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[S1-O-8](招待講演)古生代の大気海洋進化:地球システムモデリング研究の最前線

*尾﨑 和海1 (1. 東京科学大学)
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キーワード:

古生代、地球システムモデル、生物地球化学


 古生代は、大気・海洋の富酸素化、動物の多様化、陸上植物の進化・放散、さらには後期古生代氷河時代(Late Paleozoic Ice Age: LPIA)など、地球環境が大きく変化した時代として注目されている.近年、地球化学プロキシの高精度化に加え、気候・生物地球化学循環・大陸配置を統合的に扱う地球システムモデリングが急速に発展し、地球化学データとの統合的な解析が進められている.地球システムモデルは、地球システムに内在するフィードバックを考慮しつつ、長期的な地球環境変化の駆動メカニズムを定量的に検証するための重要な研究手法となっている.
 最近の研究では、(1)前期古生代の海洋は貧酸素〜無酸素状態にあり、Fe²⁺を含むフェルジナス水塊が広く分布していたこと(e.g., Sperling et al., 2021; Reershemius and Planavsky, 2021; Pohl et al., 2022)、(2)陸上植物の進化・放散に伴って海洋の富酸素化が進行したこと(e.g., Dahl et al., 2010; Bubphamanee et al., 2025)、(3)LPIAの開始がトルネシアン期炭素同位体正異常(Tournaisian Isotopic Carbon Excursion: TICE)と同期すること(Zhang et al., 2025)、(4)LPIA期間中にも海洋の貧酸素化・無酸素化が断続的に発生したこと(Chen et al., 2025)、など新しい知見が得られている.また近年のモデリング研究は、前期古生代の大気海洋の酸化還元状態がリン循環を介したフィードバックによって制御されていた可能性や、大陸配置が海洋循環や深海の酸素濃度に大きく影響し、特に前期古生代の生物の絶滅リスクを高めていた可能性など、地球環境変動の駆動要因について新たな理解をもたらしている.一方で、前期古生代の大気中酸素濃度については、現代より低かったとする説と現代と同程度であったとする説が併存しており、その実態は依然として明らかではない.また、生物生産を律速する必須元素であるリンの海洋中濃度についても、現代より低濃度であったとする推定から高濃度であったとする推定まで幅広い見解が示されている(e.g., Ozaki, 2025).これらの未解決問題を理解するためには、プロキシデータのさらなる充実に加え、生物地球化学循環過程を包括的に統合した理論モデルによる定量的な検証が不可欠である.
 本講演では、CANOPS(Ozaki et al., 2022; Ozaki, 2025)やSCION(Mills et al., 2025; Zhang et al., 2025)およびcGENIE(Pohl et al., 2022, 2023)をはじめとする地球システムモデルを用いた最近の研究を中心に、地球化学データとの統合によって明らかになってきた古生代地球環境進化の新たな描像を紹介するとともに、現在も残されている課題と今後の展望について議論する.

参考文献:Bubphamanee et al. (2025) PNAS e2501342122; Chen et al. (2025) PNAS e2420505122; Dahl et al. (2010) PNAS doi:10.1073/pnas.1011287107; Ozaki (2025) Treatise on Geochemistry, 8, 349-377; Pohl et al. (2022) Nature 608, 523-540; Pohl et al. (2023) Science Advances eadg7679; Reershemius and Planavsky (2021) Earth-Science Review 221, 103787; Sperling et al. (2021) Science Advances, 7, eabf4382; Zhang et al. (2025) GRL, 52, e2025GL119356.

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