講演情報
[G-O-2]フェムト秒レーザーアブレーション法を用いたジルコン・モナズ石に対する高空間分解ウラン–トリウム–鉛年代測定
*仁木 創太1、平田 岳史2 (1. 名古屋大学宇宙地球環境研究所、2. 東京大学大学院理学研究科地殻化学実験施設)
キーワード:
LA-ICP-MS、ウラン–トリウム–鉛年代学、ジルコン、モナズ石
多段階の火成作用、変成作用を通じて形成した鉱物粒子の内部組織には、各成長段階に対応する地球化学情報が保存されている。したがって、各成長段階に対応する内部組織ごとに局所的な微量元素組成や放射性同位体年代を得ることで、地質現象に対する詳細な描像へと近づくことが可能となる。ジルコンやモナズ石といった鉱物は高濃度のウランやトリウムを含有し、ウラン–鉛年代測定およびトリウム–鉛年代測定の対象として有用なタイムカプセルである。さらにその微量元素組成は、メルトの起源や晶出温度といった鉱物の形成環境に関する情報を反映している(e.g., Hoskin and Ireland, 2000, Watson and Harrison, 2005, Itano et al., 2020)。
局所化学分析法の中でも、レーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS)は、迅速性(1日に1000粒子規模の測定)、高感度(イオン検出効率:0.1–1%)、および元素分別の抑制に優れ、地球科学研究で広く用いられてきた。一般的なLA-ICP-MSのレーザービーム径は約10 μmであるが、実際の鉱物内部組織はそれより微細な場合が多い。一方で、ビーム径を小さくすると掘削体積が減少し、感度不足が問題となる。
この課題に対し、これまでの研究でビーム径2 μmのフェムト秒レーザーアブレーション(fsLA)装置を開発してきた。fsLAで生じる微粒子は既存のナノ秒LAに比べて小さく(Koch et al., 2006)、輸送時の喪失を抑えつつICPイオン源へ効率よく導入できる。本装置を、高感度な四重極型ICP質量分析装置(Nakazato et al., 2022)および複数の光電子増倍管検出器を備えた磁場型ICP質量分析装置(Obayashi et al., 2017; Hattori et al., 2017)と結合することで、重元素について1 μg g−1程度まで測定可能な分析性能を実現した(Sawada et al., 2025; Niki and Hirata, 2025)。
特に年代測定では、多重検出方式の磁場型ICP質量分析法(MC-ICP-MS)による複数同位体の同時検出が年代データの高精度化において重要である。高感度なMC-ICP-MSを用いれば、質量濃度として1%以上の高いトリウム濃度を有するモナズ石からは、ビーム径が2 μm であっても1パルスのレーザー照射から試料に含まれる壊変鉛の計測が可能である。しかしながら、レーザーアブレーション時に生じる100 nmより粗い粒子の導入により瞬間的に232Th信号強度が107 cpsを越えることがあり、不感時間に由来する顕著な数え落としが生じる。したがって、正確な計測には20 μsごとに信号出力を行う高時間分解(HTR)モードによる計測(Hirata et al., 2020)が必要である。実際のモナズ石年代参照物質の測定結果として、Namaqualand monazite (Simonetti et al., 2006; 1033 Ma)からは1015 ± 45 Ma、44069 monazite (Knoper et al., 2000; 425 Ma)からは439 ± 33 Maという232Th–208Pb年代が得られた(Niki and Hirata, 2025)。いずれも参照値と不確かさの範囲内で合致する値が得られた。
本研究ではさらに、モナズ石よりも壊変鉛の濃度が低いジルコンの年代測定を実施した。典型的なジルコンに含まれるウラン濃度は100–1000 μg g-1とモナズ石のトリウム濃度よりは少なく、その年代測定には3 μm四方に対するレーザー照射を要した。年代参照物質であるPlešoviceジルコン(337.13 Ma; Sláma et al., 2008)の測定では、10点のコンコーディア年代として339 ± 10 Ma (95%信頼区間)が得られた。得られた年代値は不確かさの範囲内で参照値と合致した。本研究を通じて、モナズ石およびジルコンに対する正確な高空間分解年代測定法を確立した。本手法は、従来のLA-ICP-MSでは困難であった微細な内部組織の年代決定を可能にした。本発表では、本手法の火成・変成履歴解読への応用に関しても議論する。
参照文献Hattori et al., 2017, JAAS. / Hirata et al., 2020, JAAS. / Hoskin and Ireland, 2000, Geology. / Itano et al., 2020, geosciences, / Knoper et al., 2000, J. Afr. Earth Sci. / Koch et al., 2006, JAAS. / Niki and Hirata, 2025, JAAS. / Obayashi et al., 2017, JAAS. / Sawada et al., 2025, Sci. Rep. / Simonetti et al., 2006, Int. J. Mass Spectrom. / Sláma et al., 2008, Chem. Geol. / Watson and Harrison, 2005, Science.
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