講演情報
[G-O-3]古地磁気学的証拠に基づく流紋岩質溶岩の表面褶曲の発達過程の復元
*宇野 康司1、古川 邦之2、金丸 龍夫3、壷井 基裕4、戸田 悠貴5、藤村 考大1 (1. 兵庫県立大学、2. 愛知大学、3. 日本大学、4. 関西学院大学、5. 岡山大学)
キーワード:
流紋岩溶岩、カワゴ平火山、古地磁気学、流動褶曲
流紋岩質溶岩は高粘性のため厚い溶岩流を形成し、定置過程において複雑な変形構造を生じる。表面が固結した後も、内部流動の継続や後続溶岩の押し出しによってせん断および圧縮応力が作用し、褶曲や転動などの二次的変形が発達することが指摘されている (Magnall et al. 2018; Uno et al. 2020)。しかし、表面褶曲構造の形成機構は直接観測例が乏しく、十分には解明されていない。そこで本研究では、先史時代の流紋岩質溶岩流に発達する表面褶曲の形成過程を明らかにするため、古地磁気学的手法を用いて検討した。本手法では、磁鉄鉱のキュリー温度(約580℃)以下で生じた変形が残留磁化方向の変化として記録されることを利用する。
研究対象は、伊豆半島中央部に位置する単成火山であるカワゴ平火山である。本火山は流紋岩質溶岩および火砕物を噴出し、嶋田(2000)により噴火史は4期に区分されている。本研究では、火口から北方へ約4.5 kmにわたり流下したステージⅣの溶岩流を主たる対象とした。カワゴ平流紋岩溶岩は、炭素14ウィグルマッチング法により1210-1187 cal BCと年代決定されており(Tani et al. 2013)、全岩SiO₂含有量は70.2-71.4 wt%である(Oka et al. 2021)。本溶岩流の表面には顕著な流動褶曲構造が発達し、中流域から明瞭となる。そこでは主流向(北向き)に直交する方向に、主に東西方向へ卓越する。一方、下流域では溶岩の流向が分断され、末端ではさらにブロック状構造へと移行する。
本研究では、東西走向の褶曲構造の北翼(下流側)、南翼(上流側)、褶曲構造が反時計回りに数十度回転した東翼(上流側)、西翼(下流側)から試料を採取した。さらに、溶岩試料との比較を目的として、ステージⅢの火砕流堆積物中に含まれる黒曜石ブロックも採取し、古地磁気分析を実施した。段階熱消磁実験の結果、溶岩流の冷却過程で獲得したとみられる2成分または3成分の残留磁化が抽出された。一方、火砕流堆積物中のブロックからは定置時に獲得した安定な低温成分が得られ、この磁化方向を噴火活動時の地球磁場の参照方向とした。溶岩流の全地点において、火砕物の参照方向と比較すると、磁化成分は低温部から高温部へ向かうにつれて、参照方向との角距離が増加する傾向が観察された。さらに、褶曲構造の給源側のサイトでは高温成分ほど伏角が浅くなり、末端側のサイトでは高温成分ほど伏角が深くなっていた。これにより、溶岩流表面の固結部は自身の温度がキュリー点以下まで低下した後も継続的な変形を被っていたことが明らかとなった。その変形は、褶曲構造の波長をより小さくするセンスで生じたと推定され、これが給源側での伏角の浅化と末端側での伏角の深化をもたらしたと考えられる。本研究の結果は、発生頻度の低い流紋岩溶岩の定置・流動様式に関して重要な知見を与えるものである。
[文献] Magnall et al. (2018) GSA Bull., doi.org/10.1130/B31931.1; Oka et al. (2021) JpGU2021, SVC31-P11; 嶋田 (2000) 第四紀研究 39:151-164; Tani et al. (2013) Radiocarbon, 55:748-752; Uno et al. (2020) Geophys. J. Int., 220:190-200.
研究対象は、伊豆半島中央部に位置する単成火山であるカワゴ平火山である。本火山は流紋岩質溶岩および火砕物を噴出し、嶋田(2000)により噴火史は4期に区分されている。本研究では、火口から北方へ約4.5 kmにわたり流下したステージⅣの溶岩流を主たる対象とした。カワゴ平流紋岩溶岩は、炭素14ウィグルマッチング法により1210-1187 cal BCと年代決定されており(Tani et al. 2013)、全岩SiO₂含有量は70.2-71.4 wt%である(Oka et al. 2021)。本溶岩流の表面には顕著な流動褶曲構造が発達し、中流域から明瞭となる。そこでは主流向(北向き)に直交する方向に、主に東西方向へ卓越する。一方、下流域では溶岩の流向が分断され、末端ではさらにブロック状構造へと移行する。
本研究では、東西走向の褶曲構造の北翼(下流側)、南翼(上流側)、褶曲構造が反時計回りに数十度回転した東翼(上流側)、西翼(下流側)から試料を採取した。さらに、溶岩試料との比較を目的として、ステージⅢの火砕流堆積物中に含まれる黒曜石ブロックも採取し、古地磁気分析を実施した。段階熱消磁実験の結果、溶岩流の冷却過程で獲得したとみられる2成分または3成分の残留磁化が抽出された。一方、火砕流堆積物中のブロックからは定置時に獲得した安定な低温成分が得られ、この磁化方向を噴火活動時の地球磁場の参照方向とした。溶岩流の全地点において、火砕物の参照方向と比較すると、磁化成分は低温部から高温部へ向かうにつれて、参照方向との角距離が増加する傾向が観察された。さらに、褶曲構造の給源側のサイトでは高温成分ほど伏角が浅くなり、末端側のサイトでは高温成分ほど伏角が深くなっていた。これにより、溶岩流表面の固結部は自身の温度がキュリー点以下まで低下した後も継続的な変形を被っていたことが明らかとなった。その変形は、褶曲構造の波長をより小さくするセンスで生じたと推定され、これが給源側での伏角の浅化と末端側での伏角の深化をもたらしたと考えられる。本研究の結果は、発生頻度の低い流紋岩溶岩の定置・流動様式に関して重要な知見を与えるものである。
[文献] Magnall et al. (2018) GSA Bull., doi.org/10.1130/B31931.1; Oka et al. (2021) JpGU2021, SVC31-P11; 嶋田 (2000) 第四紀研究 39:151-164; Tani et al. (2013) Radiocarbon, 55:748-752; Uno et al. (2020) Geophys. J. Int., 220:190-200.
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