講演情報
[T16-P-10]小規模貫入岩体および周辺接触変成域における岩石学・岩石物性・ドローンLiDAR・ミューオン観測による多視点解析:長野県上田市半過岩鼻の例
*森 宏1、岸 紘未1,2、國谷 七海1、高木 大成1、宿輪 隆太3、川出 健太郎1、白岩 宙志1、小野 匡平1、安井 悠人1、村上 大知1,4、延原 香穂1、常盤 哲也1、山岡 健5、二村 竜祐1 (1. 信州大学、2. 富山県庁、3. 五島鉱業株式会社、4. 日本工営株式会社、5. 産業技術総合研究所,地質調査総合センター)
キーワード:
接触変成作用、炭質物ラマン温度計、岩石物性、ドローンLiDAR、ミューオン観測、半過岩鼻
貫入岩体はマグマの上昇・冷却・固結過程を記録しており,火成活動史や地殻の熱構造を理解する上で重要な研究対象である.また,貫入岩体周辺の岩石は接触変成作用を受け,マグマから周囲への熱輸送過程や,熱水活動を介した流体・物質移動過程を記録する.このような接触変成域では,岩相,鉱物組合せ,岩石物性などが短距離で大きく変化するため,地質学のみならず資源分野においても重要である.一方で,貫入境界付近は変質や露出条件の制約を受けやすく,野外地質調査のみで貫入岩体と周辺接触変成域の空間構造を把握することは容易ではない.そのため,岩石学的解析・岩石物性評価に加えて,遠隔アプローチが可能な地球物理学的観測を組み合わせ,各手法の有効性や限界を検討することが重要である.そこで本研究では,長野県上田市半過岩鼻に分布する小規模貫入岩体およびその周辺の接触変成岩を対象として,岩石学的解析と岩石物性評価に加えて,ドローンLiDAR測量とミューオン観測を併用したマルチアプローチを実施した.
半過岩鼻は北部フォッサマグナの一画に位置し,中期中新世の別所層に後期中新世の石英斑岩が貫入する地域である(e.g., 加藤,1980).貫入岩体は高さ約120 m,幅約300 mの急崖として露出し,周辺には泥岩を主体とする堆積岩が分布する.本研究では,貫入岩1試料および泥質岩9試料を採取し,偏光顕微鏡観察,炭質物ラマン温度計による変成温度推定(Kaneki & Kouketsu, 2022; Kaneki et al., 2024),密度測定,自然残留磁化強度,および磁化率測定を行った.さらに,急崖表面を主な対象としたドローンLiDAR測量による地形解析,および,地上からのミューオン観測による密度構造推定も試行した.
薄片観察の結果,貫入岩は石英,斜長石,角閃石,単斜輝石を含み,周辺の泥岩は主に石英,斜長石,緑泥石,炭質物から構成される.貫入境界近傍の泥岩では,黒雲母,ピナイト化した菫青石,赤鉄鉱などが認められ,接触変成作用および変質作用の影響が示唆される.炭質物ラマン温度計による温度推定では,貫入境界近傍で高温を示し,境界から離れるにつれて温度が低下する傾向が確認された.また,密度,自然残留磁化強度,磁化率も貫入境界近傍で高い値を示し,変成温度の上昇と岩石物性変化との間に対応関係が認められた.これらの結果は,貫入に伴う熱的影響が泥質岩の鉱物組合せだけでなく,密度や磁性といった岩石物性にも反映されていることを示す.
ドローンLiDAR測量では,急崖表面の高精度地形データを取得し,急崖に発達する凹凸地形や線状構造を抽出した.3次元点群データからは,露頭面や節理面などの幾何情報を取得でき,急崖表面に発達する構造の把握に有効であることが示された.ミューオン観測では,急崖を透過するミューオン到来数の空間分布を取得し,地形形状や内部密度構造を反映した可能性のある不均質を検出した.
本研究は,小規模貫入岩体と周辺接触変成域を対象に,岩石学的手法,岩石物性評価,および地球物理学的観測を同一フィールドで試行した事例である.現段階では,ドローンLiDAR測量およびミューオン観測の結果を温度・密度・磁性構造と直接対応づけるには至っていないが,本研究で得られた多面的なデータは,今後,遠隔的・非破壊的観測手法の適用可能性や限界,および地質学的情報との対応関係を検討するための基礎情報となることが期待される.
【引用文献】Kaneki & Kouketsu. 2022. Island Arc, 31, e12467; Kaneki et al. 2024.Progress in Earth and Planetary Science, 11, 35; 加藤碵一.1980.坂城地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅).地質調査所.
半過岩鼻は北部フォッサマグナの一画に位置し,中期中新世の別所層に後期中新世の石英斑岩が貫入する地域である(e.g., 加藤,1980).貫入岩体は高さ約120 m,幅約300 mの急崖として露出し,周辺には泥岩を主体とする堆積岩が分布する.本研究では,貫入岩1試料および泥質岩9試料を採取し,偏光顕微鏡観察,炭質物ラマン温度計による変成温度推定(Kaneki & Kouketsu, 2022; Kaneki et al., 2024),密度測定,自然残留磁化強度,および磁化率測定を行った.さらに,急崖表面を主な対象としたドローンLiDAR測量による地形解析,および,地上からのミューオン観測による密度構造推定も試行した.
薄片観察の結果,貫入岩は石英,斜長石,角閃石,単斜輝石を含み,周辺の泥岩は主に石英,斜長石,緑泥石,炭質物から構成される.貫入境界近傍の泥岩では,黒雲母,ピナイト化した菫青石,赤鉄鉱などが認められ,接触変成作用および変質作用の影響が示唆される.炭質物ラマン温度計による温度推定では,貫入境界近傍で高温を示し,境界から離れるにつれて温度が低下する傾向が確認された.また,密度,自然残留磁化強度,磁化率も貫入境界近傍で高い値を示し,変成温度の上昇と岩石物性変化との間に対応関係が認められた.これらの結果は,貫入に伴う熱的影響が泥質岩の鉱物組合せだけでなく,密度や磁性といった岩石物性にも反映されていることを示す.
ドローンLiDAR測量では,急崖表面の高精度地形データを取得し,急崖に発達する凹凸地形や線状構造を抽出した.3次元点群データからは,露頭面や節理面などの幾何情報を取得でき,急崖表面に発達する構造の把握に有効であることが示された.ミューオン観測では,急崖を透過するミューオン到来数の空間分布を取得し,地形形状や内部密度構造を反映した可能性のある不均質を検出した.
本研究は,小規模貫入岩体と周辺接触変成域を対象に,岩石学的手法,岩石物性評価,および地球物理学的観測を同一フィールドで試行した事例である.現段階では,ドローンLiDAR測量およびミューオン観測の結果を温度・密度・磁性構造と直接対応づけるには至っていないが,本研究で得られた多面的なデータは,今後,遠隔的・非破壊的観測手法の適用可能性や限界,および地質学的情報との対応関係を検討するための基礎情報となることが期待される.
【引用文献】Kaneki & Kouketsu. 2022. Island Arc, 31, e12467; Kaneki et al. 2024.Progress in Earth and Planetary Science, 11, 35; 加藤碵一.1980.坂城地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅).地質調査所.
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