講演情報

[T9-O-8]幌延地下坑道稚内層におけるボーリング調査結果に基づく応力逆解析

*笹口 新1、金沢 淳1、加藤 猛士1、木村 駿2 (1. 川崎地質株式会社、2. 国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 幌延深地層研究センター)
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キーワード:

EDZ、剪断割れ目、稚内層、応力場

1.はじめに
地層処分施設においては、坑道掘削による応力再配分の影響で坑壁周辺岩盤に水理・力学特性が顕著に変化する掘削損傷領域(EDZ:Excavation Damaged Zone)が生じることが想定されている。EDZが廃棄物定置後の核種移行経路になることを防ぐため、地質特性に基づく物理・水理・力学特性の評価が求められている。(国研)日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)幌延深地層研究センターでは、上記特性に着目したEDZ評価技術を検証している。今回、地下施設における稚内層を対象としたボーリング調査では、坑壁にほぼ平行な引張割れ目がEDZ割れ目として確認された一方で、底盤や側壁沿いのEDZ割れ目には剪断割れ目の走向傾斜に近いものも確認されたため、剪断割れ目を形成した応力場とEDZとの関係を検討するために応力逆解析を実施した。

2.地質概要
JAEA幌延深地層研究センター地下施設には、新第三系中新統~鮮新統の地層が分布し、下位から稚内層(珪質泥岩)、声問層(珪藻質泥岩)に区分される。施設の北東側には、NNW-SSE 走向の大曲断層がステップオーバーして分布する。施設周辺には大曲断層とほぼ同じ走向の軸を持つ褶曲構造があり、約2.2~1.0Maに形成が開始されたと考えられている[1]。また、幌延地域の現在の応力場は、東西圧縮方向と推定されている[2,3]。剪断割れ目のスリップデータを用いた応力逆解析は地下施設、ボーリング孔、施設周辺で実施されている[4-8]。

3.解析手法
本研究では、350m試験坑道6にて採取した稚内層のボーリングコアの剪断割れ目を対象に多重逆解法[9]による応力逆解析を行った。解析手順は、まず、JAEAの割れ目判定基準[10]に従った割れ目の分類後、剪断割れ目面の観察とボアホールカメラで得られた走向傾斜データから、割れ目の傾斜方向および条線の方向の方位角・伏角と変位センスで構成されるスリップデータを取得した。次に、スリップデータから多重逆解法により主応力軸の方位と応力比を算出し、クラスターごとに応力状態として分類した。

4.解析結果
今回取得されたスリップデータは、9孔の計34データからなる(図1)。変位センスは逆断層型20データ、右横ずれ断層型が14データである。多重逆解法により算出した主応力軸方向および応力比(図2)に基づき、3つのクラスターからなる応力状態に区分した(表1)。

5.考察
解析結果は、幌延地域の現在の東西圧縮場とは異なる傾向を示した。一方、地下施設の声問層における応力逆解析結果[4,5]では、主にσ1(最大主応力軸)がほぼ水平でNE-SW方向、σ3(最小主応力軸)が鉛直方向への卓越を示しており、本解析の応力状態aはこれに比較的近いことから声問層の堆積後の応力場を反映したことが考えられる。また、σ1の方向は褶曲軸とほぼ直交することから、この応力場は褶曲形成時期のものと推定できる。以上より、応力場の変遷として、σ1は褶曲形成開始時期にNE-SW方向であったが、その後現在のEW方向に変化したと推定した。一方、応力状態b、cは声問層の応力逆解析結果[4-8]では見られなかった卓越方向である。これらは声問層堆積以前あるいは局所的な応力場を示す可能性がある。今後、異なる場所・深度の稚内層に対し応力逆解析を実施して検証を進めながら、坑道内のEDZ割れ目の方向と応力逆解析結果を比較し、応力場とEDZとの関係を検討することを考えている。

引用文献
[1]石井ほか(2008)地質学雑誌, 114, 6, pp.286-299.
[2]常盤・杉本(2012)JAEA-Data/Code 2012-024, 53p.
[3]真田ほか(2008)JAEA-Research 2008-069, 57p.
[4]Tokiwa et al.(2011) Int. J. Rock Mech. Min. Sci., 48, pp.773-781.
[5]Tokiwa et al.(2013) Geoscience Frontier, 4, pp.105-111.
[6]Ishii et al.(2017) Int. J. Rock Mech. Min. Sci., 100, pp.10-22.
[7]Tokiwa et al.(2009) 3rd Int. Workshop and Conf. Earth Res. Tech., pp.159-168.
[8]石井・福島(2006)応用地質, 47, 5, pp.280-291.
[9]山路(1999)構造地質, 43, pp.79-88.
[10]吉野ほか(2019)JAEA-Data/Code 2018-015, 169p.

使用ソフトウェア(応力逆解析)
FDConverter、mim60、miv4(京都大学 山路研究室HP)

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