講演情報
[T4-O-7]西南日本内帯長門構造帯に産するanthophyllite rockの岩石学的記載と形成プロセスの解明
*土田 和輝1、沢田 輝1、大和田 正明2 (1. 富山大学、2. 山口大学)
キーワード:
長門構造帯、直閃石岩、蛇紋岩メランジュ
【はじめに】日本列島に点在する蛇紋岩メランジュは,前弧マントル由来の蛇紋岩が多様な時代・成因の岩塊を取り込みながら上昇した特異な地質体であるが,それらの混入機構や上昇過程には未解明な点が多い.西南日本内帯の長門構造帯蛇紋岩メランジュには花崗岩質岩,変はんれい岩,角閃岩など多様な岩塊が含まれる(Matsumoto, 1949).本研究では,新たに確認したanthophyllite rockについて,主要構成鉱物およびchromiteなどのアクセサリー鉱物の岩石学的記載とEPMA分析を行い,その成因および長門構造帯構成岩石の定置過程を検討した.
【地質概要と岩石記載】長門構造帯は西南日本内帯に分布する幅0.1~2 km,延長約35 kmの構造帯であり,三隅,台,西市,豊ヶ岳,小月の各地域に区分される(Matsumoto, 1949).三隅,台,西市の各地域には蛇紋岩メランジュ帯が分布し,本研究対象のanthophyllite rockは台地域でブロックとして産出する.Anthophyllite rockはanthophylliteを主体とし,副成分鉱物としてenstatite,chlorite,chromiteおよびpyrrhotiteを含む.同地域にはtremolite rockおよびactinolite rockも認められ,一部のanthophylliteではリム部のtremolite化が認められた.また,地表踏査ではtrondhjemite岩脈が貫入するactinolite rockの現地性転石を確認した.Anthophyllite rockは,0.4~0.6 mm程度の細粒なanthophylliteおよびtremoliteからなる基質中に,0.8~1.5 mm程度の粗粒なenstatiteを含む斑状変晶組織を示す.Chromiteには明瞭なコア–リム構造は認められず,粒界にはpyrrhotiteが隣接する.EPMA分析の結果,chromiteはMg#が1 %未満,Al2O3含有量が1 wt%未満であり,Feに富む組成を示した.
【考察】Anthophyllite rockはchromiteを含むことから,その原岩は超苦鉄質岩であったと考えられる.また,anthophylliteとenstatiteを主体とする鉱物組合せは超苦鉄質岩の接触変成に特徴的であることから,本岩石はTrondhjemiteの貫入に伴う接触変成によって形成されたと考えられる.Anthophylliteの安定領域から,変成温度は約650 ℃と推定される(Winter, 2001).Liu et al. (2023)では,流体変成を受けたchromiteがAlに乏しくFeに富む組成を示すことを報告している.本研究のchromiteも同様の化学組成を示すことから,流体を伴う変成作用による再平衡を受けたことが示唆される.その後,後退変成あるいは流体による変質によりanthophylliteがtremoliteあるいはactinoliteへ置換され,tremolite rockおよびactinolite rockが形成されたと考えられる.台地域のtrondhjemiteからは約460 MaのジルコンU–Pb年代が報告されている(Kitano et al., 2023).本研究対象岩石にはtrondhjemiteが貫入していることから,原岩である超苦鉄質岩は少なくとも460 Ma以前に形成されたと制約される.この年代制約は,Isozaki(2019)で提案された初期古生代日本列島のオフィオライト・TTG形成モデルと整合する.以上より,本研究で対象としたanthophyllite rockは,初期古生代に形成されたオフィオライト下部の超苦鉄質岩を原岩とし,約460 Maのtrondhjemite貫入に伴う接触変成によって形成された後,後退変成あるいは流体変質によりtremolite rockおよびactinolite rockへ変化したと考えられる.その後,蛇紋岩メランジュ形成時のテクトニックな断片化によりブロックとして蛇紋岩中に取り込まれ,蛇紋岩メランジュの上昇・定置を経て現在の地表に露出したと考えられる.
