講演情報
[T4-P-14]長野県大鹿村,カンラン岩複合岩体の構成岩石の化学的特徴:形成場への展開
*大和田 正明1、小山内 康人2、堤 桃子3、青野 道夫4、保科 裕5、中野 伸彦2 (1. 山口大学、2. 九州大学、3. 北海道大学、4. ジオプレイス、5. 下仁田自然学校)
キーワード:
西南日本外帯、入沢井超苦鉄質複合岩体、兵越花崗岩、黒瀬川帯、御荷鉾帯
長野県茅野市から飯田市にかけて南北に伸びる中央構造線の東側には,西南日本外帯の三波川帯,秩父帯,四万十帯が配列している.この配列に斜交する形で白亜紀戸台層,入沢井超苦鉄質複合岩体(牧本, 1978)および小規模であるが兵越花崗岩が分布する.入沢井超苦鉄質複合岩体は御荷鉾帯(海台起源)とされてきたが,実際は黒瀬川帯や御荷鉾帯の構成要素を含む.そこで本研究は複合岩体の主要部を占める塩川カンラン岩体と兵越花崗岩に着目し,記載岩石学・全岩化学組成的特徴を検討する.これらのデータは塩川カンラン岩体や兵越花崗岩の帰属を検討する上での基礎データとなり,西南日本の地体構造とそのテクトニクスの解明に寄与できる.
塩川カンラン岩体は,塩川を中心にNNE–SSW方向に伸びた4 km x 1 kmのレンズ状岩体で,剪断変形を被った蛇紋岩基質中にカンラン岩や大小の斑レイ岩そして花崗閃緑岩をブロックとして含む.兵越花崗岩は,300 m x 300 m程度の小岩体として分布する.また転石ではあるが,塩川カンラン岩体の南方延長部の林道沿いと沢筋にマイロナイト化を受けた黒雲母片麻岩も見出された.カンラン岩は主にダナイトとウェールライトである.ダナイトは,主にカンラン石と少量のクロムスピネルから構成される.リム部を除きカンラン石は蛇紋石化を免れている.カンラン石粒子の境界は約120°で接し,累帯構造やキンクバンドは欠如している.スピネルは大部分カンラン石に包有されるが,カンラン石同士の粒間にも産する.リムに薄い磁鉄鉱を伴う.ウェールライトは集積組織を示し,カンラン石と単斜輝石から構成される.カンラン石は蛇紋石化されているが,蛇紋石中に残存することもある.また,単斜輝石の一部はカンラン石を包有している.斑レイ岩は主に変質した斜長石と単斜輝石を含み,初生的な角閃石や黒雲母を含むType A斑レイ岩とそれらを含まないType B斑レイ岩に区分した.またType Bの斑レイ岩はヴェスビアナイトを含むことがある。花崗閃緑岩は主に石英・斜長石・黒雲母・角閃石と少量のアルカリ長石から構成される.兵越花崗岩は圧砕組織が発達し,石英・斜長石・黒雲母から構成され,アルカリ長石はほとんど含まれない.黒雲母片麻岩はマイロナイト化を受け,プレッシャーシャドーを伴う斜長石ポーフィロクラストを含む。主に黒雲母,白雲母,石英,斜長石,アルカリ長石から構成され,黒雲母の一部は緑泥石化している.
火成岩ブロックの化学組成を検討するため,SiO2/Al2O3–Mg#図(Kempton et al., 1992)で集積鉱物の影響が大きい試料を除外したのち,地球化学的判別図にプロットした.比較データとして引用した御荷鉾帯・黒瀬川帯の分析値についても集積岩を識別してコンパイルした(引用データ,御荷鉾帯:川野ほか ,2025,黒瀬川帯:小山内ほか ,2014,内野 ,2020).Ti–V図(Shervais, 1982)で, Type A斑レイ岩は主に島弧玄武岩~MORB/BABB領域領域に, Type B斑レイ岩は島弧玄武岩領域にプロットされる.また,Type Aの斑レイ岩は,御荷鉾帯産苦鉄質岩とも類似点があるもののも,黒瀬川帯の500 Maおよび450 Maの火成活動年代を示す多様な苦鉄質岩と共通の特徴を持つ.一方,Type B斑レイ岩は,黒瀬川帯の450 Maの原岩形成年代を示し250 Maの高温型変成作用を受けた苦鉄質岩の組成的特徴と類似する.花崗閃緑岩はPearce et al. (1984)の図でプレート内花崗岩の組成領域にプロットされる.同図で兵越花崗岩は九州黒瀬川帯走水地域に分布する花崗岩と同様に火山弧花崗岩の組成領域にプロットされる.そして沈み込むスラブ溶融に由来するアダカイト的な特徴を持ち,黒瀬川帯花崗岩類と共通の化学的特徴を示す.
