講演情報
[T12-O-8]中国山東省済南市に分布するカンブリア系張夏層におけるストロマトライトの形成様式—スロンボライトとの比較から—
*江﨑 洋一1、浅井 萌菜1、足立 奈津子1、閆 振2、劉 建波3 (1. 大阪公立大学、2. 中国地質科学院、3. 北京大学)
キーワード:
古生代、カンブリア紀、ストロマトライト、スロンボライト、中国
中国山東省済南市近郊には,カンブリア系ミャオリンギアン統に相当する張夏層が広く分布している.本層の微生物岩は,石灰質微生物 Epiphyton の密集部を含み,樹状,斑点状,網目状などの多様な内部組織を示すスロンボライトで特徴づけられる.済南市鋼城区九龍山セクションでは,層厚約170 mに及ぶ張夏層が認められ,その下部および上部にスロンボライト層が発達する (Yan et al., 2017).下部層準の一部のスロンボライトには隠棲空間が発達し,その内部にはサンゴ Cambroctoconus の密集部が認められる.さらに,その直上にはストロマトライト層が累重する (Ezaki et al., 2017).本発表では,このストロマトライトの産状を記載し,その形成様式を検討する.
張夏層全体では,ストロマトライトの産出は稀である.今回対象とするストロマトライト層は,直下のスロンボライト層と明瞭な境界で接するが,内部構造には両者に共通する特徴も認められる.ストロマトライト層の層厚は約1.0〜1.3 mで,柱状—層状ストロマトライト (columnar-layered stromatolite)の構造を示す.その上位は泥質石灰岩層によって覆われる.各柱状構造の直径はおおむね2 cmであるが,最大で約5 cmに達し,分岐や癒合を繰り返す.柱状構造間は砕屑性堆積物によって充填される.薄片観察では,柱状構造内に外形が不定なイシ海綿類が頻繁に認められる.また,Epiphyton の樹状密集部が散在し,その一部は柱状構造の最初期部の起点となっている.柱状構造内のラミナ組織は,石灰泥やペロイド状粒子が層状・鱗状に集積することで構成される.これらの粒子はイシ海綿類の周縁部に多く,中心部が再結晶している場合も多い.各柱状構造は,側方に張り出す腕状構造によって頻繁に連結される.この腕状構造は柱状部のラミナと連続し,同一時間面を反映している.さらに,柱状構造内にも,スロンボライトに特徴的な樹状構造が局所的に認められる.
本発表で扱うストロマトライトの形成には,底生微生物群集の代謝活動が関与したと考えられる.一方で,ラミナを構成する粒子の分布,およびそれらとイシ海綿類との密接な産状関係は,ラミナの形成に海綿組織の分解に由来する粒子の集積が寄与したことを示唆する.近年,一部のストロマトライトの形成に,ケラトース海綿に代表される海綿類が関与した可能性が指摘されている (Luo and Reitner, 2016など).今回の事例もこの見解と整合的であり,微生物活動に加えて,海綿類の分解過程がストロマトライトの形成に寄与した例とみなすことができる.スロンボライトからストロマトライトへの変化には,潮下帯内での相対的な水深の増加,すなわち海水準の上昇または局所的な沈降に伴う環境変化が関与した可能性がある.具体的には,光量の低下,光合成活動の減退,有機物分解の促進,酸化還元状態の変化などが複合的に作用したと考えられる.ストロマトライトとスロンボライトの違いは,構成生物や粒子の由来そのものよりも,それらが海底面上でどのように組織化されたかに起因すると推定される.すなわち,連続的な微生物マットの形成と,その表面に沿った粒子の捕捉・配列・固定と石灰化が優勢な場合には,時間面を反映するラミナ組織が形成され,ストロマトライトとなる.一方,Epiphyton の密集部,海綿組織,分解由来粒子,石灰化が不均質に発達した場合には,微生物岩の形成が面的に連続せず,樹状,斑点状,塊状の組織を示すスロンボライトとなる.したがって,両者の差異は,生物相そのものの違いではなく,微生物活動,石灰質微生物や海綿組織の分解,粒子の配列,堆積速度,石灰化などの相対的なバランスの違いを反映していると考えられる.
引用文献:Ezaki et al. (2017) Palaios, 32, 559–571.; Luo and Reitner (2016) Lethaia, 49, 555–570.; Yan et al. (2017) Palaeogeogr., Palaeoclimatol., Palaeoecol., 474, 45–57.
張夏層全体では,ストロマトライトの産出は稀である.今回対象とするストロマトライト層は,直下のスロンボライト層と明瞭な境界で接するが,内部構造には両者に共通する特徴も認められる.ストロマトライト層の層厚は約1.0〜1.3 mで,柱状—層状ストロマトライト (columnar-layered stromatolite)の構造を示す.その上位は泥質石灰岩層によって覆われる.各柱状構造の直径はおおむね2 cmであるが,最大で約5 cmに達し,分岐や癒合を繰り返す.柱状構造間は砕屑性堆積物によって充填される.薄片観察では,柱状構造内に外形が不定なイシ海綿類が頻繁に認められる.また,Epiphyton の樹状密集部が散在し,その一部は柱状構造の最初期部の起点となっている.柱状構造内のラミナ組織は,石灰泥やペロイド状粒子が層状・鱗状に集積することで構成される.これらの粒子はイシ海綿類の周縁部に多く,中心部が再結晶している場合も多い.各柱状構造は,側方に張り出す腕状構造によって頻繁に連結される.この腕状構造は柱状部のラミナと連続し,同一時間面を反映している.さらに,柱状構造内にも,スロンボライトに特徴的な樹状構造が局所的に認められる.
本発表で扱うストロマトライトの形成には,底生微生物群集の代謝活動が関与したと考えられる.一方で,ラミナを構成する粒子の分布,およびそれらとイシ海綿類との密接な産状関係は,ラミナの形成に海綿組織の分解に由来する粒子の集積が寄与したことを示唆する.近年,一部のストロマトライトの形成に,ケラトース海綿に代表される海綿類が関与した可能性が指摘されている (Luo and Reitner, 2016など).今回の事例もこの見解と整合的であり,微生物活動に加えて,海綿類の分解過程がストロマトライトの形成に寄与した例とみなすことができる.スロンボライトからストロマトライトへの変化には,潮下帯内での相対的な水深の増加,すなわち海水準の上昇または局所的な沈降に伴う環境変化が関与した可能性がある.具体的には,光量の低下,光合成活動の減退,有機物分解の促進,酸化還元状態の変化などが複合的に作用したと考えられる.ストロマトライトとスロンボライトの違いは,構成生物や粒子の由来そのものよりも,それらが海底面上でどのように組織化されたかに起因すると推定される.すなわち,連続的な微生物マットの形成と,その表面に沿った粒子の捕捉・配列・固定と石灰化が優勢な場合には,時間面を反映するラミナ組織が形成され,ストロマトライトとなる.一方,Epiphyton の密集部,海綿組織,分解由来粒子,石灰化が不均質に発達した場合には,微生物岩の形成が面的に連続せず,樹状,斑点状,塊状の組織を示すスロンボライトとなる.したがって,両者の差異は,生物相そのものの違いではなく,微生物活動,石灰質微生物や海綿組織の分解,粒子の配列,堆積速度,石灰化などの相対的なバランスの違いを反映していると考えられる.
引用文献:Ezaki et al. (2017) Palaios, 32, 559–571.; Luo and Reitner (2016) Lethaia, 49, 555–570.; Yan et al. (2017) Palaeogeogr., Palaeoclimatol., Palaeoecol., 474, 45–57.
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