講演情報
[T16-P-3]南部北上帯陸中大原地域東部における上部古生界の岩相層序・年代・地質構造
*鈴木 敬介1 (1. 産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門)
キーワード:
南部北上帯、上部古生界、層序、ジルコンU–Pb年代
東北日本の南部北上帯は主に非変成陸棚古生界からなる,国内有数の地帯である.本帯では従来から生層序・層序学的検討が精力的になされ,代表的な岩相層序単位を繋ぎ合わせた“標準的層序区分”が設定されてきた[1, 2].この枠組みは近年,利用可能な記載・年代情報の蓄積とともに更新がなされ,各地の層序対比と造構史を理解するための重要な基礎を提供している[3, 4].
陸中大原地域東部は,南部北上帯西部(長坂-一関-登米地域)と中央部(世田米-日頃市地域)との間に位置する.本地域は石炭系~ペルム系の火山砕屑岩・砕屑岩類が広く分布するが,これらは北北西-南南東方向に走る白亜紀左横ずれ大断層(日詰-気仙沼断層)に関連した大小様々な規模の断層群と白亜紀火山砕屑岩・貫入岩類により随所で分断され,地層間の関係は複雑である[5].また,他地域と比べ岩相記載や化石の産出に乏しいことから,層序・年代・構造の理解については不十分な部分を残す.
本研究では,陸中大原地域東部を構成する石炭系~ペルム系の火山砕屑岩・砕屑岩類について,マッピング,岩相層序の記載,およびジルコンU–Pb年代測定を実施し,標準層序との関係を予察的に検討したので,報告する.
陸中大原地域東部の石炭系~ペルム系は北北西–南南東あるいは北北東-南南西走向の層理面を有し,東または西に30~75°程度の傾斜を示す,複向斜構造で特徴付けられる.この複向斜構造は,本地域中央部を占める白亜紀花崗岩類(人首-千厩深成岩体)の西隣域(長坂地域),さらに日詰-気仙沼断層を跨いだ東側の領域(大股-中平地域および世田米-日頃市地域)でも認められ,上部古生界の堆積以後には南部北上帯全域で短縮変形が進行した可能性が高い.なお,石炭系は80°~垂直の傾斜を有する部分が認められ,ペルム系と比べ高角な姿勢で特徴付けられる.
本研究ではこれらの地層について,陸中大原地域の北隣に位置する人首地域および東隣の中平地域における地層名を踏まえ,暫定的に次のように区分した:(1)下部石炭系米里層,(2)中~上部石炭系芝層,(3)下部ペルム系戸中層・中平層,および(4)中~上部ペルム系大森山層・落合層.
米里層は玄武岩~流紋岩質の凝灰岩・火山礫凝灰岩と砂岩,泥岩,石灰岩などの少量の堆積岩類からなり,その上位には結晶質石灰岩を主体とした芝層が露出する.これらの石炭系とペルム系との境界は露出不良により観察が困難であるが,芝層の上位には石灰岩礫を豊富に含む火山礫凝灰岩(戸中層)が露出する箇所が僅かに認められる.戸中層の上位には,大森山層の砂岩,泥岩,岩礫泥岩,玄武岩~流紋岩礫に富む礫岩が認められる.大森山層と落合層との関係は,白亜紀火山砕屑岩類(姥石層)による被覆や同時期の花崗岩体により観察が困難であるが,岩相,礫種,および砂岩組成に類似する部分があることから,本来は側方漸移の関係にある可能性が高い.落合層は基底の砂礫岩卓越部から上位に向かって花崗岩礫に富む礫岩や岩礫泥岩,泥岩優勢砂岩泥岩互層へと岩相変化するが,向斜の右翼側では礫岩に乏しく,石灰岩,生砕物に富む石灰質砂岩,生痕化石を含む泥岩等が見られ,大森山層よりも側方変化に富む.なお,中平層は落合層右翼の下位に露出し,中性~珪長質火山岩片を豊富に含む石質砂岩,泥岩,石灰岩等からなる.
本研究では,戸中層,大森山層,および落合層の凝灰岩・砂岩について計7試料のジルコンU–Pb年代測定を行った.戸中層の凝灰岩からは291 Maの加重平均年代が得られた.大森山層および落合層の砂岩は,最も若い年代群の加重平均年代として,286 Maおよび274–264 Maを示す.
以上の岩相層序・年代から,陸中大原地域東部のペルム系砕屑岩は,世田米地域における坂本沢層・叶倉層・登米層と対比可能と考えられる.特に,戸中層の基底部における石灰岩礫は下位の芝層に由来すると考えられ,上部石炭系と下部ペルム系との境界を不整合とみなす標準層序の伝統的解釈とは調和的である.また,大森山層・落合層の礫岩に玄武岩~流紋岩礫が認められることも,不整合形成後に火山岩・火山砕屑岩類に富む下部石炭系基盤の隆起・削剥が進行した可能性と矛盾しない.なお,米里層・芝層については年代制約に乏しいものの,その岩相は日詰-気仙沼断層東側の大股地域に分布する加労沢層・仙婆巌層と類似する.これらの地層は,今後,南部北上帯西部-中央部間の狭長域に露出する複雑な岩相の地層群と標準層序との関係を理解する上で,重要な手がかりとなる.
