講演情報
[G-P-13]高校生の探究の深化を支える-高校生の最先端研究-
*川勝 和哉1 (1. 兵庫県立兵庫工業高等学校)
キーワード:
波状累帯構造、熱水残液、マグマ分化、国際的研究活動、出る杭
筆者が前年度まで勤務していた兵庫県立姫路東高等学校は、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクールの第2期指定を受け、本年度はその2年目にあたる。スーパーサイエンスハイスクール(以後SSHという)は、先進的な科学技術や理数教育に重点を置いたカリキュラムや学習活動を行うことを目的として、2026年4月現在で全国で229校が指定を受けている。
姫路東高は、国際的に活躍する出る杭となる人材の育成と、科学技術人材の裾野の拡大をテーマとして、国際的な探究活動の展開に取り組んでいる。とりわけ地球科学をベースにした理科教育や探究活動は他に例を見ない。姫路東高SSHの活動の柱の一つに、科学部の国際的な活動の支援がある。科学部は物理班、化学班、生物班、地学班、数学班に分かれて活動しており、すべての研究班が高等学校総合文化祭や日本学生科学賞、JSEC等の全国大会に進出するなど高い成果を上げ続けている。とりわけ活動の柱は地学班のマグマ分化過程末期の環境の解明研究である。これまで国内各地の露頭調査と試料採取を行い、偏光顕微鏡を用いた観察によってマグマ分化過程を推定してきた。そのすべては研究論文にまとめて公表している。科学部は、Kawakatsu and Yamaguchi(1987)1)が広島花崗岩類の角閃石から発見した波状累帯構造(以後OZSという)に続いて、世界で2例目となる深成岩の角閃石からのOZSを発見した。角閃石のOZSは、マグマ分化末期に累進的酸化環境で熱水残液が循環した指標となることを示した研究論文と学会発表は注目を集めた。国際地球科学教育学会や国際科学技術フォーラム、国連高校生サミット等の国際学会での発表を経験し、国際的な研究展開の機は熟していた。
その後各地の深成岩体からOZSを発見した科学部は、2024年1月に19名の生徒で調査団を結成し、オーストラリアNSW州南東部の露頭調査を9日間実施した。生徒は、マグマ分化過程についての研究が進んでいる露頭として有名なBingi Bingi Pointをフィールドに選定した。調査の結果、海外の深成岩体の角閃石から初めてOZSを発見した。生徒自ら企業助成金に応募して研究資金を獲得し、また京都大学理学部と連携を依頼して、生徒自身によるEPMA分析を可能とした。その結果、マグマ分化過程末期の温度・圧力、酸素分圧環境を推定し、累進的酸化が進行したことを明らかにした。研究論文はAmerican Geophysical Union 2024(Washington D.C)とAGU2025(New Orleans)で2年連続で発表し高い評価を得た。2年連続の高校生による発表は前例がない。その際に得た助言や指摘に対応するため、2026年1月には、15名の生徒が1週間にわたってニュージーランド南島北部Nelson-Motuekaの露頭調査に臨んだ。調査地域の選定から研究計画の立案、資金の調達、京都大学理学部との高大連携関係の構築まで、すべてを生徒自らが行った。
高校生の研究が評価されたというと、必ず議論になるのが、(1) 高校生の研究発表だから評価を受けたのではないか、(2) 国際学会発表に必要な基礎知識を持っているのか、そしてそもそも(3) 高校生に国際的な研究は可能なのか等である。(1)については、一般研究者に混ざっての研究発表や国際論文掲載などが、その質の高さを客観的に示している。また(2)については、専門研究者には遠く及ばないまでも、膨大な先行研究や専門書を読み、必要に応じて大学の講義を受講するなどの努力の成果と評価したい。教員は指導せず助言に徹するようにし、研究は直線的に進まないことも体験させる。(3)については、むしろ国外へと高校生を連れ出し、国際性を身に着けさせることが必要な時代であると強く感じる。高校生ならこのレベルで十分などとして、出る杭の育成に歯止めをかけるのではなく、国際的な活躍の場を提供する必要がある。出る杭の育成といいながら、思考は協調を重視する姿勢が依然と蔓延していることに強い矛盾を感じている。正面から真摯に取り組む生徒の能力は、われわれの想像を超えるものであり、そのような姿勢で研究に向かう意欲を生徒に持たせることが重要である。
1) Kawakatsu and Yamaguchi(1987)Successive zoning of amphiboles during progressive oxidation in the Daito-Yokota granitic complex, San-in belt, southwest Japan.( Geochimica et Cosmochimica Acta, Volume 51, Issue 3, 535-540.)
