講演情報

[T11-O-2]千葉県の観測井に現れた遠地地震の影響
ー2025年カムチャツカ半島沖地震を主にー

*香川 淳1、荻津 達1、古野 邦雄 (1. 千葉県環境研究センター 地質環境研究室)
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キーワード:

地下水位変動、観測井、遠地地震、津波

 千葉県では地盤沈下の監視と地下水資源の有効利用等を目的とした観測井を155井設置し,地下水位の連続観測を行っている(2026年現在).地下水位の観測記録に現れる地震の影響についてはこれまでも報告されてきた(奥田・古野,1981,香川・古野,2012等).最近では2024年能登半島地震の際に地震動に直接応答する地下水位変動に加え,地殻変動(伸張応力)による地下水位の変位が観測されている(香川・古野,2024).今回,2025年カムチャツカ半島沖地震の影響が地下水位に顕著に現れていることから,近年の他の遠地地震の影響とあわせて報告する.
2025年7月30日08時24分(日本時間)にカムチャツカ半島沖でM8.8の巨大地震が発生し,日本では北海道や東北地方を中心に有感地震(最大震度2)として観測された(気象庁,2025).震源が35kmと浅かったため津波が発生し,日本でも岩手県久慈港で最大141cmの津波が観測された.千葉県内で震度1以上は観測されなかったが,東京湾内の各検潮所では12時過ぎに15~20cmほどの津波が観測された.
カムチャツカ半島沖地震の影響は,地下水位観測井「Yc-3(八街市沖,井戸深度116m,スクリーン深度75~113m)」(図-1)の地下水位記録(4秒間隔記録)に顕著に現れている(図-2).これによると7月30日08時30分頃から地下水位の上下変動が始まり,最大104mmの地下水位上昇,128mmの地下水位低下が観測された.10mmを超える地下水位変動は10時過ぎには収まったが,数mmの変動はそれ以降も継続した.他の千葉県内の観測井においても地震動の影響を受けた数mm~5cm程の地下水位変動が多く認められた.
一方,海岸に近い観測井では潮汐とは周期の異なる地下水位変動が地震発生時以降に観測されている.地盤沈下観測井「船橋-2(船橋市湊町,深度200m,スクリーン深度172~183m)」(1分間隔記録)では潮汐の影響による1日に2回の周期,10~20cmの地下水位上下動が観測されていたが,7月30日08時40分頃から周期1~2分,1~3cmの地下水位上下変動が始まり10分程度継続し,その後は数mm程度の上下動が数時間継続した(図-3).さらに13時頃から周期1時間強,約2cmの地下水位上下変動が始まり,強弱をくり返しつつ一週間にわたって変動が観測された.この地震発生から約4~5時間遅れて発生した地下水位上下変動は,海岸に面し潮汐の影響を受ける複数の観測井(浦安市,市川市,習志野市,君津市等)でも認められた.これは東京湾内で観測された潮位変化(津波)と調和的であることから,カムチャツカ半島沖地震で発生した津波の影響を受けた地下水位変動と推定される.
近年,地下水位観測機器のデジタル化が進み,これまでのフロートの上下動をチャートに記録する方式から,水圧センサ値をデータロガーで記録する方式に移行しつつあるが,記録間隔から外れた最大瞬時値を取りこぼすケースも認められる.今後の地下水位観測にあたりデジタル機器とアナログ機器の運用体制についても検討が必要となろう.

文 献
気象庁,2025,令和7年7月地震・火山月報(防災編).
奥田庸雄・古野邦雄,1981,地盤沈下・地下水位観測井における地震時の水位変化,千葉公害研報告13.
香川淳・古野邦雄,2012,2011年東北地方太平洋沖地震による関東地下水盆南東部における地下水位変動,日本地質学会第119年学術大会講演要旨.
香川淳・古野邦雄,2024,2024年能登半島地震に伴う地下水位変動,日本地質学会第131年講演要旨.
日本海洋データセンター,地域遅延モードデータベース (NEAR-GOOS RDMDB).

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