講演情報
[T11-O-14]花崗岩分布域を後背地にもつ平野の地盤特性:愛知県豊田地域を例に
*中澤 努1、長 郁夫1、小松原 純子1 (1. 産総研地質調査総合センター)
キーワード:
地盤特性、段丘堆積物、風化、常時微動観測、豊田地域
一般的に平野の地盤は,台地の地盤は良好で,低地の地盤はあまりよくないという認識が強く根付いている.この認識は一般論としては正しいが,これにあてはまらないケースも多々あることに留意すべきである.例えば,演者らはこれまで台地の地下の谷埋め泥層(中澤ほか,2019など)や台地表層部のローム層(中澤ほか,2020)など,台地の地盤リスク要因を指摘してきた.今回は段丘堆積物の風化に注目して,花崗岩分布域を後背地にもつ平野の地盤特性について調査を実施したのでその結果を紹介する.
今回調査の対象としたのは愛知県豊田地域である.この地域は矢作川が形成した河川成の低地及び台地からなり,中島ほか(2021)に基づけば,地形面は高位より順に,伊保原面,挙母面,碧海面,越戸面,籠川面,沖積面に区分される.各段丘面の形成年代は不詳である.また矢作川の上流域は領家深成岩類(主に花崗岩類)が広く分布する(山崎ほか,2020).この地域の平野の地盤特性を知るために,本研究では,既存ボーリングデータの精査と現地での常時微動観測を実施した.
今回,矢作川右岸の豊田市街地を東西に横断する測線を設定し,測線上で常時微動観測を実施した.測線は挙母面,籠川面,沖積面を横断する測線であり,これらの地形面で地盤特性を比較した.常時微動観測のH/Vスペクトルは,沖積面では3 Hz及び5–6 Hz,籠川面では2–3 Hz,挙母面では1 Hz付近に比較的明瞭なピークが見られた.また深度30 mまでの平均S波速度(AVS30)はそれぞれ335–355 m/s,288–309 m/s,257–269 m/sに分布した.つまりこの測線では沖積面ほど地盤が良好で,高位の挙母面の地盤がもっとも軟らかいという結果が示された.ボーリングデータを確認すると,沖積面では表層から数m程度の堆積物は軟らかいものの,N値50を超える礫層が比較的浅いところに分布するのに対し,挙母面に相当する地域ではN値10–20程度の堆積物が層厚20 m以上連続することが分かる.
調査地域の沖積面と段丘面の地盤状況が逆転する要因として,段丘堆積物の風化が考えられる.この地域を流下する矢作川は前述のように花崗岩類の分布域を後背地としており,矢作川が形成した平野は主に花崗岩類を起源とする堆積物からなる.花崗岩類を起源とする堆積物は長石類を多く含むため風化しやすく,特に高位の段丘,すなわち時代の古い段丘ほど段丘堆積物の風化がすすみ,粘土化がすすんでいると考えることができる.実際に挙母面に相当する地域のボーリングデータでは風化土の記載が多く見受けられるとともに,露頭でも風化し粘土化した段丘堆積物を確認している.一方で沖積面の礫層は時代が新しいことから風化があまりすすんでいない.またこの地域は河川中流域であることからそのような比較的新鮮な礫層が沖積面のごく浅いところに広く分布している.このような理由により花崗岩分布域を後背地にもつ平野では,低地と台地の地盤特性が逆転する場合があることに留意する必要がある.
文献
中澤ほか(2019)地質雑,125,367–385.
中澤ほか(2020)地質雑,126,311–326.
中島ほか(2021)5万分の1地質図幅「豊田」.産総研地質調査総合センター.
山崎ほか(2020)5万分の1地質図幅「明智」.産総研地質調査総合センター.
今回調査の対象としたのは愛知県豊田地域である.この地域は矢作川が形成した河川成の低地及び台地からなり,中島ほか(2021)に基づけば,地形面は高位より順に,伊保原面,挙母面,碧海面,越戸面,籠川面,沖積面に区分される.各段丘面の形成年代は不詳である.また矢作川の上流域は領家深成岩類(主に花崗岩類)が広く分布する(山崎ほか,2020).この地域の平野の地盤特性を知るために,本研究では,既存ボーリングデータの精査と現地での常時微動観測を実施した.
今回,矢作川右岸の豊田市街地を東西に横断する測線を設定し,測線上で常時微動観測を実施した.測線は挙母面,籠川面,沖積面を横断する測線であり,これらの地形面で地盤特性を比較した.常時微動観測のH/Vスペクトルは,沖積面では3 Hz及び5–6 Hz,籠川面では2–3 Hz,挙母面では1 Hz付近に比較的明瞭なピークが見られた.また深度30 mまでの平均S波速度(AVS30)はそれぞれ335–355 m/s,288–309 m/s,257–269 m/sに分布した.つまりこの測線では沖積面ほど地盤が良好で,高位の挙母面の地盤がもっとも軟らかいという結果が示された.ボーリングデータを確認すると,沖積面では表層から数m程度の堆積物は軟らかいものの,N値50を超える礫層が比較的浅いところに分布するのに対し,挙母面に相当する地域ではN値10–20程度の堆積物が層厚20 m以上連続することが分かる.
調査地域の沖積面と段丘面の地盤状況が逆転する要因として,段丘堆積物の風化が考えられる.この地域を流下する矢作川は前述のように花崗岩類の分布域を後背地としており,矢作川が形成した平野は主に花崗岩類を起源とする堆積物からなる.花崗岩類を起源とする堆積物は長石類を多く含むため風化しやすく,特に高位の段丘,すなわち時代の古い段丘ほど段丘堆積物の風化がすすみ,粘土化がすすんでいると考えることができる.実際に挙母面に相当する地域のボーリングデータでは風化土の記載が多く見受けられるとともに,露頭でも風化し粘土化した段丘堆積物を確認している.一方で沖積面の礫層は時代が新しいことから風化があまりすすんでいない.またこの地域は河川中流域であることからそのような比較的新鮮な礫層が沖積面のごく浅いところに広く分布している.このような理由により花崗岩分布域を後背地にもつ平野では,低地と台地の地盤特性が逆転する場合があることに留意する必要がある.
文献
中澤ほか(2019)地質雑,125,367–385.
中澤ほか(2020)地質雑,126,311–326.
中島ほか(2021)5万分の1地質図幅「豊田」.産総研地質調査総合センター.
山崎ほか(2020)5万分の1地質図幅「明智」.産総研地質調査総合センター.
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