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[T4-O-4]四万十付加体に含まれる蛇紋岩の起源とテクトニックプロセス:蛇紋岩化した海洋リソスフェアのダイアピル的貫入の可能性

*志村 侑亮1,2、遠藤 俊祐3、淺原 良浩1、羽地 俊樹2、牛丸 健太郎2、山本 鋼志4 (1. 名古屋大学大学院環境学研究科、2. 産総研地質情報研究部門、3. 島根大学総合理工学部、4. 名古屋大学博物館)
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キーワード:

蛇紋岩、海洋リソスフェア、アウターライズ断層、四万十帯、沈み込み帯

 マントル物質の加水作用によって形成される蛇紋岩は,沈み込み帯のプレート境界で形成される付加体や高圧型変成岩類に取り込まれることがあり,その起源は大きくマントルウェッジ起源と海洋リソスフェア起源に区分される.白亜紀の東アジア東縁沈み込み帯では,プレート境界浅部で四万十付加体が,深部で三波川変成岩類が形成されていた1.これらの地質体には希に蛇紋岩が産するが,その多くは三波川変成岩類に分布する.Aoya et al. (2013)2は,三波川変成岩類のザクロ石帯より高変成部に蛇紋岩が特徴的に産することに着目し,それら蛇紋岩がマントルウェッジ起源であると結論付けた.一方,紀伊半島中央部に分布する四万十付加体の小栗栖ユニットは,パンペリー石-アクチノ閃石相の弱変成作用を経験した付加体であるが,局所的に蛇紋岩(以下,中黒蛇紋岩と呼ぶ)が存在することが知られている3.しかし,中黒蛇紋岩の起源や小栗栖ユニット中に定置したプロセスは不明であった.そこで本研究では,野外調査に加えて,岩石学的・鉱物学的・地球化学的・構造地質学的解析を行うことで,中黒蛇紋岩の起源および定置プロセスを検討した.

中黒蛇紋岩は,長さ150 m以上・最大幅10 mのスラブ状岩体として産する.この蛇紋岩は,小栗栖ユニットのメランジュ(泥質基質中に砂岩・玄武岩の岩塊を伴う)中の岩相境界面や片理面を切って分布し,一部では玄武岩岩塊中に注入している.小栗栖ユニットとの境界部では,交代作用により蛇紋岩がタルク岩へと変化している.蛇紋岩は,メッシュ組織・バスタイト組織を示す蛇紋石を主とし,Crスピネルや不透明鉱物を伴う.ラマン分光分析の結果,蛇紋石はリザダイトと同定された.Crスピネルの化学組成を検討した結果,Cr#(Cr/(Cr + Al)比)は0.31~0.57であった.

中黒蛇紋岩は,低温型蛇紋石であるリザダイトからなり,CrスピネルのCr#が0.31~0.57の低い値を示すことから,海洋リソスフェアを起源とする可能性が高い.一方,三波川変成岩類に見られるマントルウェッジ起源の蛇紋岩は,高温型蛇紋石であるアンチゴライトからなり,CrスピネルのCr#は0.57以上と高い値を示す4.この対比は,中黒蛇紋岩が海洋リソスフェア起源であることを強く裏付ける.さらに,中黒蛇紋岩が小栗栖ユニットのメランジュ構造を切って分布することから,蛇紋岩は小栗栖ユニットのプレート境界における付加プロセスが完了した後に定置したことが推定される.現世の沈み込み帯では,海洋プレートの折れ曲がりに伴って形成されるアウターライズ断層に沿って流体が深部まで浸透し,海洋リソスフェア上部のマントル物質が蛇紋岩化していることが,海底地形データや反射法地震探査データから明らかになっている5.よって本研究では,中黒蛇紋岩の定置プロセスとして,蛇紋岩化した海洋リソスフェアがアウターライズ断層などの弱線を通じて海洋地殻内を上昇し,プレート境界を横断して付加体へ貫入したとする新たなテクトニックモデルを提案する.

プレート境界での付加体への蛇紋岩貫入の事例は,現世のカラブリア弧沈み込み帯6やアペニン山脈北部のExternal Ligurianユニット7からも報告されているが,それらのテクトニックセッティングは低速~超低速拡大海嶺で形成された海洋プレートの沈み込みによって特徴づけられ,蛇紋岩が初生的に海洋底に露出していた点で異なる.本研究は,高速拡大海嶺で形成され,十分に発達した海洋地殻をもつイザナギプレートの沈み込み帯において,蛇紋岩が海洋地殻内を上昇し,プレート境界を横断して付加体へ貫入した可能性を示した点で新たな知見を提供する.今後,本研究で提案したモデルの物理メカニズムの解明とともに,現世の沈み込み帯においても地球物理学データの解析を通じて同様の蛇紋岩上昇・貫入構造が認識されることが期待される.

[文献:1Endo et al., 2024, Elements, 20, 77–82. 2Aoya et al., 2013, Geology, 41, 451–454. 3志村ほか, 2020, 地質雑, 126, 383–399. 4Kawahara et al., 2016, Lithos, 254–255, 53–66. 5Ranero et al., 2003, Nature, 425, 367–373. 6Polonia et al., Nat. Commun., 8, 2172. 7Vannucchi et al., 2020, Geology, 48, 1154–1158.]

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