講演情報
[T4-P-13]前弧蛇紋岩におけるブルース石濃集の実態:神居古潭帯糠平超マフィック岩体の例
馬淵 璃裕奈1、*水上 知行1、田村 明弘1、森下 知晃1、岡本 敦2 (1. 金沢大学、2. 東北大学)
キーワード:
前弧、マントルウェッジ、蛇紋岩化作用、岩石記載
ブルース石はかんらん岩の蛇紋岩化に伴って産する主要鉱物である。化学的には高pH流体の成因やブルース石のFe成分酸化に伴う磁鉄鉱の形成及び水素の発生に寄与し(McCollom et al., 2020PhilTransRSocA)、力学的には滑石に次ぐ低摩擦性を示す(Okuda, 2021SolidEarth)。このようなブルース石の特異な性質が水とマントルが接する場の物理化学過程へ果たす役割が注目される(Bach et al., 2006GRL; Mizukami et al., 2014EPSL)。
伊豆-小笠原-マリアナ弧(IBM)の前弧域の蛇紋岩海山からブルース石に富む岩石が報告されており(D'Antonio and Kristensen, 2004MinMag)、冷たい沈み込み帯ではブルース石安定条件が広がっている可能性がある。神居古潭帯の南部に位置する糠平岩体は、白亜紀の沈み込み帯前弧域に隆起したマントルウェッジの断片と考えられ (東ほか, 2025地球科学)、 海洋プレート由来の流体と前弧マントルとの反応に関する情報が期待できる。糠平岩体が低温高変成ユニットと接する関係や、蛇紋岩が低温高圧型変成岩類と複雑に入り混じる産状に、海洋プレート沈み込み境界付近の付加作用と剪断の痕跡が残る(植田, 2006地質雑; 東ほか, 2025同上)。
本研究では、前弧域のブルース石の実態解明を目指して、北海道神居古潭帯の超マフィックブロックである糠平岩体の蛇紋岩を対象として、全岩化学組成、マイクロXRFマップ、顕微鏡による組織観察、ラマン分析による鉱物同定を行なった。これらの予察的なデータからブルース石の濃集状態を紹介する。研究には、ダナイトおよびハルツバージャイト起源の蛇紋岩試料を用いた。以下では原岩の岩石名を用いる。
◆全岩化学組成:リガクアプリケーションラボの本間 寿氏によってYokoyama et al. (2023Science)の方法で測定された。無水組成をIBM蛇紋岩海山の試料(Perkinson and Pearce, 1998JPet)と対比した。糠平岩体には、ダナイト、ハルツバージャイト共に一般的なかんらん岩組成に比べて著しくMgOに富み、SiO2に乏しく、Mg/(Mg+Fe)が高い試料がある。
◆組織観察:ブルース石は偏光顕微鏡下で無色から淡い褐色を呈し、蛇紋石より高いレターデーションで認識できる。ブルース石に富むダナイトは蛇紋岩特有のメッシュ組織を示すが、それらを置き換えるように配向成長するブルース石がある。かんらん石を残すハルツバージャイトのブルース石はリザーダイトと共にかんらん石を置換する褐色網目状の組織をなす。バスタイト付近のメッシュ組織にブルース石が少ない。これはOpx由来のSiの影響と考えられる。磁鉄鉱の生成量は試料によって異なり、一試料の中でも多様かつ不均質である。網目状のブルース石に伴う小片状磁鉄鉱、二次的な脈に沿って磁鉄鉱の濃集などが見られる。今回観察した試料のブルース石にはいずれも変形を受けた痕跡は見られない。
◆ラマン分析:ダナイトとハルツバージャイトのメッシュコアはクリソタイル、メッシュリムはリザーダイト+ブルース石であった。ブルース石のMg#をOHバンから見積もったところ、ダナイトでは0.91-0.93、ハルツバージャイトでは0.87-0.88であった。
◆マイクロXRFマップ:主にSi, Mg, Fe, Ca, Cr, Ni, Al, K, Tiの蛍光X線シグナル(Kα線)の強弱に基づいてXMapToolsを用いて鉱物相マップを作成した。モード組成を算出した結果、ダナイトには最大40%、ハルツバージャイトには最大20%のブルース石が見積もられた。
この著しくブルース石に富むダナイトについて詳述する。リザーダイトと共存する脈状タイプと配向成長タイプのブルース石はMg#でも違いが認識できる。配向成長タイプのブルース石は様々な蛇紋岩要素を内包する組織を示し、メッシュコアのクリソタイルと入り組んだ境界で指交関係を示す。これらの組織はブルース石が置換によって生じた可能性を示唆する。
