講演情報
[T11-O-7]機械学習によるボーリングデータの地層対比に向けた地盤の特徴量の数値化手法の検討
*野々垣 進1、根本 達也2 (1. 産総研地質調査総合センター、2. 大阪公立大学)
キーワード:
機械学習、ボーリングデータ、地層対比、特徴量
地盤リスク評価やインフラ整備等を実施するにあたっては,地下における地層の分布形態を詳細に把握することが不可欠である.一般に,都市域の地質構造解析,特に地下数十メートルを対象とする浅部地質構造解析では,公共工事などで作成されたボーリングデータに対して地層対比を行い,その結果に基づいて3次元地質モデルを作成することが多い(米岡ほか,2025など).このため,ボーリングデータの地層対比をいかに効率的にかつ正確に行うかが,都市域の浅部地質構造解析では鍵となる.
本研究の目的は,機械学習を利用して,国や自治体から公開されている大量の機械可読なボーリングデータに対して,迅速かつ高精度で地層対比を行う手法を開発することである.このために,これまで機械学習に有効な地盤の特徴量の検討や,特徴量を効果的に利用するための機械学習アルゴリズムの検討を行ってきた(野々垣・根本,2024).しかし,地盤の特徴量をどのように数値化するのかについては未だ検討が不十分である.そこで本研究では,野々垣・根本(2024)をベースに,地盤の特徴量の新たな数値化手法について検討した.
ボーリングデータの地層対比は,地盤の特徴量を入力データ,地層名ラベルを出力データとする教師あり学習の分類問題として扱える.野々垣・根本(2024)では,この考えのもと,分類問題の入力データとして,緯度経度,標高,岩石・土質の種類と厚さ,標準貫入試験結果(N値),色調などの特徴量を利用することを提案した.本研究では,これらの特徴量のうち,岩石・土質の種類とN値を数値化する手法について見直した.具体的には,前者については,地盤の統一的な分類を目的として定められた岩石・土コード(国土交通省,2016など)に基づく数値化手法(方法1)を検討した.後者については,値が小さい範囲に偏る場合でも値の変化を比較的感度よく捉えられる対数スケーリングによる正規化手法(方法2)を検討した.さらに,組み合わせを変えながらこれら2つの手法を従来の数値化手法に適用することで得た地盤の特徴量を用いて,機械学習により地層対比モデルを作成した.そのうえで,作成した地層対比モデルの予測性能を従来手法のものと比較し,手法1および2の有効性を評価した.従来手法との比較を行うため,テストデータおよび機械学習アルゴリズムには,野々垣・根本(2024)と同様のものを用いた.すなわち,テストデータには納谷ほか(2018)で利用された4つ地層(清川層,木下層,沖積層,人工地層)が分布する地域のボーリングデータとその地層対比結果を用いた.機械学習アルゴリズムには,サポートベクターマシン,決定木など代表的なものと独自のニューラルネットワーク(畳み込み層なし・あり)を用いた.モデル性能の評価基準には,正解率(Accuracy),適合率(Precision),再現率(Recall),特異率(Specificity),F1スコア(F1score)などの数値指標を用いた.
結果として,方法1だけを適用した場合は,ほとんどの機械学習アルゴリズムによる地層対比モデルが,従来手法と同程度またはより低い予測性能を示した.一方,方法2だけを適用した場合は,ほとんどの機械学習アルゴリズムによる地層対比モデルが,従来手法と同程度またはより高い予測性能を示した.また,方法1と2の両方を適用した場合は,XGboostやニューラルネットワークなど,比較的複雑なアルゴリズムによる地層対比モデルが従来手法よりも高い予測性能を示した.このように,方法2により従来よりも有効なN値の利用を実現できた一方で,岩石・土質の種類の有効利用については検討の余地が残った.今後は,この点についてさらに検討を進めるとともに,地形区分のような地下地質と深く関係するボーリングデータ以外の空間情報を地盤の特徴量として地層対比に組み込むことも検討していく予定である.本研究はJSPS科研費25K07430の助成を受けたものである.
文献
国土交通省,2016,地質・土質調査成果電子納品要領.国土交通省,50p.