引用文献: [1] 湊ほか (1953). 地質学雑誌, 59, 385–399. [2] 湊ほか (1954). 地質学雑誌, 60, 378–387. [3] 川村ほか (1996). 日本地質学会第103年大会巡検案内書, 59–97. [4] Kawamura and Uchino (2024). Bulletin of the Geological Survey of Japan, 75, 61–72. [5] 永広 (1977). 東北大地質古生物研邦報, 77, 1–37.
陸中大原地域東部は,南部北上帯西部(長坂-一関-登米地域)と中央部(世田米-日頃市地域)との間に位置する.本地域は石炭系~ペルム系の火山砕屑岩・砕屑岩類が広く分布するが,これらは北北西-南南東方向に走る白亜紀左横ずれ大断層(日詰-気仙沼断層)に関連した大小様々な規模の断層群と白亜紀火山砕屑岩・貫入岩類により随所で分断され,地層間の関係は複雑である[5].また,他地域と比べ岩相記載や化石の産出に乏しいことから,層序・年代・構造の理解については不十分な部分を残す.
本研究では,陸中大原地域東部を構成する石炭系~ペルム系の火山砕屑岩・砕屑岩類について,マッピング,岩相層序の記載,およびジルコンU–Pb年代測定を実施し,標準層序との関係を予察的に検討したので,報告する.
陸中大原地域東部の石炭系~ペルム系は北北西–南南東あるいは北北東-南南西走向の層理面を有し,東または西に30~75°程度の傾斜を示す,複向斜構造で特徴付けられる.この複向斜構造は,本地域中央部を占める白亜紀花崗岩類(人首-千厩深成岩体)の西隣域(長坂地域),さらに日詰-気仙沼断層を跨いだ東側の領域(大股-中平地域および世田米-日頃市地域)でも認められ,上部古生界の堆積以後には南部北上帯全域で短縮変形が進行した可能性が高い.なお,石炭系は80°~垂直の傾斜を有する部分が認められ,ペルム系と比べ高角な姿勢で特徴付けられる.
本研究ではこれらの地層について,陸中大原地域の北隣に位置する人首地域および東隣の中平地域における地層名を踏まえ,暫定的に次のように区分した:(1)下部石炭系米里層,(2)中~上部石炭系芝層,(3)下部ペルム系戸中層・中平層,および(4)中~上部ペルム系大森山層・落合層.
米里層は玄武岩~流紋岩質の凝灰岩・火山礫凝灰岩と砂岩,泥岩,石灰岩などの少量の堆積岩類からなり,その上位には結晶質石灰岩を主体とした芝層が露出する.これらの石炭系とペルム系との境界は露出不良により観察が困難であるが,芝層の上位には石灰岩礫を豊富に含む火山礫凝灰岩(戸中層)が露出する箇所が僅かに認められる.戸中層の上位には,大森山層の砂岩,泥岩,岩礫泥岩,玄武岩~流紋岩礫に富む礫岩が認められる.大森山層と落合層との関係は,白亜紀火山砕屑岩類(姥石層)による被覆や同時期の花崗岩体により観察が困難であるが,岩相,礫種,および砂岩組成に類似する部分があることから,本来は側方漸移の関係にある可能性が高い.落合層は基底の砂礫岩卓越部から上位に向かって花崗岩礫に富む礫岩や岩礫泥岩,泥岩優勢砂岩泥岩互層へと岩相変化するが,向斜の右翼側では礫岩に乏しく,石灰岩,生砕物に富む石灰質砂岩,生痕化石を含む泥岩等が見られ,大森山層よりも側方変化に富む.なお,中平層は落合層右翼の下位に露出し,中性~珪長質火山岩片を豊富に含む石質砂岩,泥岩,石灰岩等からなる.
本研究では,戸中層,大森山層,および落合層の凝灰岩・砂岩について計7試料のジルコンU–Pb年代測定を行った.戸中層の凝灰岩からは291 Maの加重平均年代が得られた.大森山層および落合層の砂岩は,最も若い年代群の加重平均年代として,286 Maおよび274–264 Maを示す.
以上の岩相層序・年代から,陸中大原地域東部のペルム系砕屑岩は,世田米地域における坂本沢層・叶倉層・登米層と対比可能と考えられる.特に,戸中層の基底部における石灰岩礫は下位の芝層に由来すると考えられ,上部石炭系と下部ペルム系との境界を不整合とみなす標準層序の伝統的解釈とは調和的である.また,大森山層・落合層の礫岩に玄武岩~流紋岩礫が認められることも,不整合形成後に火山岩・火山砕屑岩類に富む下部石炭系基盤の隆起・削剥が進行した可能性と矛盾しない.なお,米里層・芝層については年代制約に乏しいものの,その岩相は日詰-気仙沼断層東側の大股地域に分布する加労沢層・仙婆巌層と類似する.これらの地層は,今後,南部北上帯西部-中央部間の狭長域に露出する複雑な岩相の地層群と標準層序との関係を理解する上で,重要な手がかりとなる.
引用文献: [1] 湊ほか (1953). 地質学雑誌, 59, 385–399. [2] 湊ほか (1954). 地質学雑誌, 60, 378–387. [3] 川村ほか (1996). 日本地質学会第103年大会巡検案内書, 59–97. [4] Kawamura and Uchino (2024). Bulletin of the Geological Survey of Japan, 75, 61–72. [5] 永広 (1977). 東北大地質古生物研邦報, 77, 1–37.
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