講演情報

[T16-P-23]志摩半島沖におけるメタンハイドレート貯留層コアの層序解析―テフラ対比と微化石層序に基づく年代枠組みの構築―

*今井 利矩1、タン ティン アオン1、髙嶋 礼詩2、西 弘嗣3、佐藤 時幸4、田村 糸子5 (1. 独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構、2. 国立大学法人東北⼤学学術資源研究公開センター、3. 福井県立大学恐竜学研究所、4. 国立大学法人秋田大学、5. 公益社団法人八王子観光コンベンション協会)
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キーワード:

石灰質ナンノ化石、火山ガラス、テフラ、年代層序

 志摩海脚は、熊野海盆・遠州トラフ周縁の前弧域に位置し、堆積体分布や深部構造の発達を通じて砕屑物供給経路や堆積中心の遷移を規定してきた可能性が指摘されている(間々田ほか, 2024;高野, 2009)。一方、熊野海盆や第二渥美海丘周辺では、坑井コア研究の蓄積により微化石層序とテフラ層序を統合した層序対比の有効性が示されているが(Matsuzaki et al., 2014;Imai et al., 2024)、志摩海脚については反射法地震探査等に基づく構造解釈が先行しており、コアに裏付けられた地質年代枠組みの整備は必ずしも十分とは言い難い。また南海トラフ域では、タービダイトや斜面崩壊に伴う侵食・再堆積が時間欠損や混合をもたらし、単一指標に依存した年代決定の不確実性が指摘されてきた(池原, 1999;芦・中西, 2022)。

メタンハイドレート(以下、MH)の研究開発では令和2年度以降志摩海脚を含む志摩半島沖海域にて調査活動に取り組んでおり、令和6年度にはSM1-CW1およびSM2-CW1の2坑井が掘削された。これら坑井はMH層およびその極近傍のシール区間に限定されるもののコア試料を採取している。2坑井の試料のみの分析では層序の連続性を前提とした単純な深度—年代モデルの適用は困難である。しかしながらコア試料に挟存するテフラは少数ながら火山ガラスの主成分・微量元素組成により広域鍵層として対比可能であった。そこで、石灰質ナンノ化石および浮遊性有孔虫化石の鑑定、ならびに挟在する火山灰層の対比を実施し、部分コア条件下における多角的制約からの年代層序構築を試みた。

石灰質ナンノ化石の鑑定の結果、SM1-CW1およびSM2-CW1の両坑井は同様の群集組成を示し、地質年代決定に有効な鍵種の産出状況も一致した。調査試料には1.71 Maおよび1.76 Maに出現するGephyrocapsa oceanicaおよびG. caribbeanicaが認められず、一方で1.71 Maに絶滅するCalcidiscus macintyreiが全層準にわたり産出することから、いずれの試料も1.76 Maより古いと判断される。また、2.75 Maに絶滅するReticulofenestra amplaは産出せず、2.09 Maに多産下限をもつGephyrocapsa spp. (small)が全試料で多産することから、調査試料は2.09 Maより新しいと推定される。以上より、本研究の試料は2.09 Maから1.76 Maの間に対比される。また、浮遊性有孔虫化石については、年代指標種であるGloborotalia tosaensisがSM1-CW1坑井の最下部で確認され、この結果は石灰質ナンノ化石による年代推定と矛盾しない。

火山灰試料については、SM2-CW1坑井最下部の4試料に含まれる火山ガラスの主成分・微量元素組成を分析した。その結果、上総層群のKd44テフラおよび熊野海盆IODP Exp. 315 Site C0001に挟在する特定の火山灰と同一である可能性が高いことが示された。Site C0001の当該火山灰は酸素同位体ステージ65〜68(1.84–1.80 Ma)の区間に位置付けられており(Matsuzaki et al., 2014)、微化石層序の結果とも整合的である。これらの結果を統合すると、コア試料の地質年代は1.84–1.76 Maに相当すると結論づけられ、陸域における掛川層群相当に対比される。

以上より、志摩海脚におけるMH濃集層という部分的なコア試料であっても、1.84–1.76 Maに相当する地質年代を特定することができた。また、上総層群のKd44テフラの給源は秋田・岩手県境付近の仙岩地熱地帯と推定されており(鈴木・中山,2007)、その年代は古地磁気層序との関係から1.968–1.781 Maとされている(Suzuki et al., 2020)。本研究の結果は、Kd44テフラの年代制約をさらに精密化する可能性を示すものでもある。

<引用文献>
芦・中西(2022).地質学会第129年学術大会講演要旨.
池原(1999).堆積学研究,49,p. 13–21
Imai et al. (2024) .AGU Fall Meeting 2024, abstract.
間々田 ほか(2024).地質学会第131年学術大会講演要旨.
Matsuzaki et al.(2014). Newsl. Stratigra., Vol. 47, Num. 1, 2014, p. 107-130
鈴木・中山.(2007). 火山,52,p. 23‒38
Suzuki et al.(2020). J. Quaternary Sci., 35, p. 316 - 333.
高野 ほか(2009). 地学雑.118(5),p, 776 - 792.

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