講演情報
[T18-O-8]MIS 20−18における⿊潮続流前線表層−亜表層⽔構造の千年スケール変動
*羽田 裕貴1、岡田 誠2、長谷川 大輔3、久保田 好美4、中里 裕臣1、菅沼 悠介5,6 (1. 産総研地質調査総合センター、2. 茨城大学、3. 株式会社キタック、4. 国立科学博物館、5. 国立極地研究所、6. 総合研究大学院大学)
キーワード:
上総層群、犬吠層群、豊房層群、有孔虫、北西太平洋
千年スケール気候変動(Millennial Climate Variability: MCV)は更新世の氷期−間氷期サイクルに内在する1000〜10000年スケールの変動であり(Hodell et al., 2023),その発⽣機構や全球的な 伝播過程の解明は古気候研究における重要課題である.北⻄太平洋では,⿊潮続流前線が北⼤⻄洋の気候変動に鋭敏に応答することが知られているが(Haneda et al., 2020),その応答様式や変動メカニズムには未解明な点が多い.⿊潮境界の変動を議論するためには,⽔温・ 塩分の表層−亜表層⽔構造の緯度⽅向および鉛直⽅向の変化を評価する必要がある.
房総半島中部に位置する千葉複合セクション(Chiba composite section: CbCS)は,上総層群国本層中部の海洋酸素同位体ステージ(marine isotope stage: MIS)20後期〜18 最初期の層序区間に相当する(Suganuma et al., 2021).CbCS から得られた浮遊性および底⽣有孔⾍の酸素同位体⽐(δ18O)曲線は,MIS 19後期において北⼤⻄洋氷床の融解イベントに対応する4 回の顕著な亜氷期−亜間氷期サイクルを記録しており,これらは⿊潮続流前線の南北移動に伴う表層・亜表層⽔温の変動と解釈されている(Haneda et al., 2020).しかし,単⼀地点のδ18O 記録のみでは、⽔塊構造の緯度・鉛直勾配に基づく海洋前線の移動を直接評価することは困難である.また,CbCS ではMIS 18最初期にも周期的変動が認められるが,その振幅が⼩さいためMCVとしての認定には⾄っていない.したがって,⿊潮続流前線の時空間変動を復元するためには,複数地点から得られる⾼精度対⽐可能な記録に基づく検討が必要である.
本研究では,MIS 20後期〜MIS 18最初期における⿊潮続流前線海域のMCVと全球的な 気候変動に対する応答を明らかにすることを⽬的として,房総半島北部に分布する⽝吠層群横根層および南部に分布する豊房層群東⻑⽥層を対象に,底⽣および亜表層・表層浮遊性有孔⾍化⽯のδ18O分析,古地磁気分析,テフラ分析を実施した.横根層と東長田層の対象層準および CbCSには指標テフラKu1とKu2Bが挟在し,さらに松⼭−ブルン境界が認められる.これら層序指標を⽤いてCbCSの⾼時間分解能δ18O記録(Haneda et al., 2020)との対⽐を⾏い,MIS 20 後期からMIS 18 最初期に⾄る年代モデルを構築した.これに基づき,北⻄太平洋中緯度海域縁辺における⽔温・塩分の緯度・鉛直勾配の時間変化を検討した.
松⼭−ブルン境界および2枚の指標テフラ層を基準として各地域のδ18O 記録を対⽐した結果,先⾏研究で認識されていた4 回のサイクルに加えて,新たに6 回の亜氷期−亜間氷期サイクルが認定された.このことは,⿊潮続流前線海域ではMIS 19からMIS 18 の氷床成⻑期にMCV が継続していたことを⽰す.また,これらδ18O 記録の変動振幅には2 回の顕著な低下が認められた.3 地点の表層および亜表層浮遊性有孔⾍δ18O記録から推定した⽔塊構造の変化は,強振幅期(MIS 19後期: 774〜757 ka)および中振幅期(757〜752 ka)には⿊潮続流前線の南北移動が卓越していたことを⽰す.⼀⽅,弱振幅期(752〜750 ka)には⽔温の地域間緯度勾配が縮⼩し,前線位置の変化よりも⿊潮系⽔塊⾃体の表層⽔温変動が卓越していたことが⽰唆される.
加えて,MIS 19後期〜MIS 18最初期における2段階の振幅低下は,北⼤⻄洋東部中緯度海域の底⽣有孔⾍炭素同位体⽐および浮遊性有孔⾍δ18O 記録(Hodell et al., 2023)と類似した変化傾向を⽰す.⼤⻄洋⼦午⾯循環の活動低下に伴い,⿊潮続流前線の南北移動幅が段階的に縮⼩したと考えられる.
Haneda, Y. et al. (2020) EPSL, 531, 115936.
Hodell, D. A. et al. (2023) Climate of the Past, 19, 607–636.
Suganuma, Y. et al. (2021) Episodes, 43, 317–347.
房総半島中部に位置する千葉複合セクション(Chiba composite section: CbCS)は,上総層群国本層中部の海洋酸素同位体ステージ(marine isotope stage: MIS)20後期〜18 最初期の層序区間に相当する(Suganuma et al., 2021).CbCS から得られた浮遊性および底⽣有孔⾍の酸素同位体⽐(δ18O)曲線は,MIS 19後期において北⼤⻄洋氷床の融解イベントに対応する4 回の顕著な亜氷期−亜間氷期サイクルを記録しており,これらは⿊潮続流前線の南北移動に伴う表層・亜表層⽔温の変動と解釈されている(Haneda et al., 2020).しかし,単⼀地点のδ18O 記録のみでは、⽔塊構造の緯度・鉛直勾配に基づく海洋前線の移動を直接評価することは困難である.また,CbCS ではMIS 18最初期にも周期的変動が認められるが,その振幅が⼩さいためMCVとしての認定には⾄っていない.したがって,⿊潮続流前線の時空間変動を復元するためには,複数地点から得られる⾼精度対⽐可能な記録に基づく検討が必要である.
本研究では,MIS 20後期〜MIS 18最初期における⿊潮続流前線海域のMCVと全球的な 気候変動に対する応答を明らかにすることを⽬的として,房総半島北部に分布する⽝吠層群横根層および南部に分布する豊房層群東⻑⽥層を対象に,底⽣および亜表層・表層浮遊性有孔⾍化⽯のδ18O分析,古地磁気分析,テフラ分析を実施した.横根層と東長田層の対象層準および CbCSには指標テフラKu1とKu2Bが挟在し,さらに松⼭−ブルン境界が認められる.これら層序指標を⽤いてCbCSの⾼時間分解能δ18O記録(Haneda et al., 2020)との対⽐を⾏い,MIS 20 後期からMIS 18 最初期に⾄る年代モデルを構築した.これに基づき,北⻄太平洋中緯度海域縁辺における⽔温・塩分の緯度・鉛直勾配の時間変化を検討した.
松⼭−ブルン境界および2枚の指標テフラ層を基準として各地域のδ18O 記録を対⽐した結果,先⾏研究で認識されていた4 回のサイクルに加えて,新たに6 回の亜氷期−亜間氷期サイクルが認定された.このことは,⿊潮続流前線海域ではMIS 19からMIS 18 の氷床成⻑期にMCV が継続していたことを⽰す.また,これらδ18O 記録の変動振幅には2 回の顕著な低下が認められた.3 地点の表層および亜表層浮遊性有孔⾍δ18O記録から推定した⽔塊構造の変化は,強振幅期(MIS 19後期: 774〜757 ka)および中振幅期(757〜752 ka)には⿊潮続流前線の南北移動が卓越していたことを⽰す.⼀⽅,弱振幅期(752〜750 ka)には⽔温の地域間緯度勾配が縮⼩し,前線位置の変化よりも⿊潮系⽔塊⾃体の表層⽔温変動が卓越していたことが⽰唆される.
加えて,MIS 19後期〜MIS 18最初期における2段階の振幅低下は,北⼤⻄洋東部中緯度海域の底⽣有孔⾍炭素同位体⽐および浮遊性有孔⾍δ18O 記録(Hodell et al., 2023)と類似した変化傾向を⽰す.⼤⻄洋⼦午⾯循環の活動低下に伴い,⿊潮続流前線の南北移動幅が段階的に縮⼩したと考えられる.
Haneda, Y. et al. (2020) EPSL, 531, 115936.
Hodell, D. A. et al. (2023) Climate of the Past, 19, 607–636.
Suganuma, Y. et al. (2021) Episodes, 43, 317–347.
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