講演情報
[T12-O-4]初期炭酸塩続成作用において留意すべき観点
*松田 博貴1 (1. (公財)深田地質研究所)
キーワード:
炭酸塩続成作用、続成環境、続成史、海水準変動、琉球層群、大東層
炭酸塩堆積物は,多様な続成作用により初生の鉱物組成や化学組成,同位体比などの変化,また堆積組織の破壊と新たな組織の形成が起こり,岩石物性や孔隙率・浸透率分布に大きな影響を与える.これら新たな情報の付加は,続成環境や続成史の解明に有効である一方,炭化水素資源や水資源の開発ではこれら続成過程の総合的理解が重要である.
【初期続成作用のタイムスケール】
近表面下では,様々な性質の間隙水の流動や賦存状態,また二酸化炭素の間隙水への溶存や脱ガスによって,不安定鉱物の溶解や安定鉱物相への転化,あるいは膠結作用が進行し,初生鉱物組成や堆積組織は大きく変化する.
琉球列島の島々では,ごく浅海域で堆積した炭酸塩堆積物は,陸上に露出してわずか数千年程度で,淡水性続成作用により鉱物組成と炭素・酸素同位体比に変化が見られ,堆積後,10万年程度でほぼ低Mg方解石のみになる.炭素・酸素同位体比も土壌有機物と淡水の影響を受けた値へと変化する(松田・熊井,1999).一方,島棚域で堆積した石灰藻球石灰岩や生砕性石灰岩では,堆積後,10万年以上経ても高Mg方解石やアラレ石が残存している場合がある.これは,水深が深い島棚堆積物は地表露出までにより多くの時間を要しているからである.このことは,初期続成作用の進行の度合いは,堆積後の時間よりも堆積環境と異なる続成環境に移行してからの時間が重要であることを示している.
【海水準変動と構造運動の影響】
上記のタイムスケールの検討では,隆起域の高海水準期である最終間氷期以降の堆積物を用いており,これらは堆積後,時間間隙を置かずに地表露出したものである.一方,海進期の堆積物は,堆積直後に海底で軽微な海水性続成作用を受けた以降は海水準の上昇と堆積物の累重により,孔隙は流動が不活発な海水に満たされたままである.そのため続成作用は進行せず,初生鉱物組成や堆積組織に大きな改変は認められない.これに続く低海水準期には淡水が堆積体内に流入するが,海水準低下が小さい場合には,淡水飽和帯は海進期堆積体に達せず,孔隙は依然として不活発な海水で充填されたままとなる.結果として初生鉱物組成や堆積組織は保存され,堆積物の固結も進まない.堆積体内での続成環境のジオメトリは,海水凖変動や隆起・沈降運動等に規制されるため,これらのセッティングの把握が重要である.
【初期続成作用とドロマイト化作用の時期の関係】
沖縄県南大東島の中新統〜鮮新統大東層は,堆積年代が異なる3つの堆積ユニットからなり,ドロマイト(苦灰岩)は島東部を中心に,堆積ユニット境界を横切る上下2つのドロマイト岩体(上部・下部ドロマイト)として分布する(島津ほか,2018).この石灰岩とドロマイトの分布や岩石組織は,種々の続成作用の起きた時期や位置に規制されている.
ドロマイト卓越部の上部・下部ドロマイトでは,岩石組織に大きな違いが認められる.堆積ユニットI・IIIいずれの上部ドロマイトも,不安定炭酸塩鉱物からなる生物遺骸粒子はドロマイトに交代されている.これに対し,堆積ユニットIの下部ドロマイトでは,生物遺骸粒子は低Mg方解石からなり,ドロマイトはセメントとして存在する.この違いは,上部ドロマイトのドロマイト化年代は堆積年代とほとんど差がなく,初生堆積物は淡水性続成作用を受けることなくドロマイト化したのに対し,下部ドロマイトのドロマイト化年代は堆積ユニットI堆積後,2Ma程度経過した時期であるため,初生堆積物の大部分は淡水性続成作用により低Mg方解石へと安定化した後に,ドロマイトはセメントとして形成されたことによる.このことは,ドロマイト化作用が起こるまでの続成履歴が岩石組織に大きな影響を与えていることを示唆する.
【空間的位置】
大東層では,同一堆積ユニット内のドロマイトでも島内の位置で岩石組織に違いが認められる.東側縁辺域では,活発な海水循環により海水ドロマイト化作用と過ドロマイト化作用が進行し,緻密な岩石が発達する.それに対し島中央部では土壌の発達により溶解作用が卓越し,その結果,サンゴ溶脱孔隙を中心とした高孔隙率の岩石中に自形ドロマイト結晶と結晶間孔隙がよく保存された組織となっている.この組織は,堆積ユニットIの下部ドロマイトも堆積ユニットIIIの上部ドロマイトもほぼ同じであることから,ドロマイト化後,5Ma程度の期間を経ているにも関わらず,島中央部では大きな組織改変が起きていないことを示している.
