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[T4-P-22]低変成度の泥質片岩−塩基性片岩境界における炭質物の溶解―析出反応による高結晶度炭質物の生成

*松野 哲士1、原田 浩伸2、Satish-Kumar Madhusoodhan3、Kiran Sasidharan3、石川 剛志4、宇野 正起5、岡本 敦6 (1. 東京大学 大気海洋研究所、2. 東北大学大学院理学研究科、3. 新潟大学理学部、4. 海洋研究開発機構 高知コア研究所、5. 東京大学大学院理学系研究科、6. 東北大学大学院環境科学研究科)
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キーワード:

炭素、岩石-水反応、物質移動量解析


 沈み込み帯における炭素の主要な輸送媒体は、海洋プレートの堆積物である(Plank and Manning 2019)。堆積物中の炭質物の一部は、変成作用の過程で流体へと放出され、プレート境界へ供給された炭素は、周囲の岩石との反応により構成鉱物の変化を引き起こす。そのため、流体への炭素の放出量は、沈み込み帯における炭素循環の理解に重要である。しかし炭質物は、どのような条件下で流体に溶出し、あるいは堆積物中に固定されるのかは、十分に解明されていない。本研究では、低変成度の泥質片岩−塩基性片岩境界における炭質物を対象とし、流体への溶解―析出反応を調査した。
本研究の調査地域は、三波川変成帯の四国中央部・汗見川地域の泥質片岩−塩基性片岩境界である。対象とする露頭は、緑泥石帯に位置し、変成作用のピークP-T条件は約320℃、0.55-0.65GPaと推定され (e.g., Kouketsu et al. 2021, Enami et al. 1994)、西南日本プレート境界の地震発生帯の下限域に相当する。岩石試料は、泥質片岩−塩基性片岩の境界に向かって、連続的に2 mの範囲で採取した。採取した試料に対して、全岩鉱物量比、全岩化学組成、全有機・無機炭素量、Li同位体比の測定を実施した。全岩化学組成に対しては、Isocon解析を実施し、体積変化を伴う物質移動量を推定した。泥質片岩中の炭質物に対しては、炭素同位体比の測定を実施したほか、代表的な薄片中の炭質物に対して顕微ラマン分光分析を実施した。
鉱物量比は、両岩相の母岩から境界部に向けて、連続的に変化した。境界部の塩基性片岩では、角閃石が完全に分解し、緑泥石、白雲母、石英に富む。また、境界部の泥質片岩では、斜長石・白雲母に富み、白色化を伴う。全岩化学組成に基づく物質移動量解析からは、境界部の泥質片岩で約30 wt%の質量損失を示した。さらに、Li同位体比では、境界部の泥質片岩は、塩基性片岩と同一の値(δ7Li=1.1-1.2 (‰))を示す一方、泥質片岩の母岩はより低い値を示した(δ7Li=約0.6 (‰))。以上より、泥質片岩−塩基性片岩境界では、塩基性片岩より供給された流体による物質移動が発生しており、特に境界部の泥質片岩では、顕著な質量損失を伴うことが示された。
次に、白色化した境界部の泥質片岩に含まれる炭質物に注目した。体積変化を考慮した物質移動量解析より、境界部の泥質片岩における全有機炭素量は、母岩の含有量の約70%程度となった。さらに、炭素同位体比δ13C(V-PDB)は、母岩(平均-25.03 ‰)に対し、境界部(平均-20.66 ‰)で高くなった。熱力学計算(Perple_X, Connolly, 2009)の結果に基づき、炭質物中の炭素はCO2として流体相に溶出したと仮定した。その上で、析出した炭質物のδ13CをCO2-Graphite間の分別係数(Bottinga 1969)を用いたレイリー分別により計算した。その結果、母岩の炭質物が流体に溶出した後に、境界部で75%程度析出したと推定され、物質移動量解析と整合的である。炭質物の顕微ラマン分光分析から、母岩側では同地域の変成条件と整合的な低結晶度の炭質物が確認された一方、境界部では高結晶度の炭質物が観察された。以上の結果より、境界部の炭質物は、塩基性片岩より供給された流体に溶出したのちに、高結晶度の炭質物として再度析出したと考えられる。
高結晶度の炭質物は、低結晶度の炭質物と比較して熱力学的に安定である(Tumiati et al. 2020)。そのため、本研究で観察された高結晶度の炭質物は、低結晶度の炭質物から供給された炭素に富んだ流体が、高結晶度の炭質物に対して過飽和となった際に析出したと考えられる。したがって、低結晶度の炭質物は、沈み込み帯の流体に炭素を供給する一方、その供給量は高結晶度の炭質物の析出によって制御されると考えられる。

References:
Plank and Manning 2019. Nature
Tumiati et al., 2020. Geochimica et Cosmochimica ActaKouketsu et al., 2021. Journal of Metamorphic GeologyEnami et al., 1994. Contributions to Mineralogy and Petrology
Connolly, J. A. D. 2009.Geochem. Geophys. Geosyst
Bottinga 1969. Geochimica et Cosmochimica Acta

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