引用文献
・Liu, F. et al. (2023) Lithos, 446–447, 107385.
・Isozaki, Y. (2019) Island Arc, 28, e12296.
・Kitano, I. et al. (2023) J. Mineral. Petrol. Sci., 118, 220712.
・Matsumoto, T. (1949) Jpn. J. Geol. Geogr., 21, 235–243.
・Winter, J. D. (2001) An Introduction to Igneous and Metamorphic Petrology. Prentice Hall.
【地質概要と岩石記載】長門構造帯は西南日本内帯に分布する幅0.1~2 km,延長約35 kmの構造帯であり,三隅,台,西市,豊ヶ岳,小月の各地域に区分される(Matsumoto, 1949).三隅,台,西市の各地域には蛇紋岩メランジュ帯が分布し,本研究対象のanthophyllite rockは台地域でブロックとして産出する.Anthophyllite rockはanthophylliteを主体とし,副成分鉱物としてenstatite,chlorite,chromiteおよびpyrrhotiteを含む.同地域にはtremolite rockおよびactinolite rockも認められ,一部のanthophylliteではリム部のtremolite化が認められた.また,地表踏査ではtrondhjemite岩脈が貫入するactinolite rockの現地性転石を確認した.Anthophyllite rockは,0.4~0.6 mm程度の細粒なanthophylliteおよびtremoliteからなる基質中に,0.8~1.5 mm程度の粗粒なenstatiteを含む斑状変晶組織を示す.Chromiteには明瞭なコア–リム構造は認められず,粒界にはpyrrhotiteが隣接する.EPMA分析の結果,chromiteはMg#が1 %未満,Al2O3含有量が1 wt%未満であり,Feに富む組成を示した.
【考察】Anthophyllite rockはchromiteを含むことから,その原岩は超苦鉄質岩であったと考えられる.また,anthophylliteとenstatiteを主体とする鉱物組合せは超苦鉄質岩の接触変成に特徴的であることから,本岩石はTrondhjemiteの貫入に伴う接触変成によって形成されたと考えられる.Anthophylliteの安定領域から,変成温度は約650 ℃と推定される(Winter, 2001).Liu et al. (2023)では,流体変成を受けたchromiteがAlに乏しくFeに富む組成を示すことを報告している.本研究のchromiteも同様の化学組成を示すことから,流体を伴う変成作用による再平衡を受けたことが示唆される.その後,後退変成あるいは流体による変質によりanthophylliteがtremoliteあるいはactinoliteへ置換され,tremolite rockおよびactinolite rockが形成されたと考えられる.台地域のtrondhjemiteからは約460 MaのジルコンU–Pb年代が報告されている(Kitano et al., 2023).本研究対象岩石にはtrondhjemiteが貫入していることから,原岩である超苦鉄質岩は少なくとも460 Ma以前に形成されたと制約される.この年代制約は,Isozaki(2019)で提案された初期古生代日本列島のオフィオライト・TTG形成モデルと整合する.以上より,本研究で対象としたanthophyllite rockは,初期古生代に形成されたオフィオライト下部の超苦鉄質岩を原岩とし,約460 Maのtrondhjemite貫入に伴う接触変成によって形成された後,後退変成あるいは流体変質によりtremolite rockおよびactinolite rockへ変化したと考えられる.その後,蛇紋岩メランジュ形成時のテクトニックな断片化によりブロックとして蛇紋岩中に取り込まれ,蛇紋岩メランジュの上昇・定置を経て現在の地表に露出したと考えられる.
引用文献
・Liu, F. et al. (2023) Lithos, 446–447, 107385.
・Isozaki, Y. (2019) Island Arc, 28, e12296.
・Kitano, I. et al. (2023) J. Mineral. Petrol. Sci., 118, 220712.
・Matsumoto, T. (1949) Jpn. J. Geol. Geogr., 21, 235–243.
・Winter, J. D. (2001) An Introduction to Igneous and Metamorphic Petrology. Prentice Hall.
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