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[G-O-5]能登半島狼煙沖海底堆積物における流体の移流と能登半島地震後の経時変化

*髙取 元1、井尻 暁1、小林 祐大1、佐川 拓也2、土岐 知弘3、石橋 純一郎1、木下 正高4、鹿児島 渉悟5、大塚 進平5、張 勁5、西尾 嘉朗6、Zandvakili Zahra6、朴 進午4 (1. 神戸大学、2. 金沢大学、3. 琉球大学、4. 東京大学、5. 富山大学、6. 高知大学)
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キーワード:

能登半島地震、海底堆積物、流体


 令和6年能登半島地震が発生した能登半島北部では、2020年12月から群発地震が観測されている。この群発地震の原因として、地殻内部に分布する流体が断層に作用した可能性が指摘されており、能登半島の地下20 km付近には上部マントル由来と考えられる流体に富む領域が確認されている (Nishimura et al., 2023)。能登半島周辺の海底には数多くの活断層が分布しており,海底堆積物の分析によってそれらの断層を経路とした深部起源の流体の影響が見られる可能性がある。また、巨大地震の直後には海底下の流体のフラックスが変動することがあり、能登半島沖の海底堆積物中にも地震の影響が反映されている可能性がある。本研究では、M7.6を計測した令和6年能登半島地震発生から約2ヶ月後の2024 年3月4~16 日に、学術研究船「白鳳丸」のKH-24-E1航海にて能登半島地震の震源域周辺の海底から表層堆積物を採取し、それらに含まれる間隙水の化学組成及び同位体組成を測定した。また、2025年8月9~14日に、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」のKS-25-9航海にて堆積物を採取し、経時変化について調べた。本研究の目的は、深部流体の上昇の確認及び地震による海底下環境の変化について解明することである。
KH-24-E1航海、KS-25-9航海において、能登半島沖の活断層周辺の海底から,ピストンコアラー(PC)及びマルチプルコアラー(MC)を用いて表層堆積物を採取した。採取した表層堆積物から,船上で直ちに油圧式スクイーザーまたはRhizon Samplerを用いて間隙水を抽出した。この間隙水試料について、主要溶存イオン濃度、溶存無機炭素(DIC)濃度、DICの炭素安定同位体比(δ13C-DIC)、ホウ素濃度を測定した。
2024年3月に採取した試料では、10地点で採取したMC試料のうち、能登半島狼煙沖に位置するCS-1サイト(37º32.79′N, 137º25.97′E,水深438 m)でのみ, 硫酸イオン濃度が表層付近から深度とともに急激に減少し,海底下10 cm付近でほぼ枯渇した。CS-1サイトでは、硫酸イオンの減少に伴ってDIC濃度が海底下3 cmの15 mMから18 cmにかけて31 mMまで増加した。δ13C-DICは海底下3 cmの-17‰から8 cmの-18‰まで少し低くなり、8 cmから23 cmまで一定の値を示した。CS-1サイトでの硫酸イオン濃度の減少の原因として、下方から供給されるメタンフラックスが大きいこと、硫酸還元により硫酸イオンが枯渇した深部の流体の上昇が考えられる。また、CS-1サイトでは、ホウ素濃度が深度方向に海水値 (0.4mM) から上昇し、海底下12cmで最大値0.6 mMとなり、12 cmから23 cmまでは一定の値を示した。ホウ素濃度の鉛直プロファイルは上に凸の形状を示した。ホウ素は高温下で堆積物から間隙水中に放出されるとされており、海底下数十cmの深さでは化学反応によって濃度が変動することはない。海底下12 cmでの濃度上昇は、高温下で生成したホウ素を含んだ流体の上昇を示唆する。ホウ素濃度の鉛直分布を用いた移流拡散モデルにより、移流速度は約70 cm/年と見積もられた。
2025年8月には、CS-1サイトにおいてマルチプルコアとピストンコアを採取し、海底下約5 mまでの間隙水試料を得ることができた。2024年に採取したMC試料の12 cmから18 cmの深度で見られた硫酸イオン濃度の枯渇、高濃度DIC、低δ13C-DIC、比較的高いホウ素濃度は、2025年の試料では海底下45 cmで見られた。また、ホウ素濃度は上に凸の深度プロファイルを示し、流体の移流があることを示す。移流速度は約20 cm/年と見積もられた。
以上の結果は、能登半島狼煙沖のCS-1サイトにおいて、比較的ホウ素濃度が高く硫酸イオンが枯渇した流体の海底表層への移流が存在し、地震発生2ヶ月後から20ヶ月後にかけて移流速度が低下したことを示す。この深部に由来すると考えられる流体の移流速度の低下は、地震後の海底下環境の変化を反映している可能性がある。

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