講演情報
[T6-O-11]四万十帯牟岐メランジュの石英脈の累帯構造を用いた地震発生帯上限付近における流体圧変動の評価
*秋柴 愛斗1、DANDAR Otgonbayar1、大柳 良介1、山口 飛鳥2、西尾 嘉朗3、SMYE Andrew4、FISHER Donald4、FEINEMAN Maureen4、岡本 敦1 (1. 東北大学、2. 東京大学 大気海洋研究所、3. 高知大学、4. Pennsylvania State Univ.)
キーワード:
地震発生帯、四万十帯、鉱物脈、流体圧、累帯構造
地震発生帯における高流体圧の維持には、沈み込む海洋プレートからの脱水と亀裂のシーリングが必要不可欠である。シーリングは石英や炭酸塩などの鉱物による亀裂の充填プロセスであり、その痕跡は鉱物脈として露頭で観察することができる。これまで、クラックシールテクスチャや累帯構造を伴う石英脈から、亀裂充填のタイムスケールや地震サイクルとの関連性が研究されてきた (Ujiie et al., 2018; Raimbourg et al., 2022; Hooker et al., 2026)。しかし、地震発生帯の上限付近は下限付近に比べて温度が低く、石英の析出速度が2〜3桁低いと考えられている (e.g. Williams & Fagereng, 2022)。そのため、地震発生帯の上限付近において、既存のモデルで100〜1000年程度の地震サイクルの間に石英のみで亀裂を完全に充填することは容易ではない。このギャップを補うメカニズムとして、大規模な流体の移流に伴う急激な温度・圧力変化によって高い過飽和度が生じ、石英の核形成、析出速度が上昇した可能性や、炭酸塩など石英以外の鉱物が関与する複合的なシーリングが予想されるが、その実態は十分に解明されていない。
本研究では、地震発生帯上限付近の地質学的アナログである四万十帯牟岐メランジュを対象に、鉱物脈の微細組織と石英の累帯構造の分析を行い、当該領域におけるシーリングプロセスを検討した。対象とした鉱物脈は、(1) 玄武岩ウルトラカタクレーサイト中のせん断脈、(2) 頁岩中のせん断脈、(3) 頁岩中の開口亀裂を充填した脈、(4) 砂岩ブロック中の開口亀裂を充填した脈の計4タイプである。微細組織観察の結果、すべてのタイプの鉱物脈で石英とカルサイトが確認された。脈は石英のみ、カルサイトのみ、両者が共存するものが見られたが、両者が共存する脈では「壁側に石英、内側にカルサイト」という析出順序が観察された。壁側にカルサイト、内側に石英のパターンや、両者がランダムに配置したりする組織は見られなかった。さらに、SEM-CLおよびEPMAのAlマッピングにより石英の累帯構造を観察した結果、(1)と(2) のせん断脈ではオシラトリーゾーニング(Oscillatory zoning)が観察された。一方、(3)と(4) の開口亀裂を充填した脈では、ゾーニングは認められたものの、明瞭な繰り返し性は確認できなかった。
これらの結果は、せん断脈が断層活動に関連した長期的な流体圧変動を記録しているのに対し、開口亀裂を充填した脈は亀裂の開口に伴う突発的で短期的な流体圧変動を記録していることを示唆している。これまでも石英の累帯構造が断層活動や地震サイクルに伴う流体圧変動を記録している可能性は指摘されてきたが(Raimbourg et al., 2022; Hooker et al., 2026)、脈の産状によってゾーニングの繰り返し回数や幅などの様式が異なることが明らかになった。今後は、どのような地震、地質学的イベントに伴う流体圧変動が石英の累帯構造に保存されているのか、さらなる解明を進めたい。
参考文献
- Hooker, J. N., Luciano, S., Fisher, D. M., Smye, A. J., Hashimoto, Y., Hosokawa, T., & Elliott, S. J. (2026). Veining style and size-scaling behavior throughout the generation and exhumation of subduction mélange: Evidence from Japan and Alaska. Journal of Structural Geology, 203, 105607.
- Raimbourg, H., Famin, V., Canizarès, A., & Le Trong, E. (2022). Fluid pressure changes recorded by trace elements in quartz. Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 23, e2022GC010346.
- Ujiie, K., Saishu, H., Fagereng, Å., Nishiyama, N., Otsubo, M., Masuyama, H., & Kagi, H. (2018). An explanation of episodic tremor and slow slip constrained by crack-seal veins and viscous shear in subduction mélange. Geophysical Research Letters, 45, 5371-5379.
- Williams, R. T., & Fagereng, Å. (2022). The role of quartz cementation in the seismic cycle: A critical review. Reviews of Geophysics, 60, e2021RG000768.
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