講演情報

[T18-O-3]XRFコアスキャンデータを用いたデータ駆動型地層対比手法の開発

*桑谷 立1、関 有沙2、村山 雅史3、多田 隆治4 (1. 国立研究開発法人海洋研究開発機構、2. 深田地質研究所、3. 高知大学海洋コア総合研究センター、4. 千葉工業大学)
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キーワード:

XRFコアスキャン、地層対比、多元素データ、データ駆動

 蛍光X線(XRF)コアスキャナは、コアに沿って多元素カウントデータを高データ密度で連続的に取得できる手法として、地質・層序研究で広く利用されている。表面形状や含水状態などによりカウント値の解釈には注意を要するものの、多元素情報を連続的な化学層序データとして効率よく取得できる点に大きな利点がある。これまでにも、主成分分析などを用いた可視化や次元圧縮により、地層判別、化学層序の把握、イベント層の検出などに有効性が示されてきた。一方で、XRFコアスキャンデータの特長である多元素性、高空間解像度、連続性を、コア間の地層対比に明示的に活用する解析手法は、なお発展途上にある。
本研究では、XRFコアスキャンデータを、掘削コアに記録された層序変化を捉えるための高密度な化学層序情報として位置づけ、掘削コア間の地層対比を支援するデータ駆動型解析手法を開発した。本研究では、XRFデータのみから層序を一意に決定することを目的とするものではなく、コア記載、肉眼観察、既知の層序情報などにより地質学的に制約された比較対象に対して、多元素データに基づく対応候補を定量的に抽出することを目的とする。
短尺コアや特定層準の対比では、あらかじめコア記載と肉眼観察に基づいて区分された各地層を対象とし、その層内に含まれる多数の測定点における多元素カウント値を統計分布として表現する。そして、同一または対応する層準では、多元素データ空間における統計的特徴が類似するという仮定のもと、分布間の類似性に基づいて対応候補を探索する。この手法を宮城県東松島市で採取されたジオスライサー試料に適用した結果、既報で記載された津波堆積物層に対応する層準を検出・対比できることを確認した(桑谷ほか, 2023)。
一方、長尺の連続コアでは、個々の層境界を事前に設定することが難しく、堆積速度や層厚の違いにより深度方向の対応関係も単純には一致しない。そこで本研究では、対応する層準では、全てもしくは一部の元素カウント値の変動のパターンが類似するという仮定、および、層序の上下関係が保存され対応関係が深度方向に単調であることを前提として、Dynamic Time Warping(DTW)を用いた対比支援手法を開発した。DTWは、二つの深度方向データ列を、順序を保ったまま局所的に伸縮させ、全体として最も類似する対応経路を求める手法である。これにより、欠損部や堆積速度や層厚の違いに起因する非線形な深度ずれを許容しながら、多元素データ列に基づくコア間対応を推定できる。現在、IODP第346次航海で取得された日本海堆積物連続コア試料(Tada et al., 2015; Mitake et al., 2026)への適用を試みており、比較するコアの始点・終点がおおむね対応する層序区間にある場合において、地層対比支援手法としての有効性が確認されつつある段階である。
以上の結果は、XRFコアスキャンデータを単なる補助的な化学分析値としてではなく、コア間の層序対比を支える高密度な化学層序情報として活用できることを示している。今後は、XRFコアスキャンデータに加えて、コア画像、層相記載、物理検層データ、火山灰層などの鍵層、放射年代や古地磁気層序などの年代情報を統合することで、化学的類似性のみに依存しない、より頑健な層序対比手法へ発展させることが重要である。

引用文献
桑谷ほか (2023) 地学雑誌 132, 367-384
Mitake et al. (2026) PEPS 13, 25
Tada et al. (2015) Proceedings of the IODP 346.

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