講演情報

[T4-P-17]糸魚川山之坊地域における角閃石岩類の起源とコスモクロア輝石との成因関係

*岡田 花1、西澤 ひなた1、植田 勇人1、竹之内 耕2、小河原 孝彦2 (1. 新潟大学、2. フォッサマグナミュージアム)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

角閃石、コスモクロア輝石、蛇紋岩、曹長岩


 コスモクロア輝石はメキシコのToluca隕鉄で初めて同定され,以降地球で形成されたものが発見されており,日本では蓮華変成帯の大佐山超苦鉄質岩体から発見されている.糸魚川市内では転石として存在が確認されていたが,近年,青海-蓮華帯の蛇紋岩メランジ内に位置する新潟県糸魚川市山之坊の露頭でコスモクロア輝石が発見された(鈴木・大木 2019).山之坊露頭では,曹長岩塊と蛇紋岩に隣接する角閃石を主体とする岩石(角閃石岩と呼ぶ)中にコスモクロア輝石が散在し,しばしばクロム鉄鉱を核として放射状に成長している(Takasu et al., 2022).しかし,コスモクロア輝石と周囲をとりまく角閃石岩の成因関係は十分理解されていない.本研究では,山之坊露頭の角閃石岩類とコスモクロア輝石の形成過程を明らかにすることを研究目的とし,野外調査,SEM-EDSによる鉱物組織の観察と組成分析,全岩化学組成分析,および曹長岩中のジルコンについてU-Pb年代と微量元素組成を測定した.
 山之坊露頭の角閃石岩は,曹長岩と蛇紋岩の境界部に幅1m程度の反応縁として生じている.曹長岩を構成する粗粒な曹長石中には一部でひすい輝石の包有物が残存する.このことから,当露頭の曹長岩はひすい輝石岩を置換したものであると考えられる.この曹長岩はマイロナイト化により部分的に細粒化しており,角閃石岩の反応縁はこのマイロナイト構造を斜断して生じている.山之坊地域の曹長岩に含まれるジルコンからは約490MaのジルコンU-Pb年代が得られており,ジルコンは火成岩由来を示唆する微量元素組成を示す.
 角閃石岩中には,粗粒なCa角閃石(type1:透角閃石)のポーフィロクラストと,細粒なNa角閃石(type2:藍閃石~エケルマン閃石)からなるネオブラストがあり,type1角閃石の周縁部はtype2と同様のNa角閃石に組成壊変されている様子が観察できる.山之坊露頭の角閃石岩中では,type1角閃石中にクロム鉄鉱が包有されており,type1の角閃石中のクロム鉄鉱の周縁にコスモクロア輝石が生じている場合は,コスモクロアに接する部分のtype1の角閃石がtype2と同様のアルカリ角閃石に改変されている.type2の角閃石中にコスモクロア輝石が生じている場合は,両者は直に接する.
 角閃石岩中には,CrやNiに富むものと乏しいものがある.アイソコン解析から,CrやNiに富む角閃石岩(とくにtype2)は,蛇紋岩にNa2OやAl2O3,SiO2などが富化,CrやNiに乏しい角閃石岩は曹長岩にMgOやFeOが加わるとともにSiO2が抜けることで,それぞれ形成されたと推定できる.そのため,角閃石岩には,原岩を曹長岩または蛇紋岩とする2種類があると考えられる.
 以上の観察結果から,次の形成ステージに区分される.
ステージ0:原岩の火成岩がひすい輝石岩に変化した後,二次的に曹長岩に置き換わり,さらに変形してマイロナイト化した.
ステージ1: 曹長岩が蛇紋岩と接触し,境界周縁に,type 1のCa角閃石からなる反応縁が形成された.Ca角閃石は一部でクロム鉄鉱を包有した.
ステージ2: type 1のCa角閃石を置換してtype 2のNa角閃石が生じた.この際に,クロム鉄鉱を核としてコスモクロア輝石が成長した. 
 ステージ1では,曹長岩から蛇紋岩側へ拡散するCaOとSiO2と蛇紋岩から曹長岩側へ拡散する蛇紋石成分が出会う境界部にtype1のCa角閃石が生じた. 
 CaO + SiO2 +蛇紋石→透角閃石+H2O
ステージ2では,曹長岩から蛇紋岩側へ拡散する曹長石成分と蛇紋岩から曹長岩側へ拡散する蛇紋石成分の会合部にNa角閃石が生じた. 
 曹長石+蛇紋石→藍閃石+H2O
この際,拡散してきたNa2Oがクロム鉄鉱と反応してコスモクロア輝石を生じたと考えられる.また,type1のCa角閃石がtype2のNa角閃石に置換される反応では,CaとNaの交代が必要となる.           
 透角閃石+曹長石+H2O→藍閃石+CaO+SiO2
 曹長岩のジルコンU-Pb年代は原岩であった火成岩の形成年代であると解釈される.そのため,曹長岩の構造を切る角閃石岩の形成ステージ(1~2)は, 490Maより後でおこったと考えられる.

引用文献
・鈴木保光・大木良弥,2019,地学研究
・Takasu Akira, Suzuki Yasumitsu, Ohki Yoshiya, Ogawara Takahiko and Seto(Sakamoto) Shizue. 2022 Earth Science.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン