講演情報

[T12-O-3](招待講演)非晶質炭酸塩を経由する無機合成実験によるドロマイト問題への新たなアプローチ

*佐久間 杏樹1、奥村 大河2、鍵 裕之1、澁谷 心1、板井 啓明1、古荘 皓基1 (1. 東京大学、2. 早稲田大学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【ハイライト講演】ドロマイトは地質時代の炭酸塩岩に普通に含まれている一方で,現世環境では過飽和であってもほとんど形成されず,また実験室で合成することすら困難である.これは「ドロマイト問題」と呼ばれており,研究者を長年悩ませてきた.本講演では,この問題に関する最近の研究動向が紹介され,また粘土鉱物を介した非晶質相形成が問題解決の鍵になる可能性が示される.  ※ハイライト講演とは...

キーワード:

ドロマイト問題、非晶質炭酸塩、プロトドロマイト、無機合成実験


 ドロマイトは常温常圧で安定な鉱物であり、方解石やあられ石と共に、石灰岩を構成する代表的な炭酸塩鉱物である。しかし、現在の海水組成はドロマイトに対して理論上過飽和であるにもかかわらず、現世でのドロマイトの沈殿は非常にまれである。さらに、常温常圧下での合成実験も長年試みられてきたものの、未だに完全なドロマイトの沈殿には成功しておらず、その沈殿条件は不明である。一方で、古い時代に形成した石灰岩にはドロマイトを多く含んだものが報告されており、この矛盾は「ドロマイト問題」として現在に至るまで炭酸塩堆積学における重要な課題となっている。ドロマイトの形成条件が不明であったことから、続成作用の一つであるドロマイト化作用により二次的に石灰岩中のドロマイトは形成されたとかつては考えられてきた(Warren, 2000)。その後、微生物活動により初生的なドロマイトの沈殿が起きることが示され、微生物を用いた合成実験や現世塩湖における微生物群集の解析により形成過程の検証が行われている(Vasconcelos et al., 1995)。近年では、ドロマイトの沈殿を阻害する要因の一つであるマグネシウムイオンの水和構造を壊す効果を持つ触媒の添加によって、不完全なドロマイトの無機的な沈殿に成功した例も報告されている (例: Liu et al., 2019)。また、溶解-再沈殿サイクルや非晶質前駆体物質の経由など、沈殿経路によってもドロマイトの形成が促進されることも指摘されている(Kim et al., 2023)。本発表ではドロマイト問題に対する最新の研究動向を解説するとともに、発表者が進めている非晶質炭酸塩を経由した合成実験の結果について報告する。発表者の実験では、イライト・カオリナイト・石英を添加した系において、非晶質前駆体を経由する無機合成を行い、これらの鉱物粒子が結晶化過程に及ぼす影響を検証した。非晶質物質を経由したプロトドロマイトの合成実験において、溶液の化学組成と沈殿物の鉱物組成・観察を同時に調べ、両者の関係を初めて化学的・鉱物学的観点から体系的に議論した。カオリナイト・石英を添加した条件ではイライトを添加した条件に対して非晶質物質の結晶化にかかる時間が顕著に長い傾向が見られた。このことは、層間に電荷を有するイライトが非晶質炭酸塩の結晶化を促進する効果を持つことを示唆する。一方で、先行研究では電荷をもつ鉱物表面がマグネシウムの脱水を促して取り込みを促進すると考えられていたが、本研究の結果では非晶質炭酸塩中のマグネシウム含有量はどのパターンでもほぼ同一であり、触媒の存在による明確な影響は見られなかった。以上の結果から、鉱物粒子は触媒として炭酸塩の沈殿反応に様々な影響を与えうることが明らかになった。従来の炭酸塩無機合成実験ではこれらの影響は十分に考慮されてこなかったが、実際の表層環境では鉱物粒子は普遍的に存在するため、今後様々な堆積環境を想定した条件下でその役割を検証していく必要があると考えられる。
引用文献
Warren. (2000). Earth Sci Rev, 52, 1–81.
Vasconcelos et al. (1995). Nature, 377, 220–222.
Liu et al. (2019). Geochim Cosmochim Acta, 247, 83–95.
Kim et al. (2023). Science (1979), 382, 915–920.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン