講演情報

[T6-O-5](招待講演)高密度地震探査が明らかにした南海トラフ全域の沈み込み基盤形状と付加体構造

*白石 和也1、新井 隆太1、中村 恭之1、藤江 剛1 (1. 海洋研究開発機構)
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【ハイライト講演】南海トラフ全域で実施された世界でも類を見ない稠密な反射法地震探査により,沈み込む海洋プレート基盤の詳細な三次元形状と付加体構造が明らかになりました.本講演では,海山や古海嶺などの基盤起伏が巨大地震セグメントの形成に与える影響と,東海沖で見出された上盤構造の側方変化がスロー地震活動と密接に対応することを紹介します.地震発生場を支配する「沈み込む基盤」と「上盤構造」の新たな関係に迫る,最新成果をぜひご覧ください. ※ハイライト講演とは...

キーワード:

沈み込み帯、南海トラフ、地震探査


 南海トラフでは、津波を伴うプレート境界型地震の再来が危惧され、近年は偏在的に繰り返し発生するスロー地震の観測が報告されている。地震発生帯の実態解明を目的として、地震探査や科学掘削により地震活動と地質構造の関係が精力的に研究されている。海洋研究開発機構では、南海トラフ沈み込み帯の全域について、詳細な地質構造と物理特性を三次元的に明らかにするため、2018~2025年に既存データを活用しつつ、トラフ軸直交方向4~8 km間隔、平行方向10~25 km間隔の稠密な二次元反射法地震探査を実施した。
稠密地震探査の結果、2017年以前の既存データを基にまとめられた大局的な三次元モデル(Nakanishi et al. 2018)に比べて、より高い空間分解能で地殻内の地質構造や物性分布が明らかになった。特に、沈み込む海洋プレートの火成岩基盤と堆積層との境界の形状は、深さ15–20km程度まで数kmの水平空間分解能で描像された(Shiraishi et al. 2025a)。西側(日向灘)は九州–パラオ海嶺北方延長の高まりと急傾斜の沈み込み、中央(南海)は南北方向の線状窪地と弧状に配列する海山・リッジ、東部(東南海~東海)は古ゼニス海嶺に対応する変形フロントに沿った大規模な起伏を特徴とする。これらの地形的な特徴は、過去の四国海盆の海底拡大とその後の火成活動によって形成されたものが、現在の位置まで沈み込んできた結果であると考えられる。
これら3領域は、海溝型地震の想定震源域の区分にほぼ一致しており、沈み込む前に形成された基盤の凸凹が、現在の地質構造発達や大きな地震が発生した時の断層すべり分布に影響を与えていることが示唆される。一方、局在しているスロー地震の活動域は、基盤起伏と必ずしも対応せず、起伏だけでは活動域を説明できない。基盤の起伏のみがスロー地震活動を規定しているのではなく、上位にある堆積物の性状、地質構造の発達、断層の形状やその周囲の力学的・水理学的条件の局所的な変化を明らかにしていくことが重要である。そのために、反射法地震探査による地質構造に加え、海底地震計を用いた屈折法・広角反射法から得られる物性情報との統合的な解析や解釈が有用である(Arai et al. 2023; Shiraishi et al. 2025b)。また、二次元調査では捉えることができない規模の基盤形状や地殻内部構造の空間変化が、局所性を支配している可能性もある(Shiraishi et al. 2020)。
基盤の起伏に対してスロー地震の活動が静穏な海域の一つである東海沖では、上盤側の地殻構造の変化に注目すると、南海トラフの他の海域では見られない、特徴的な付加体内部の断層発達が観察された。熊野沖から東海沖にかけて尾根状に伏在する古ゼニス海嶺は、稠密な反射法地震探査データの解析によって、東西方向に大きく変化し、伊勢湾の南方に顕著な高まりが沈み込んでいるのが明らかとなった。そして、この顕著な高まりを境に東西で、付加体中の断層発達、デコルマ面と沈み込み堆積層、基盤より上位の堆積層の厚さなど、地殻内の構造的特徴が大きく異なることが観察された。これらの東西方向の特徴の違いはスロー地震の活動分布とよく対応している。東西方向に形状が変化する古ゼニス海嶺の斜め沈み込みが上盤構造を変化させ、物理化学条件の側方変化を通じて東南海–東海セグメント境界を形成したと考えられる。

参考文献
Arai, Miura, Nakamura, et al. (2023) Nat. Commun., 14:5101. https://doi.org/10.1038/s41467-023-40762-4
Nakanishi, Takahashi, Yamamoto, et al. (2018) Geol. Soc. Am. Spec. Pap. 534:69–86. https://doi.org/10.1130/2018.2534(04).
Shiraishi, Yamada, Nakano, et al. (2020) Earth Planets Space 72:72. https://doi.org/10.1186/s40623-020-01204-3
Shiraishi, Nakamura, Arai, et al. (2025a) Sci. Rep. 15:25530. https://doi.org/10.1038/s41598-025-08846-x
Shiraishi, Fujie, Nakamura, Arai (2025b) Mar. Pet. Geol. 173:107258. https://doi.org/10.1016/j.marpetgeo.2024.107258

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