講演情報
[T16-P-20]大分県姫島の唐戸層に挟在するAso-4テフラ層の上下判定
*納谷 友規1、平林 恵里1 (1. 産総研・地質調査総合センター)
キーワード:
第四紀、後期更新世、未固結堆積物、堆積構造
姫島は瀬戸内海西部の周防灘と伊予灘の境界付近に位置する.姫島北岸のみつけ海岸の干潟には波食棚が発達し,この波食棚は更新統唐戸層から構成される.みつけ海岸において南東側の陸に近い部分に分布する唐戸層は北東-南西方向の走向を示し,地層はほぼ垂直に傾くが,斜交層理などの堆積構造が観察できるため北西側が上位と判断できる.一方,北西側の海寄りに分布する唐戸層は,地層の屈曲が観察されるほか,細かくブロック状に分断されており,複雑な地質構造を有する.
Aso-4テフラ層に対比されるテフラ層(以下,T3テフラ層と記す)は,波食棚の北西側の海寄りの地点を構成する長辺約50m短辺約20mの断片化した地層ブロックの中に挟在される.このブロックの唐戸層は,南東側と同様に北東–南西方向の走向を示し,層理面は30°南東側に傾く.この露頭が発見された当初は,見かけ上の上位が地層の上位と考えられていた(納谷ほか,2024).その後の詳細な調査により,この地層ブロックには淡水成層の間に2層の海成層が挟まり,T3テフラ層はそのうちの1層の海成層に挟在されることが明らかになった(納谷ほか,2025).
海成層におけるAso-4テフラ層の層位を把握することは,これら海成層の層位を決定する上で極めて重要である.堆積環境の推移など間接的な根拠に基づき地層が逆転している可能性が推定されたが(納谷ほか,2025),斜交層理や級化構造など判断基準となる明瞭な堆積構造が観察できなかったため,現場では地層の上下を判定できる直接的な証拠は得られていなかった.本発表では,様々な方法でT3テフラ層を構成する細粒火山灰層の葉理の観察を行い,地層の上下を判定することができたので,主にその手法と観察結果について報告する.
T3テフラ層は,岩相の特徴から3つのユニットに区分される.このうち,真ん中のユニットは,層厚約15cmでピンク色を呈した極細粒砂〜シルトサイズの火山灰層であり,露頭では弱く平行葉理が発達する.このユニットから,層理面に沿って7×7×20cm程度を切り出してブロックサンプルを採取し,室内で次の順番で観察した.
1) ブロックサンプルの断面をナイフで丁寧に削って堆積構造を観察した.2) ブロックサンプルのX線CT像を観察した.3)樹脂で包埋したブロックサンプルから切片を切り出し研磨した断面を観察した.4) 前述の切片から薄片を作成し顕微鏡で観察した.
ナイフで削った断面を観察した結果,層厚数mmの葉理が観察できたが,葉理は不明瞭で地層の上下関係は判断できなかった.
X線CT像からは葉理が斜交するようにも見える構造が観察されたが,肉眼で観察できる数mmの葉理を解像しておらず,やや不明瞭であった.巣穴が多く認められたが現生の生物によるものであり,上下関係の判断には使えなかった.葉理が斜交する構造からは,上下関係は逆転している可能性が示唆された.
研磨された切片の断面からは,葉理の堆積構造を明瞭に観察することができ,1〜3mmの明暗の葉理からなることが分かった.葉理の中には径2〜5mmの軽石が含まれ,軽石が葉理を切っているのと,軽石と接した葉理を変形させる荷重痕が認められた.荷重痕は薄片でも観察することができた.これらの荷重痕からは,地層の上下は逆転していると判断される.
以上の結果から,今回観察した地層ブロックは見かけ上30°傾斜しているが,上下が逆転しているため実際は150°傾いており著しく変形した地層であることが分かった.第四紀の後期更新世の地層で上下判定が必要になることは極めて稀であるが,露頭観察で上下判定が困難場合には,今回行った手法によって地層の微細構造を丹念に観察することが有効であることが示された.
文献:納谷ほか(2024)日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T15-O-21,納谷ほか(2025)JpGU2025講演要旨,HQR05-14.
Aso-4テフラ層に対比されるテフラ層(以下,T3テフラ層と記す)は,波食棚の北西側の海寄りの地点を構成する長辺約50m短辺約20mの断片化した地層ブロックの中に挟在される.このブロックの唐戸層は,南東側と同様に北東–南西方向の走向を示し,層理面は30°南東側に傾く.この露頭が発見された当初は,見かけ上の上位が地層の上位と考えられていた(納谷ほか,2024).その後の詳細な調査により,この地層ブロックには淡水成層の間に2層の海成層が挟まり,T3テフラ層はそのうちの1層の海成層に挟在されることが明らかになった(納谷ほか,2025).
海成層におけるAso-4テフラ層の層位を把握することは,これら海成層の層位を決定する上で極めて重要である.堆積環境の推移など間接的な根拠に基づき地層が逆転している可能性が推定されたが(納谷ほか,2025),斜交層理や級化構造など判断基準となる明瞭な堆積構造が観察できなかったため,現場では地層の上下を判定できる直接的な証拠は得られていなかった.本発表では,様々な方法でT3テフラ層を構成する細粒火山灰層の葉理の観察を行い,地層の上下を判定することができたので,主にその手法と観察結果について報告する.
T3テフラ層は,岩相の特徴から3つのユニットに区分される.このうち,真ん中のユニットは,層厚約15cmでピンク色を呈した極細粒砂〜シルトサイズの火山灰層であり,露頭では弱く平行葉理が発達する.このユニットから,層理面に沿って7×7×20cm程度を切り出してブロックサンプルを採取し,室内で次の順番で観察した.
1) ブロックサンプルの断面をナイフで丁寧に削って堆積構造を観察した.2) ブロックサンプルのX線CT像を観察した.3)樹脂で包埋したブロックサンプルから切片を切り出し研磨した断面を観察した.4) 前述の切片から薄片を作成し顕微鏡で観察した.
ナイフで削った断面を観察した結果,層厚数mmの葉理が観察できたが,葉理は不明瞭で地層の上下関係は判断できなかった.
X線CT像からは葉理が斜交するようにも見える構造が観察されたが,肉眼で観察できる数mmの葉理を解像しておらず,やや不明瞭であった.巣穴が多く認められたが現生の生物によるものであり,上下関係の判断には使えなかった.葉理が斜交する構造からは,上下関係は逆転している可能性が示唆された.
研磨された切片の断面からは,葉理の堆積構造を明瞭に観察することができ,1〜3mmの明暗の葉理からなることが分かった.葉理の中には径2〜5mmの軽石が含まれ,軽石が葉理を切っているのと,軽石と接した葉理を変形させる荷重痕が認められた.荷重痕は薄片でも観察することができた.これらの荷重痕からは,地層の上下は逆転していると判断される.
以上の結果から,今回観察した地層ブロックは見かけ上30°傾斜しているが,上下が逆転しているため実際は150°傾いており著しく変形した地層であることが分かった.第四紀の後期更新世の地層で上下判定が必要になることは極めて稀であるが,露頭観察で上下判定が困難場合には,今回行った手法によって地層の微細構造を丹念に観察することが有効であることが示された.
文献:納谷ほか(2024)日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T15-O-21,納谷ほか(2025)JpGU2025講演要旨,HQR05-14.
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