姫路東高は、国際的に活躍する出る杭となる人材の育成と、科学技術人材の裾野の拡大をテーマとして、国際的な探究活動の展開に取り組んでいる。とりわけ地球科学をベースにした理科教育や探究活動は他に例を見ない。姫路東高SSHの活動の柱の一つに、科学部の国際的な活動の支援がある。科学部は物理班、化学班、生物班、地学班、数学班に分かれて活動しており、すべての研究班が高等学校総合文化祭や日本学生科学賞、JSEC等の全国大会に進出するなど高い成果を上げ続けている。とりわけ活動の柱は地学班のマグマ分化過程末期の環境の解明研究である。これまで国内各地の露頭調査と試料採取を行い、偏光顕微鏡を用いた観察によってマグマ分化過程を推定してきた。そのすべては研究論文にまとめて公表している。科学部は、Kawakatsu and Yamaguchi(1987)1)が広島花崗岩類の角閃石から発見した波状累帯構造(以後OZSという)に続いて、世界で2例目となる深成岩の角閃石からのOZSを発見した。角閃石のOZSは、マグマ分化末期に累進的酸化環境で熱水残液が循環した指標となることを示した研究論文と学会発表は注目を集めた。国際地球科学教育学会や国際科学技術フォーラム、国連高校生サミット等の国際学会での発表を経験し、国際的な研究展開の機は熟していた。
その後各地の深成岩体からOZSを発見した科学部は、2024年1月に19名の生徒で調査団を結成し、オーストラリアNSW州南東部の露頭調査を9日間実施した。生徒は、マグマ分化過程についての研究が進んでいる露頭として有名なBingi Bingi Pointをフィールドに選定した。調査の結果、海外の深成岩体の角閃石から初めてOZSを発見した。生徒自ら企業助成金に応募して研究資金を獲得し、また京都大学理学部と連携を依頼して、生徒自身によるEPMA分析を可能とした。その結果、マグマ分化過程末期の温度・圧力、酸素分圧環境を推定し、累進的酸化が進行したことを明らかにした。研究論文はAmerican Geophysical Union 2024(Washington D.C)とAGU2025(New Orleans)で2年連続で発表し高い評価を得た。2年連続の高校生による発表は前例がない。その際に得た助言や指摘に対応するため、2026年1月には、15名の生徒が1週間にわたってニュージーランド南島北部Nelson-Motuekaの露頭調査に臨んだ。調査地域の選定から研究計画の立案、資金の調達、京都大学理学部との高大連携関係の構築まで、すべてを生徒自らが行った。
高校生の研究が評価されたというと、必ず議論になるのが、(1) 高校生の研究発表だから評価を受けたのではないか、(2) 国際学会発表に必要な基礎知識を持っているのか、そしてそもそも(3) 高校生に国際的な研究は可能なのか等である。(1)については、一般研究者に混ざっての研究発表や国際論文掲載などが、その質の高さを客観的に示している。また(2)については、専門研究者には遠く及ばないまでも、膨大な先行研究や専門書を読み、必要に応じて大学の講義を受講するなどの努力の成果と評価したい。教員は指導せず助言に徹するようにし、研究は直線的に進まないことも体験させる。(3)については、むしろ国外へと高校生を連れ出し、国際性を身に着けさせることが必要な時代であると強く感じる。高校生ならこのレベルで十分などとして、出る杭の育成に歯止めをかけるのではなく、国際的な活躍の場を提供する必要がある。出る杭の育成といいながら、思考は協調を重視する姿勢が依然と蔓延していることに強い矛盾を感じている。正面から真摯に取り組む生徒の能力は、われわれの想像を超えるものであり、そのような姿勢で研究に向かう意欲を生徒に持たせることが重要である。
1) Kawakatsu and Yamaguchi(1987)Successive zoning of amphiboles during progressive oxidation in the Daito-Yokota granitic complex, San-in belt, southwest Japan.( Geochimica et Cosmochimica Acta, Volume 51, Issue 3, 535-540.)
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