講演情報

[T4-O-3]四国西部三波川帯の変ハンレイ岩類の起源

*小松 正幸1、中野 伸彦2、小山内 康人2、大和田 正明3、豊島 剛志4 (1. 愛媛大学、2. 九州大学、3. 山口大学、4. 新潟大学)
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キーワード:

変ハンレイ岩、エクロジャイト、シンプレクタイト、三波川変成帯、四国西部

 四国西部の三波川帯に産する変ハンレイ岩体の分布と産状は近年坂野ほか(2010)、宮崎(2024)によって明らかにされ、生成年代についてはKawaguchi et al.(2021)が139−135Maのジルコン年代を報告している。またその起原についてKawaguchi et al.(2021)は変ハンレイ岩ジルコンの微量化学成分の解析から大陸地殻起原とし、沈み込む三波川帯の陸側下面を構成していた’hanging wall’岩塊であると論じている。それに対して宮崎(2024)はジルコンの微量化学成分は大陸性と海山性を区別できないこと、変ハンレイ岩が海洋性苦鉄質片岩に挟まれている産状から、海洋底玄武岩に取り込まれた海山起原であるとしている。著者らは数年来、佐田岬半島の中央構造線と関連する三波川帯の断層調査を行なってきたが、最近は変成岩類の岩石学的研究に取り組み始めた。その過程で、長浜西部松笠の変ハンレイ岩体において斑点状の乳白色鉱物と特異な微細組織からなる岩石の存在に注目し解析を行なった。この岩石の微細組織は角閃石とソシュール石からなるシンプレクタイトで、斑点状に存在する乳白色鉱物はその形態からザクロ石仮像であることが判明した。このシンプレクタイトの元はオンファス輝石の分解による単斜輝石と斜長石の組み合わせが二次的に変質したもので、原岩はエクロジャイトであった可能性が高い。このハンレイ岩体は一般にマイロナイト化によって片状化しているため、細粒片状部がオンファス輝石の分解によるシンプレクタイトであることを想像するのは困難であるが、変形の弱いシンプレクタイト岩から側方への組織変化を追うことによって、マイロナイト化によるシンプレクタイトの変化を追跡することができた。また、シンプレクタイトを構成する角閃石とソシュール石化斜長石(以下ソシュール石)の粒度は数10μmから100μm以上に達しており、一般的なエクロジャイトのシンプレクタイトに比較し異常に粗粒である。この粒度の変化を追跡すると数ミリの角閃石とソシュール石の組み合わせからなる閃緑岩様の岩相に連続する。したがってこれらの微閃緑岩ないし細粒閃緑岩と見なすことが出来る岩石はすべてエクロジャイト起原の可能性がある。松笠乗馬クラブ下の海岸ではこの種の不均質閃緑岩が広く出現する。エクロジャイト起原の変ハンレイ岩と共生する岩石は、ザクロ石仮像を含む変ハンレイ岩、単斜輝石変ハンレイ岩、ザクロ石仮像を含む角閃岩とそれらのマイロナイトで、これらが層構造をなして共生し、さらにこれらの岩層は灰黄色苦鉄質片岩(灰色片岩と呼称)に密着して挟まれる。また、変ハンレイ岩中には無数の苦鉄質岩脈が存在し、変ハンレイ岩と共に変成変形作用を被っているが、エクロジャイト相の変成作用を受けた証拠は確認できていない。四国西部三波川帯には双海から長浜まで7つの変ハンレイ岩体が存在する(坂野ほか, 宮崎上記)。これらの岩体の全てがエクロジャイト起原のシンプレクタイト岩や変ハンレイ岩、ザクロ石角閃岩及びそのマイロナイトからなることが判明した。さらに、松山南部久万高原町において仲田ほか(2019)が発見した変ハンレイ岩はこのグループに属する。これらは共にエクロジャイト相で変成作用を受けた岩石群でこれを長浜後退変成エクロジャイトユニット(略称長浜‘エクロジャイト’ユニット)と呼ぶことにする。長浜‘エクロジャイト’ユニットのシンプレクタイトが一般的なエクロジャイトに比べ粒度が大きく、かつオンファス輝石が完全に分解しているのは、長浜‘エクロジャイト’岩体が深部から上昇して定置した深度が、別子エクロジャイトに比較してより浅い条件であったことを示唆する。その上昇過程でオンファサイトの分解、初生的シンプレクタイトの形成があったと考えられる。さらに定置した位置で下底の緑色岩と共に変形変成作用を被り、シンプレクタイトが含水鉱物に変質されると共に、マイロナイト化による新たな片理の微細鉱物群としてAct -E p -Chl -Pump – Abが形成された。この組み合わせは三波川帯では最も低度の緑泥石帯に相当する。一方、長浜西方の佐田岬半島に属する出海〜伊方の変ハンレイ岩体は宮崎(2024)によって大小9岩体が記載されているが、これらにはザクロ石仮像やシンプレクタイトを含むものは存在せず、青緑色角閃石(アクチノ閃石)―緑簾石―緑泥石―ソウ長石を主体とする。したがってこれらは伊予ユニットの緑色片岩層の一部である(宮崎、2024)。
文献 坂野ほか(2010)産総研5万分の1地質図幅「大洲」
Kawaguchi et al.(2021)Geosci. Jour. v26, 37-54
仲田ほか(2019)地質雑、126巻, 447-452 
宮崎一博(2024)産総研5万分の1地質図幅「伊予長浜」

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