納谷ほか,2018,都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」説明書.産総研地質調査総合センター,55p.
野々垣・根本,2024,ボーリングデータの地層対比処理の自動化に向けた機械学習アルゴリズムの検討,日本地質学会第131年学術大会講演要旨.
米岡ほか,2025,都市域の地質地盤図「埼玉県南東部」説明書.産総研地質調査総合センター,74p.
本研究の目的は,機械学習を利用して,国や自治体から公開されている大量の機械可読なボーリングデータに対して,迅速かつ高精度で地層対比を行う手法を開発することである.このために,これまで機械学習に有効な地盤の特徴量の検討や,特徴量を効果的に利用するための機械学習アルゴリズムの検討を行ってきた(野々垣・根本,2024).しかし,地盤の特徴量をどのように数値化するのかについては未だ検討が不十分である.そこで本研究では,野々垣・根本(2024)をベースに,地盤の特徴量の新たな数値化手法について検討した.
ボーリングデータの地層対比は,地盤の特徴量を入力データ,地層名ラベルを出力データとする教師あり学習の分類問題として扱える.野々垣・根本(2024)では,この考えのもと,分類問題の入力データとして,緯度経度,標高,岩石・土質の種類と厚さ,標準貫入試験結果(N値),色調などの特徴量を利用することを提案した.本研究では,これらの特徴量のうち,岩石・土質の種類とN値を数値化する手法について見直した.具体的には,前者については,地盤の統一的な分類を目的として定められた岩石・土コード(国土交通省,2016など)に基づく数値化手法(方法1)を検討した.後者については,値が小さい範囲に偏る場合でも値の変化を比較的感度よく捉えられる対数スケーリングによる正規化手法(方法2)を検討した.さらに,組み合わせを変えながらこれら2つの手法を従来の数値化手法に適用することで得た地盤の特徴量を用いて,機械学習により地層対比モデルを作成した.そのうえで,作成した地層対比モデルの予測性能を従来手法のものと比較し,手法1および2の有効性を評価した.従来手法との比較を行うため,テストデータおよび機械学習アルゴリズムには,野々垣・根本(2024)と同様のものを用いた.すなわち,テストデータには納谷ほか(2018)で利用された4つ地層(清川層,木下層,沖積層,人工地層)が分布する地域のボーリングデータとその地層対比結果を用いた.機械学習アルゴリズムには,サポートベクターマシン,決定木など代表的なものと独自のニューラルネットワーク(畳み込み層なし・あり)を用いた.モデル性能の評価基準には,正解率(Accuracy),適合率(Precision),再現率(Recall),特異率(Specificity),F1スコア(F1score)などの数値指標を用いた.
結果として,方法1だけを適用した場合は,ほとんどの機械学習アルゴリズムによる地層対比モデルが,従来手法と同程度またはより低い予測性能を示した.一方,方法2だけを適用した場合は,ほとんどの機械学習アルゴリズムによる地層対比モデルが,従来手法と同程度またはより高い予測性能を示した.また,方法1と2の両方を適用した場合は,XGboostやニューラルネットワークなど,比較的複雑なアルゴリズムによる地層対比モデルが従来手法よりも高い予測性能を示した.このように,方法2により従来よりも有効なN値の利用を実現できた一方で,岩石・土質の種類の有効利用については検討の余地が残った.今後は,この点についてさらに検討を進めるとともに,地形区分のような地下地質と深く関係するボーリングデータ以外の空間情報を地盤の特徴量として地層対比に組み込むことも検討していく予定である.本研究はJSPS科研費25K07430の助成を受けたものである.
文献
国土交通省,2016,地質・土質調査成果電子納品要領.国土交通省,50p.
納谷ほか,2018,都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」説明書.産総研地質調査総合センター,55p.
野々垣・根本,2024,ボーリングデータの地層対比処理の自動化に向けた機械学習アルゴリズムの検討,日本地質学会第131年学術大会講演要旨.
米岡ほか,2025,都市域の地質地盤図「埼玉県南東部」説明書.産総研地質調査総合センター,74p.
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