【引用文献】川野ほか (2025) 立正大学地球環境研究, 27, 11–21; Kempton et al. (1992) Geochimica et Cosmochimica Acta, 56, 971–986; 牧本 (1978) 地質学雑誌, 84, 317–329; 小山内ほか (2014) 岩石鉱物科学, 43, 71-99; Pearce et al. (1984) Contribusions to Mineralogy and Petrology, 58, 63–81; Shervais (1982) Earth and Planetary Science Letter, 59, 101–118; 内野 (2020)地質学雑誌, 126, 113–125.
塩川カンラン岩体は,塩川を中心にNNE–SSW方向に伸びた4 km x 1 kmのレンズ状岩体で,剪断変形を被った蛇紋岩基質中にカンラン岩や大小の斑レイ岩そして花崗閃緑岩をブロックとして含む.兵越花崗岩は,300 m x 300 m程度の小岩体として分布する.また転石ではあるが,塩川カンラン岩体の南方延長部の林道沿いと沢筋にマイロナイト化を受けた黒雲母片麻岩も見出された.カンラン岩は主にダナイトとウェールライトである.ダナイトは,主にカンラン石と少量のクロムスピネルから構成される.リム部を除きカンラン石は蛇紋石化を免れている.カンラン石粒子の境界は約120°で接し,累帯構造やキンクバンドは欠如している.スピネルは大部分カンラン石に包有されるが,カンラン石同士の粒間にも産する.リムに薄い磁鉄鉱を伴う.ウェールライトは集積組織を示し,カンラン石と単斜輝石から構成される.カンラン石は蛇紋石化されているが,蛇紋石中に残存することもある.また,単斜輝石の一部はカンラン石を包有している.斑レイ岩は主に変質した斜長石と単斜輝石を含み,初生的な角閃石や黒雲母を含むType A斑レイ岩とそれらを含まないType B斑レイ岩に区分した.またType Bの斑レイ岩はヴェスビアナイトを含むことがある。花崗閃緑岩は主に石英・斜長石・黒雲母・角閃石と少量のアルカリ長石から構成される.兵越花崗岩は圧砕組織が発達し,石英・斜長石・黒雲母から構成され,アルカリ長石はほとんど含まれない.黒雲母片麻岩はマイロナイト化を受け,プレッシャーシャドーを伴う斜長石ポーフィロクラストを含む。主に黒雲母,白雲母,石英,斜長石,アルカリ長石から構成され,黒雲母の一部は緑泥石化している.
火成岩ブロックの化学組成を検討するため,SiO2/Al2O3–Mg#図(Kempton et al., 1992)で集積鉱物の影響が大きい試料を除外したのち,地球化学的判別図にプロットした.比較データとして引用した御荷鉾帯・黒瀬川帯の分析値についても集積岩を識別してコンパイルした(引用データ,御荷鉾帯:川野ほか ,2025,黒瀬川帯:小山内ほか ,2014,内野 ,2020).Ti–V図(Shervais, 1982)で, Type A斑レイ岩は主に島弧玄武岩~MORB/BABB領域領域に, Type B斑レイ岩は島弧玄武岩領域にプロットされる.また,Type Aの斑レイ岩は,御荷鉾帯産苦鉄質岩とも類似点があるもののも,黒瀬川帯の500 Maおよび450 Maの火成活動年代を示す多様な苦鉄質岩と共通の特徴を持つ.一方,Type B斑レイ岩は,黒瀬川帯の450 Maの原岩形成年代を示し250 Maの高温型変成作用を受けた苦鉄質岩の組成的特徴と類似する.花崗閃緑岩はPearce et al. (1984)の図でプレート内花崗岩の組成領域にプロットされる.同図で兵越花崗岩は九州黒瀬川帯走水地域に分布する花崗岩と同様に火山弧花崗岩の組成領域にプロットされる.そして沈み込むスラブ溶融に由来するアダカイト的な特徴を持ち,黒瀬川帯花崗岩類と共通の化学的特徴を示す.
【引用文献】川野ほか (2025) 立正大学地球環境研究, 27, 11–21; Kempton et al. (1992) Geochimica et Cosmochimica Acta, 56, 971–986; 牧本 (1978) 地質学雑誌, 84, 317–329; 小山内ほか (2014) 岩石鉱物科学, 43, 71-99; Pearce et al. (1984) Contribusions to Mineralogy and Petrology, 58, 63–81; Shervais (1982) Earth and Planetary Science Letter, 59, 101–118; 内野 (2020)地質学雑誌, 126, 113–125.
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