泥質砂質変成岩、翡翠輝石石英岩などの構造岩塊で構成される。蛇紋岩基質は、鱗片状〜片状で、炭酸塩鉱物脈の網状脈を含む。また、泥質片岩との接触部において滑石片岩により置換されており、その部分に剪断変形が集中している。薄片顕微鏡観察と全岩化学組成分析の結果は、滑石片岩が蛇紋岩にSiなどが付加されることで形成され、その際にH2O流体が放出されたことを示す。
長崎変成帯西彼杵ユニットは、主に泥質砂質片岩から成り、苦鉄質片岩、蛇紋岩を伴う(例えば、Nishiyama et al., 2017, 2024)。片岩類のピーク変成温度圧力は、370–530℃、0.9–2.3 GPaと推定されている。蛇紋岩メランジュは、片岩類と構造的接触関係にあり、緑泥石アクチノ閃石片岩や鱗片状〜片状蛇紋岩を主体とする基質と、苦鉄質変成岩、曹長岩、泥質変成岩、含石英翡翠輝石岩などの構造岩塊で構成される。緑泥石アクチノ閃石片岩には剪断変形が集中しているほか、蛇紋岩、滑石片岩、アクチノ閃石岩のレンズが含まれる。薄片顕微鏡観察と全岩化学組成分析の結果は、緑泥石アクチノ閃石片岩が蛇紋岩と苦鉄質変成岩の混合物にCaなどが付加されることで形成され、その際にH2O流体が放出されたことを示す。
これらの例は、蛇紋岩メランジュの交代岩基質が交代作用と岩石混合により形成され、岩石強度の低下と剪断変形の集中を引き起こす場合があることを示す。反応が岩石強度を下げる現象は反応促進型延性変形として知られ、原因として反応生成物の細粒化や流体の放出などが考えられる(西山, 1989)。神居古潭変成帯では、機械的に弱い滑石の形成や間隙水圧の上昇も岩石強度の低下に寄与した可能性がある。長崎変成帯では、細粒アクチノ閃石の溶解-析出クリープ(Yamasaki et al., 2026)や流体の放出が岩石強度を低下させたと考えられる。

Bebout & Penniston-Dorland, 2016. Lithos, 240–243, 228–258.
西山, 1989. 地質学論集, 33, 237–257.
Nishiyama et al., 2017. JMPS, 112, 197–216.
Nishiyama et al., 2024. Island Arc, 33, e12527.
榊原ほか, 2007. 地質学雑誌, 113, 103–118.
Spandler & Pirard, 2013. Lithos, 170-171, 208–223.
竹下ほか, 2018. 地質学雑誌, 124, 491–515.
Yamasaki et al., 2026. JSG, 209, 105735.

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