講演情報

[T4-P-20]関東山地三波川変成帯の緑色片岩中における曹長石斑状変晶の組織

*鹿志村 瑶希1、乾 睦子1 (1. 国士舘大学)
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キーワード:

三波川変成帯、変成岩、長瀞、曹長石


 曹長石斑状変晶が三波川変成帯の緑色片岩および泥質片岩に出現することは古くから知られ、点紋やアルバイトスポットと呼ばれて高変成度の指標とされてきた。曹長石斑状変晶については主に四国中央部の三波川変成岩を対象に研究が進められてきており、変成作用のピーク時以降に異常成長したと考えられているが、どのように成長したのかは明らかになっていない。また関東山地三波川変成帯にも曹長石斑状変晶が見られるが、その出現については不規則であり変成分帯との対応も明確とは言えない。そのため本研究では関東山地三波川変成帯の緑色片岩中に出現する曹長石斑状変晶を対象に形成過程についての検討を行った。
対象地域である埼玉県長瀞地域樋口駅の露頭では見かけ上位に泥質片岩、下位に緑色片岩が見られ、その境界は川の中ほどにあるため近接観察できないがおおむね整合的と思われる。面構造は東西~東北東ー西南西の走向を持ち、北に向かって10 °程度の低角度で傾斜している。同地域の最高到達温度は炭質物のラマン分光分析により約400~460 ℃と推定されている(Inui et al., 2017)。
採集したサンプルは約1 mm大の曹長石斑状変晶が多く見られる緑色片岩であり、偏光顕微鏡による薄片観察により、緑泥石、緑簾石、白雲母、アクチノ閃石、曹長石斑状変晶、石英、カリ長石、方解石、チタナイト、磁鉄鉱、イルメナイトで構成されていた。また片理に垂直な石英、曹長石、方解石、カリ長石からなる脈や、片理に平行な石英脈が見られた。不透明鉱物は、片理に平行に配列しているものと点在しているものが見られた。曹長石斑状変晶内部には白雲母、緑泥石、緑簾石、チタナイト、アクチノ閃石、石英、方解石、カリ長石が包有されていた。これらの鉱物組み合わせより、採集地点は田中ら(1974)による緑色片岩の変成分帯における第Ⅱ帯であると考えられる。
SEM-EDSによる半定量分析の結果、緑泥石、緑簾石、アクチノ閃石の化学組成は曹長石斑状変晶内部と外部で大きな差は見られなかった。したがってこれらの鉱物の形成時期は大きく変わらないと考えられる。薄片全体に対してSEM-EDSを用いた広域元素マッピングを行った結果、石英脈を除くほぼすべての石英が曹長石斑状変晶と接していた。また一見一粒の曹長石斑状変晶と見えた粒子に亀裂があり、そこに充填されたかのような石英が多く見られた。曹長石斑状変晶を2つの方法で抽出しPythonを用いて粒径分布を計測した。まず、偏光顕微鏡写真から透明な斑晶を抽出して計測した場合には粒径1 mmをモードとして0.25 mmから5 mm以上までの分布を示した。それに対して、Naの元素マッピング画像から曹長石の粒子を抽出した場合には、粒径分布は1~2 mmの範囲により集中し、3 mm以上の粒子は比較的少ない分布を示した。すなわち、粒径が3 mm以上の曹長石斑状変晶に見える粒子は、より小さい粒子の集まりであることが多かった。集まって一つに見える粒子の中で隣り合う曹長石粒子の形状がパズルのように噛み合う部分が見られることから、これらは独立して成長した結晶の集まりではなく、もともとは大きな一粒だった曹長石に亀裂が入ったものである可能性を示唆している。片理を構成する鉱物と包有鉱物の伸長方向を画像解析した結果、片理を構成する鉱物は0~30 °、120~180 °の傾きを示したが、包有鉱物は0~30 °、90~180 °の傾きのものが多く見られた。すなわち一部の包有鉱物は片理の鉱物に対し30 °程度斜交しているといえる。
以上の結果は、曹長石斑状変晶は最高温度到達期以降に片理を構成する鉱物を取り込みながら成長し、成長後に変形を受け回転、一部の曹長石斑状変晶は変形により細粒化したことを示している可能性がある。その後変形によって生まれた空間が圧力影となり石英が充填したと考えられる。
参考文献
Inui et al. (2017) 国士館大学理工学部紀要. 11. 55-60.
田中 耕平 ほか. (1974) 岩石鉱物鉱床学会誌. 69. 313-323.

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