松田・熊井,1999,熊本大学理学部紀要,16,21-32.
松田・大塚,2021,日本地質学会第128年学術大会講演要旨,https://doi.org/10.14863/geosocabst.2021.0_109
島津ほか,2018,石油技術協会誌,83,81-93.
【初期続成作用のタイムスケール】
近表面下では,様々な性質の間隙水の流動や賦存状態,また二酸化炭素の間隙水への溶存や脱ガスによって,不安定鉱物の溶解や安定鉱物相への転化,あるいは膠結作用が進行し,初生鉱物組成や堆積組織は大きく変化する.
琉球列島の島々では,ごく浅海域で堆積した炭酸塩堆積物は,陸上に露出してわずか数千年程度で,淡水性続成作用により鉱物組成と炭素・酸素同位体比に変化が見られ,堆積後,10万年程度でほぼ低Mg方解石のみになる.炭素・酸素同位体比も土壌有機物と淡水の影響を受けた値へと変化する(松田・熊井,1999).一方,島棚域で堆積した石灰藻球石灰岩や生砕性石灰岩では,堆積後,10万年以上経ても高Mg方解石やアラレ石が残存している場合がある.これは,水深が深い島棚堆積物は地表露出までにより多くの時間を要しているからである.このことは,初期続成作用の進行の度合いは,堆積後の時間よりも堆積環境と異なる続成環境に移行してからの時間が重要であることを示している.
【海水準変動と構造運動の影響】
上記のタイムスケールの検討では,隆起域の高海水準期である最終間氷期以降の堆積物を用いており,これらは堆積後,時間間隙を置かずに地表露出したものである.一方,海進期の堆積物は,堆積直後に海底で軽微な海水性続成作用を受けた以降は海水準の上昇と堆積物の累重により,孔隙は流動が不活発な海水に満たされたままである.そのため続成作用は進行せず,初生鉱物組成や堆積組織に大きな改変は認められない.これに続く低海水準期には淡水が堆積体内に流入するが,海水準低下が小さい場合には,淡水飽和帯は海進期堆積体に達せず,孔隙は依然として不活発な海水で充填されたままとなる.結果として初生鉱物組成や堆積組織は保存され,堆積物の固結も進まない.堆積体内での続成環境のジオメトリは,海水凖変動や隆起・沈降運動等に規制されるため,これらのセッティングの把握が重要である.
【初期続成作用とドロマイト化作用の時期の関係】
沖縄県南大東島の中新統〜鮮新統大東層は,堆積年代が異なる3つの堆積ユニットからなり,ドロマイト(苦灰岩)は島東部を中心に,堆積ユニット境界を横切る上下2つのドロマイト岩体(上部・下部ドロマイト)として分布する(島津ほか,2018).この石灰岩とドロマイトの分布や岩石組織は,種々の続成作用の起きた時期や位置に規制されている.
ドロマイト卓越部の上部・下部ドロマイトでは,岩石組織に大きな違いが認められる.堆積ユニットI・IIIいずれの上部ドロマイトも,不安定炭酸塩鉱物からなる生物遺骸粒子はドロマイトに交代されている.これに対し,堆積ユニットIの下部ドロマイトでは,生物遺骸粒子は低Mg方解石からなり,ドロマイトはセメントとして存在する.この違いは,上部ドロマイトのドロマイト化年代は堆積年代とほとんど差がなく,初生堆積物は淡水性続成作用を受けることなくドロマイト化したのに対し,下部ドロマイトのドロマイト化年代は堆積ユニットI堆積後,2Ma程度経過した時期であるため,初生堆積物の大部分は淡水性続成作用により低Mg方解石へと安定化した後に,ドロマイトはセメントとして形成されたことによる.このことは,ドロマイト化作用が起こるまでの続成履歴が岩石組織に大きな影響を与えていることを示唆する.
【空間的位置】
大東層では,同一堆積ユニット内のドロマイトでも島内の位置で岩石組織に違いが認められる.東側縁辺域では,活発な海水循環により海水ドロマイト化作用と過ドロマイト化作用が進行し,緻密な岩石が発達する.それに対し島中央部では土壌の発達により溶解作用が卓越し,その結果,サンゴ溶脱孔隙を中心とした高孔隙率の岩石中に自形ドロマイト結晶と結晶間孔隙がよく保存された組織となっている.この組織は,堆積ユニットIの下部ドロマイトも堆積ユニットIIIの上部ドロマイトもほぼ同じであることから,ドロマイト化後,5Ma程度の期間を経ているにも関わらず,島中央部では大きな組織改変が起きていないことを示している.
松田・熊井,1999,熊本大学理学部紀要,16,21-32.
松田・大塚,2021,日本地質学会第128年学術大会講演要旨,https://doi.org/10.14863/geosocabst.2021.0_109
島津ほか,2018,石油技術協会誌,83,81-93.
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