化学量論による推定と同程度もしくは2倍以上のブルース石を含む蛇紋岩が前弧マントル由来とされる神居古潭超マフィック岩体から見つかった。ブルース石には2種類の産状があり、リザーダイトとメッシュリムをなすタイプと蛇紋岩組織を置換する配向成長タイプ(数mmに広がる場合がある)がある。この観察事実は前弧域にブルース石が濃集するプロセスが存在することを示す。蛇紋岩組織を発達させた水-岩石反応に複数のイベントが認識できるが、それぞれの形成条件や流体の性質を制約することが重要である。
伊豆-小笠原-マリアナ弧(IBM)の前弧域の蛇紋岩海山からブルース石に富む岩石が報告されており(D'Antonio and Kristensen, 2004MinMag)、冷たい沈み込み帯ではブルース石安定条件が広がっている可能性がある。神居古潭帯の南部に位置する糠平岩体は、白亜紀の沈み込み帯前弧域に隆起したマントルウェッジの断片と考えられ (東ほか, 2025地球科学)、 海洋プレート由来の流体と前弧マントルとの反応に関する情報が期待できる。糠平岩体が低温高変成ユニットと接する関係や、蛇紋岩が低温高圧型変成岩類と複雑に入り混じる産状に、海洋プレート沈み込み境界付近の付加作用と剪断の痕跡が残る(植田, 2006地質雑; 東ほか, 2025同上)。
本研究では、前弧域のブルース石の実態解明を目指して、北海道神居古潭帯の超マフィックブロックである糠平岩体の蛇紋岩を対象として、全岩化学組成、マイクロXRFマップ、顕微鏡による組織観察、ラマン分析による鉱物同定を行なった。これらの予察的なデータからブルース石の濃集状態を紹介する。研究には、ダナイトおよびハルツバージャイト起源の蛇紋岩試料を用いた。以下では原岩の岩石名を用いる。
◆全岩化学組成:リガクアプリケーションラボの本間 寿氏によってYokoyama et al. (2023Science)の方法で測定された。無水組成をIBM蛇紋岩海山の試料(Perkinson and Pearce, 1998JPet)と対比した。糠平岩体には、ダナイト、ハルツバージャイト共に一般的なかんらん岩組成に比べて著しくMgOに富み、SiO2に乏しく、Mg/(Mg+Fe)が高い試料がある。
◆組織観察:ブルース石は偏光顕微鏡下で無色から淡い褐色を呈し、蛇紋石より高いレターデーションで認識できる。ブルース石に富むダナイトは蛇紋岩特有のメッシュ組織を示すが、それらを置き換えるように配向成長するブルース石がある。かんらん石を残すハルツバージャイトのブルース石はリザーダイトと共にかんらん石を置換する褐色網目状の組織をなす。バスタイト付近のメッシュ組織にブルース石が少ない。これはOpx由来のSiの影響と考えられる。磁鉄鉱の生成量は試料によって異なり、一試料の中でも多様かつ不均質である。網目状のブルース石に伴う小片状磁鉄鉱、二次的な脈に沿って磁鉄鉱の濃集などが見られる。今回観察した試料のブルース石にはいずれも変形を受けた痕跡は見られない。
◆ラマン分析:ダナイトとハルツバージャイトのメッシュコアはクリソタイル、メッシュリムはリザーダイト+ブルース石であった。ブルース石のMg#をOHバンから見積もったところ、ダナイトでは0.91-0.93、ハルツバージャイトでは0.87-0.88であった。
◆マイクロXRFマップ:主にSi, Mg, Fe, Ca, Cr, Ni, Al, K, Tiの蛍光X線シグナル(Kα線)の強弱に基づいてXMapToolsを用いて鉱物相マップを作成した。モード組成を算出した結果、ダナイトには最大40%、ハルツバージャイトには最大20%のブルース石が見積もられた。
この著しくブルース石に富むダナイトについて詳述する。リザーダイトと共存する脈状タイプと配向成長タイプのブルース石はMg#でも違いが認識できる。配向成長タイプのブルース石は様々な蛇紋岩要素を内包する組織を示し、メッシュコアのクリソタイルと入り組んだ境界で指交関係を示す。これらの組織はブルース石が置換によって生じた可能性を示唆する。
化学量論による推定と同程度もしくは2倍以上のブルース石を含む蛇紋岩が前弧マントル由来とされる神居古潭超マフィック岩体から見つかった。ブルース石には2種類の産状があり、リザーダイトとメッシュリムをなすタイプと蛇紋岩組織を置換する配向成長タイプ(数mmに広がる場合がある)がある。この観察事実は前弧域にブルース石が濃集するプロセスが存在することを示す。蛇紋岩組織を発達させた水-岩石反応に複数のイベントが認識できるが、それぞれの形成条件や流体の性質を制約することが重要である。
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