講演情報
[G-P-10]東シナ海における現生貝形虫相の空間分布とその制御要因
*中藤 草汰1、岩谷 北斗1、齋藤 京太2、田寺 優香2、板木 拓也3 (1. 山口大学大学院地球圏生命物質科学系専攻地球科学コース、2. 海上保安庁、3. 産業技術総合研究所)
キーワード:
貝形虫、東シナ海、黒潮
東シナ海は、南西諸島とユーラシア大陸の間に位置する太平洋西部の縁海であり、北西側で黄海に、北東側で日本海に、南西側で南シナ海に、南東側でフィリピン海に接続する。その面積のおよそ70%を水深200 m以浅の陸棚が占めており(Kiyomoto et al., 2001)、大気中の二酸化炭素のシンクとしても機能している(柳,1997)。また、陸棚斜面沿いには、世界最大級の暖流の一つである黒潮が台湾と石垣島の間から流入し、北上している。東シナ海では、中国沿岸水および黒潮がもたらす豊富な栄養塩により、生物生産および生物多様性が高く、豊かな漁場が形成されている(水谷ほか,2005)。このような高い生物生産を支える生態系を理解するためには、その基盤となる底生生物群集の実態を把握することが重要である。そこで、本研究では,陸棚生態系のモデル海域として東シナ海に注目し、現生貝形虫群集の空間分布とその制御要因を解析した。試料には、海上保安庁海洋情報部によって採取された表層堆積物を用いた。また、水温などの海洋環境データには、JAMSTECが提供するJCOPE2M再解析データ(Miyazawa et al., 2017, 2019)を用いた。その結果、表層堆積物からは、計6812個体、71属160種の貝形虫が確認された。これらはいずれも亜熱帯地域から東シナ海に広く分布する分類群であった。得られた貝形虫のうち、主要な17属21種についてR-modeクラスター分析を行ったところ、5つの貝形虫種群(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ)に分類された。各種群の特徴として、種群Ⅰは水温、水深と明瞭な相関を示し、種群Ⅱは黒潮域に特徴的であり、種群Ⅳ・Ⅴは産出割合が含泥率と相関を示す深海泥底種によって特徴づけられた。また、Q-modeクラスター分析の結果、7つの生物相(LP・XC・LN・XN・NN・CC・KK)に分類された。いずれの生物相においても浅海域からの運搬種を伴う種群Ⅰの割合が高く、さらに、深海泥底種により特徴づけられる種群Ⅳ・Ⅴの産出割合が含泥率と同調して変化していることが明らかとなった。このことから、東シナ海の貝形虫群集は、水塊のみならず、海流によって形成される底質環境によっても強く制御されることが明らかとなった。
【引用文献】Kiyomoto et al., 2001. Journal of Oceanography, 57, 37–45; 柳,1997.海の研究, 6,163–171. 水谷ほか,2005. 日本水産学会誌,71, 44–53. Miyazawa et al., 2017. Ocean Dynamics, 67, 713–728; Miyazawa et al., 2019, Ocean Dynamics, 69, 267–282.
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