講演情報

[T12-O-7]北中国山東省のフロンギアン統炒米店層に特異な微生物類礁の特徴と海洋環境

*足立 奈津子1、島谷 美来1、江﨑 洋一1、LIU Jianbo2、YAN Zhen3 (1. 大阪公立大学、2. 北京大学、3. 中国地質科学院)
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キーワード:

カンブリア紀、微生物類礁、生物多様性、SPICE事変、北中国

 古生代初期には,カンブリア爆発,オルドビス紀生物大放散として知られる二つの生物放散事変が生じている.その間には,生物多様性に極めて乏しい空白“フロンギアンギャップ”が存在すると考えられているが,その実態は明らかではない (Harper et al., 2019).北中国山東省には,カンブリア系第二統からフロンギアン統の礁の発達が認められ,礁の変遷や生物多様性の変化を海洋環境の変化との関係から明らかにする重要な情報が記録されている.本発表では,山東省のギャップ前後での礁の変遷に注目し,フロンギアン統礁の発達特性を明らかにする.
ミャオリンギアン統張夏層では,石灰質微生物類Epiphytonが豊富なスロンボライトが特徴的に発達する.スロンボライト内では,イシ海綿やサンゴ,棘皮動物などが局所的に産出する.また,石灰質微生物類Angusticellulariaが密集することで形成されたスロンボライトも稀に観察される.ストロマトライトは限定的である.一方,フロンギアン統炒米店層では,柱状ストロマトライト (直径0.5−2 cm) が顕著である.石灰質微生物類Girvanellaが関与することでラミナが明瞭な柱状構造が形成された.また,柱状構造内や間では,スパーセメントで充填されたネットワーク構造が特徴的なケラトース海綿 (直径約5mm) が分布する. さらに,Angusticellulariaを産するスロンボライト (高さ約1.5 m) も一部で観察される.
山東省では,ミャオリンギアン世からフロンギアン世で礁の特性が大きく変化する.すなわち,Epiphytonが豊富なスロンボライトやイシ海綿が衰退し,ケラトース海綿を産するストロマトライトへと変化する.ケラトース海綿は,低酸素濃度の海洋環境にも耐性があり,フロンギアン世での増加には,世界的な海洋無酸素事変 (SPICE事変) との関係が指摘されている (Chen et al., 2014).しかし,ケラトース海綿を産出する微生物類礁が,河南省や内モンゴルでは,より早期のドラミアン期やガズハンジアン期に形成された (Xin et al., 2023). さらに,河北省や山西省のフロンギアン統から,Epiphytonを産する微生物類礁が知られている (Latif et al., 2018; Adachi et al., 2023). 山東省で観察されたフロンギアン世のスロンボライトは,ウーイドを伴い,ケラトース海綿を産出するストロマトライトよりも浅海域で形成されたと推定される.山東省を含めた北中国のより浅海域では,イシ海綿は産出しないものの,ミャオリンギアン世で観察された石灰質微生物類による礁が継続的に発達した.一方,より深い,還元的環境ではケラトース海綿で特徴付けられる礁が発達していた可能性がある.未だ酸素濃度の低いカンブリア紀の海洋では,SPICE事変以前にも還元的環境が地域的に拡大し,ケラトース海綿を産出する微生物類礁が発達したことが考えられる.今後,北中国に加えて,北米やイランなどに分布するフロンギアン統の微生物類礁の特性を明らかにし,礁生物相の違いを地域的な堆積場の違いや還元的な海洋環境の広がりとの関係から検討していく必要がある.

[参考文献] Adachi et al. (2023) Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 630, 111804. Chen et al. (2014) Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 414, 246–259. Harper et al. (2019) Palaeoworld 28, 4–12. Latif et al. (2018) Carbonates Evap. 34, 825–843. Xin et al. (2023) Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 614, 111429.

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