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[S1-O-7](招待講演)植物と陸上生態系の歴史を化石はどこまで語れるようになったか

*西田 治文1,2 (1. 中央大学、2. 南距古植物研究所)
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キーワード:

古生代、上陸、植物、ライニーチャート、デジタルマイニング


 植物化石を扱う古植物学の出発点は、最初にリンネ式学名を採用した化石の記載が学界に認められた1820年のことである。200年を経た今日、植物化石研究は植物の系統進化のみならず、広範な地球生物学の一分野として多角的な視点から進歩を続けている。現生生物学との相互検証関係は、分子レベルの系統解析や発生・生理学の進展と並行して重みを増してきた。化石研究とは不可分である地質学/地球科学における地球の時空変化解明は、進化地理学及び古生態学的研究をより実証的にしている。このような進展は、持続可能性という深刻な問題を抱えるに至った人類に、多くの反省材料と未来への示唆を与えてもいる。
古植物学に限らず、学術の進歩は様々な技術の発展と共にある。その速度はまさに日進月歩で、古植物学の教科書が瞬時に加筆改訂を迫られるような技術の急進や発見が続いている(西田2017; Krings et al., 2018; Martinetto et al. 2020)。
 古生代は、植物を基礎生産者とする陸上生態系と食物/エネルギー連鎖の基盤が形成された時代である。系統進化における重要なエピソードとしては、1)初期陸上植物の実験的ともいえる多様化過程、2)維管束植物の初期分化、3)種子の形成、4)森林の成立と生態系の多様化、水陸生態系の連鎖、5)動物と菌類の上陸と原核生物を含めた共生系の成立、が挙げられよう。デボン紀はこれらの出来事が集中した時代である。特に、前期デボン紀のライニーチャートLagerstätteは、唯一の最初期陸上生態系化石群として100年以上の研究史があり多様な植物が復元されてきた。しかし、従来の研究はほとんど岩石薄片標本をもとに行われてきた。発表者は、近年開発されたデジタルマイニングの手法(Iba et al. 2025)を、開発者の協力を得て初めてライニーチャートに適用した(投稿中)。得られた超高解像度画像を元に、泥炭湿地に生育した植物群が、土壌内の共生生物群と共に立体的に復元できた。最初に定着していた前維管束植物のHorneopytonは、小規模な氾濫堆積物に繰り返し覆われながらも生育を続けたこと、一方で新たな堆積面には前維管束植物のAglaophytonとその配偶体であるLyonoplyton 、維管束植物のRhyniaが新たに進出し、最終的にはRhyniaが優占してゆくという局所遷移も認められた。また、実際の植物体復元が可能となり、特にHorneophytonについては、実際の植物体の完全復元に成功した。復元結果を元に、形態進化だけでなく初期陸上植物の光合成量や成長生理などにも研究が展開できる。
 古生代における生物の上陸と陸上生態系の進化史、地球科学的位置付けについては、準備中の書籍をぜひ参照されたい(西田・山田(編)印刷中)。
文献:Iba, Y. et al. 2025. Patterns 6(4): 101210; Krings et al. (eds) 2018. Transformative Paleobotany. Elsevier; Martinetto et al. (eds) 2020. Nature Through Time. Springer; 西田治文2017.「化石の植物学−時空を旅する自然史」東大出版;西田治文・山田敏弘(編)2026 印刷中. 地球生命史シリーズ 第3巻「古生代 II - 海から陸へ 陸上への進出」共立出版.

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