講演情報
[T12-O-5]琉球列島沖縄島の中期完新世サンゴ・石灰藻類礁内に発達する隠遁性微生物岩
*藤田 和彦1,2、小谷野 将2、知念 正昭3、白石 史人4、本郷 宙軌5、ハンブレ マーク6、浅海 竜司7、井龍 康文7、宮入 陽介8、横山 祐典8、菅 浩伸9 (1. 福井県立大学、2. 琉球大学、3. マイクロレンジ、4. 広島大学、5. 南紀熊野ジオパークセンター、6. 名古屋大学、7. 東北大学、8. 東京大学、9. 九州大学)
キーワード:
微生物岩、完新世、琉球列島
サンゴ・石灰藻類礁の枠組み内部の一次空隙に形成される、微粒かつ非骨格性の微生物源炭酸塩岩(微生物岩)の被殻や充填物は、「礁性微生物岩(reefal microbialite)」と呼ばれ、最終氷期極大期から完新世にかけての礁縁、礁斜面、および洞窟内で確認されている。礁性微生物岩の形成には地球規模および地域的な要因が関与すると考えられるが、その形成環境、形成年代、形成過程に関するデータが限られているため、それぞれの寄与度は不明である。本研究では、琉球列島沖縄島の沖合にある埋め立てられた卓礁から採取されたコア試料を対象に、岩相・生物相の変遷、礁性微生物岩のメソ(肉眼)・ミクロ(顕微鏡)スケールの組織、酸素・炭素安定同位体比、および放射性炭素年代を報告する。総掘削深度13.1 mのコアの層序は、下位から順に、(1) 琉球層群の更新統石灰岩(層厚1.6 m以上)、(2) 古土壌と生砕物の混合堆積物(層厚1.5 m、放射性炭素(14C)年代:約7,800 cal yr BP)、(3) 完新統礁性堆積物(層厚7 m、14C年代:7,300–6,300 cal yr BP)、(4) 埋め立て層(層厚3 m)で構成される。この層序は、中期完新世の海進に伴う陸域から海域への環境変化を反映する。礁性微生物岩は、礁性微生物被殻(Reefal microbial crust: RMC)、被覆生物とミクライト質組織の混合被殻(Mixed encrusting and micritic crust: MEMC)、および骨格内部・穿孔充填微生物岩(Intraskeletal and boring filling microbialite: IBFM)に分類される。RMCは特定の層準(海面下1.85〜3.55 m)に限って発達する一方、IBFMとMEMCは中期完新世の礁性堆積物全体にわたって認められる。RMCは、形成当時生育中のサンゴ・石灰藻類の表面から少なくとも0.5 m以深にある礁枠組み内の一次空隙において、サンゴ群集の死滅後、数十年から数百年の間に形成された。RMCの炭素同位体比(平均3.3‰)は海水と同位体平衡で沈殿した高マグネシウム方解石の値に近く、酸素同位体比の小さい変動幅はRMC形成期間中に海水温や塩分が大きく変化しなかったことを示唆する。調査地域における約7~6千年前の礁性微生物岩の発達は、海面上昇やサンゴ・石灰藻類礁の垂直方向への成長に伴って礁枠組み内に形成された暗黒な空隙や骨格内部、高エネルギー環境下での間隙水の循環、そして陸源堆積物の断続的な流入に伴う有機物・栄養塩の増加やアルカリ度の上昇に起因すると考えられる。
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