講演情報
[T16-P-1]西南北海道渡島帯のジュラ紀後期~白亜紀前期付加体・薄別コンプレックスの付加プロセスと熱履歴:薄別コンプレックスの最高到達温度とフィッション・トラック年代・解析からの考察
*田中 真二1、加藤 孝幸1、檀原 徹2、岩野 英樹2,3、平田 岳史3、多田 陸4 (1. アースサイエンス株式会社、2. 株式会社京都フィッション・トラック、3. 東京大学地殻化学実験施設、4. 株式会社大林組)
キーワード:
付加体、最高到達温度、フィッション・トラック
薄別層は地表では北海道札幌市定山渓地域のごく一部に分布する.定山渓地域の薄別層は主に変形した砂岩泥岩互層からなる。これらの地層は断層で境されたユニットがパイルナップ構造をなし,付加体としての特徴を有する。したがって以下では薄別コンプレックスと記述する.近年,定山渓地域の東部に位置する京極北部地域では,地熱開発のための掘削が実施され,深部に薄別コンプレックスに対比される主に厚い砂岩の分布が確認された.
定山渓地域および京極北部地域の砂岩の5試料について,148~112Maの最若粒子のジルコンU-Pb年代が得られ (Tanaka et al., 2025),薄別コンプレックスの堆積・付加年代は,ジュラ紀後期から白亜紀前期と推定される.
Tanaka et al. (2025) は,U-Pb年代と同一粒子でのフィッション・トラック(FT)年代測定結果を報告し,トラック長解析,逆解析モデルおよび順計算モデルから熱史の考察を行った.FT年代結果は5試料で86~5Maの広い年代幅を有し,その解析結果は100Ma頃にFTがトータルリセットされ,20Ma頃まで地下深部が高温であったことを示唆する.FTをトータルリセットさせた熱源として,白亜紀前期~後期の花崗岩類を候補とし,中新世頃までの複数のマグマ活動を推定した.ただし,Tanaka et al. (2025) では,薄別コンプレックスの底付け付加による地温勾配の上昇の影響については言及していない.
薄別コンプレックスの付加過程での温度とFTへの熱影響を検討するためには,薄別コンプレックスの最高到達温度を推定し,ジルコンFTのトータルリセットする温度と比較する必要がある.ジルコンFTのトータルリセットする温度は,10万~100万年の時間スケールでは350℃以上と見積もられる (Tagami, 2012; 末岡ほか,2021など).本発表では,薄別コンプレックスの砂岩・泥岩に卓越する2次鉱物の組み合わせから最高到達温度を推定し,FTの解析結果と総合して、付加プロセスおよび熱履歴について考察する.
薄別コンプレックスの主要な岩相である砂岩・泥岩に生成する2次鉱物は,主に緑泥石・白雲母・緑簾石の鉱物組み合わせを示す.黒雲母の生成は,ホルンフェルス化によるものに限られる.薄別コンプレックスは,低圧タイプの砂泥質変成岩における変成相系列では,緑泥石帯に相当し,黒雲母帯には達していないと考えられる.低圧タイプの黒雲母のアイソグラッド付近の変成温度は,泥質ホルンフェルスに対してラマン炭質物温度計を適用した例では約340℃と推定される(Aoya et al., 2010など).この結果に従えば,薄別コンプレックスの最高到達温度は340℃以下と推定される.ジルコンFTのトータルリセットする温度を350℃以上とすると,薄別コンプレックスは底付け付加の過程ではFTのトータルリセットする温度には達していないと考えられる.これは付加後の熱史・熱履歴を考える上での重要な制約条件となる.
これらの検討結果から,京極-定山渓地域の付加モデルおよび熱モデルを提案する.特に熱モデルは地熱発電の熱源を考える上でも重要である.
【引用文献】Aoya et al., 2010, J. Metamorph. Geol., 28, 895-914. 末岡ほか,2021, RADIOISOTOPES, 70, 189-207. Tagami, 2012, Tectonophys., 538-540, 67-85. Tanaka et al., 2025, 19th International Conference on Thermochronology, Abstr., p125.
定山渓地域および京極北部地域の砂岩の5試料について,148~112Maの最若粒子のジルコンU-Pb年代が得られ (Tanaka et al., 2025),薄別コンプレックスの堆積・付加年代は,ジュラ紀後期から白亜紀前期と推定される.
Tanaka et al. (2025) は,U-Pb年代と同一粒子でのフィッション・トラック(FT)年代測定結果を報告し,トラック長解析,逆解析モデルおよび順計算モデルから熱史の考察を行った.FT年代結果は5試料で86~5Maの広い年代幅を有し,その解析結果は100Ma頃にFTがトータルリセットされ,20Ma頃まで地下深部が高温であったことを示唆する.FTをトータルリセットさせた熱源として,白亜紀前期~後期の花崗岩類を候補とし,中新世頃までの複数のマグマ活動を推定した.ただし,Tanaka et al. (2025) では,薄別コンプレックスの底付け付加による地温勾配の上昇の影響については言及していない.
薄別コンプレックスの付加過程での温度とFTへの熱影響を検討するためには,薄別コンプレックスの最高到達温度を推定し,ジルコンFTのトータルリセットする温度と比較する必要がある.ジルコンFTのトータルリセットする温度は,10万~100万年の時間スケールでは350℃以上と見積もられる (Tagami, 2012; 末岡ほか,2021など).本発表では,薄別コンプレックスの砂岩・泥岩に卓越する2次鉱物の組み合わせから最高到達温度を推定し,FTの解析結果と総合して、付加プロセスおよび熱履歴について考察する.
薄別コンプレックスの主要な岩相である砂岩・泥岩に生成する2次鉱物は,主に緑泥石・白雲母・緑簾石の鉱物組み合わせを示す.黒雲母の生成は,ホルンフェルス化によるものに限られる.薄別コンプレックスは,低圧タイプの砂泥質変成岩における変成相系列では,緑泥石帯に相当し,黒雲母帯には達していないと考えられる.低圧タイプの黒雲母のアイソグラッド付近の変成温度は,泥質ホルンフェルスに対してラマン炭質物温度計を適用した例では約340℃と推定される(Aoya et al., 2010など).この結果に従えば,薄別コンプレックスの最高到達温度は340℃以下と推定される.ジルコンFTのトータルリセットする温度を350℃以上とすると,薄別コンプレックスは底付け付加の過程ではFTのトータルリセットする温度には達していないと考えられる.これは付加後の熱史・熱履歴を考える上での重要な制約条件となる.
これらの検討結果から,京極-定山渓地域の付加モデルおよび熱モデルを提案する.特に熱モデルは地熱発電の熱源を考える上でも重要である.
【引用文献】Aoya et al., 2010, J. Metamorph. Geol., 28, 895-914. 末岡ほか,2021, RADIOISOTOPES, 70, 189-207. Tagami, 2012, Tectonophys., 538-540, 67-85. Tanaka et al., 2025, 19th International Conference on Thermochronology, Abstr., p125.
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