講演情報

[T12-O-6]秋吉石灰岩におけるモスコビアン期層孔虫の発見と礁生態学的意義

*柴﨑 勇真1、江﨑 洋一1、長井 孝一2、足立 奈津子1、杦山 哲男3 (1. 大阪公立大学、2. 琉球大学、3. 福岡大学)
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キーワード:

石炭紀、モスコビアン、層孔虫、礁、秋吉石灰岩


 山口県美祢市に分布する秋吉石灰岩は,パンサラッサ海の海山上で形成された石灰岩体であり,約8,000万年間にわたる海洋環境の記録を保持している (藤川ほか, 2019).秋吉生物礁については, とくに石炭紀後期バシキリアン期の礁核部における環境区分や生物相の分布が明らかにされている (Sugiyama and Nagai, 1994; Ezaki et al., 2024).Ezaki et al. (2024)は,デボン紀最末期に絶滅したと考えられてきた層孔虫が,バシキリアン期に秋吉生物礁の主要な形成者であったことを報告した.しかし,層孔虫の生息レンジや古生態に関する情報はなお限られている.今回,秋吉台北東部の猪出台に分布するモスコビアン期の石灰岩から層孔虫化石を発見した.本発表では,野外観察および薄片観察に基づき,層孔虫の産状と礁内での位置づけを報告する.
猪出台に分布する石灰岩からは, モスコビアン期を示準するフズリナ類Fusulinella biconicaが産する.同石灰岩からは,上方へ選択的に伸長する枝状形態,塊状形態,層状形態など,多様な成長形態を示すChaetetesが多産する.Chaetetesの成長中断面上には,床板サンゴや単体四射サンゴが付着する.一方,層孔虫様の生物は,ラミナ構造を形成しながらChaetetesや単体四射サンゴを被覆する.また,成長中断を繰り返しつつ上方へ成長し,結果的にドーム状ないし層状の形態を呈する.上方へ選択的に伸長する形態も認められる.成長中断の痕跡は暗色の泥質石灰岩の被覆層で示され,その中断面上には単体四射サンゴ,Chaetetes,凝集性有孔虫,床板サンゴが付着する.層孔虫様の生物では,円柱状のピラー構造が顕著である.ピラー構造の平均直径は約120㎛であり,内部には,cone-in-cone構造が識別される.石灰岩中には,葉状藻類(phylloid algae)も認められる.
以上の産状および内部構造から,ピラー構造とcone-in-cone構造を示す生物は層孔虫と判断され,分類学的にはlabechiidsに属する可能性が考えられる.今回の発見により,秋吉石灰岩における層孔虫のレンジはモスコビアン期まで延び,層孔虫が同時期にも礁の形成に関与していたことが示された.バシキリアン期の秋吉生物礁では,層孔虫とChaetetesが互層状に被覆し合いながら礁を形成するのに対し,猪出台のモスコビアン期の石灰岩ではChaetetesが多産する一方,層孔虫の産出は限られる.層孔虫が上方へ伸長する形態は特徴的であり,その形成要因として,固着基盤が狭く水平方向への成長が制限された結果,上方への成長が選択的に促された可能性が考えられる.Chaetetesが多様な成長形態を示すこと,および想定される礁の外洋側とラグーン側の空間的な位置関係を考慮すると, 今回,層孔虫が見出された場は背礁斜面であったと推定される.ただし, 現時点ではモスコビアン期の層孔虫の産出例がきわめて限られており,バシキリアン期の背礁斜面における生物群集の構成比や礁の形成様式との比較は困難である.今後,モスコビアン期における生物相の地域性や量的な変化をさらに検討し,地球環境の時代的な変化に伴う生物群集の盛衰についても評価する必要がある.
引用文献:Ezaki et al. (2024) Geology, 52, 825–829.; 藤川他 (2019) 地質学雑誌, 125, 609–631.; Sugiyama and Nagai (1994) Cour. Forsch.-Inst. Senckenberg, 172, 231–240.

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