講演情報
[T10-P-9]小笠原海台衝突域における母島海山の内部構造
*三浦 亮1、白石 和也1、藤江 剛1 (1. 海洋研究開発機構)
キーワード:
母島海山、小笠原海台、伊豆・小笠原前弧、前弧オフィオライト、反射法地震探査
伊豆・小笠原海溝とマリアナ海溝の会合部では、太平洋プレート上に位置する小笠原海台が沈み込み帯に衝突している。この衝突域の海溝軸西側、前弧斜面上には母島海山が位置しており、海台衝突に伴う前弧域の変形および構造再編過程を検討する上で重要な地質体である。
母島海山の形成過程およびテクトニックな位置づけについては、ドレッジ調査で得られた岩石試料や海底地形などの地球物理学的観測結果に基づき、伊豆・小笠原・マリアナ前弧域に特徴的な蛇紋岩海山(蛇紋岩ダイアピル)とする解釈(Ishii, 1985)、小笠原海台の衝突によりテクトニック・ブロックとして形成された前弧オフィオライトとする解釈(長岡ほか, 1989)、パレスベラ海盆拡大時のトランスフォーム断層運動に伴うテクトニック・ブロックとする解釈(Fujioka et al., 2005)が提案されてきた。
地質学的・岩石学的研究からは、母島海山は蛇紋岩のみならず、はんれい岩、ドレライト、玄武岩など典型的なオフィオライト構成岩類からなることが明らかとなり(東ほか, 2005;Ishiwatari et al., 2006)、さらに母島海山東側斜面からは石灰岩試料も報告され、小笠原海台の一部が前弧域に付加した可能性が指摘されている(Miyata et al., 2020)。これらの知見は、母島海山の形成過程を理解する上で、小笠原海台との関係が重要であることを示唆している。
一方、母島海山の内部構造に関する議論は現在でも主としてMiura et al. (2004) に依拠している。Miura et al.(2004)は、反射法地震探査データおよび重力モデリングに基づき、母島海山の基部に低密度の蛇紋岩体が存在しないことを示し、前弧蛇紋岩海山(蛇紋岩ダイアピル)モデルを前提としたうえで、小笠原海台の沈み込みに伴うテクトニック・エロージョンにより蛇紋岩海山の根が削剥されたとする「根無し蛇紋岩海山モデル」を提案した。しかし、その後蓄積された地質学的・岩石学的知見を踏まえた内部構造の検討は十分になされていない。
本研究では、Miura et al. (2004) で用いた反射法地震探査データを最新の解析手法により再解析することで、従来の解析では十分に捉えられていなかった母島海山表層から内部にかけての反射構造の詳細なイメージングを行い、母島海山内部構造と沈み込む小笠原海台との関係について検討した。
その結果、Miura et al. (2004) では不明瞭であった母島海山内部に、複数の西傾斜を示す反射面が系統的に認識された。また、母島海山直下には沈み込んだ小笠原海台上面に対応する可能性のある反射波も確認された。特に、西傾斜反射面の系統的分布は、海台衝突に伴う前弧斜面の変形過程を反映したテクトニックな構造(スラストの発達・小笠原海台の一部付加)の可能性がある。一方で、これらの反射面が母島海山の初生的な構造を反映している可能性も否定できない。これらの構造的特徴は、同海山がMiura et al. (2004) で認識されていたよりも複雑な内部構造をもつ地質体であることを示しており、海山自体の形成過程と、その後の小笠原海台沈み込みに伴う前弧域の変形過程を理解する上で新たな知見を与えるものである。
<謝辞>
本研究では、エネルギー・金属鉱物資源機構より提供いただいた平成12年度「大水深域における石油資源等の探査技術等基礎調査(小笠原諸島東方海域)」の物理探査データを使用した。ここに記して感謝申し上げる。
<文献>
Fujioka et al., 2005, Island Arc, 14, 616-622.
東ほか, 2005, 「海—自然と文化」東海大紀要海洋学部, 3, 61–76.
Ishii, 1985, In N. Nasu, K. Kobayashi, S. Uyeda, I. Kushiro, & H. Kagami (Eds.), Formation of active ocean margins, 307–342. Tokyo, Japan: Terrapub.
Ishiwatari et al., 2006, IslandArc, 15, 102–118.
Miura et al., 2004, Geology, 32, 541–544.
Miyata et al., 2020, 29, doi.org/10.1111/iar.12368.
長岡ほか, 1989, 水路部研究報告, 25, 73–91.
母島海山の形成過程およびテクトニックな位置づけについては、ドレッジ調査で得られた岩石試料や海底地形などの地球物理学的観測結果に基づき、伊豆・小笠原・マリアナ前弧域に特徴的な蛇紋岩海山(蛇紋岩ダイアピル)とする解釈(Ishii, 1985)、小笠原海台の衝突によりテクトニック・ブロックとして形成された前弧オフィオライトとする解釈(長岡ほか, 1989)、パレスベラ海盆拡大時のトランスフォーム断層運動に伴うテクトニック・ブロックとする解釈(Fujioka et al., 2005)が提案されてきた。
地質学的・岩石学的研究からは、母島海山は蛇紋岩のみならず、はんれい岩、ドレライト、玄武岩など典型的なオフィオライト構成岩類からなることが明らかとなり(東ほか, 2005;Ishiwatari et al., 2006)、さらに母島海山東側斜面からは石灰岩試料も報告され、小笠原海台の一部が前弧域に付加した可能性が指摘されている(Miyata et al., 2020)。これらの知見は、母島海山の形成過程を理解する上で、小笠原海台との関係が重要であることを示唆している。
一方、母島海山の内部構造に関する議論は現在でも主としてMiura et al. (2004) に依拠している。Miura et al.(2004)は、反射法地震探査データおよび重力モデリングに基づき、母島海山の基部に低密度の蛇紋岩体が存在しないことを示し、前弧蛇紋岩海山(蛇紋岩ダイアピル)モデルを前提としたうえで、小笠原海台の沈み込みに伴うテクトニック・エロージョンにより蛇紋岩海山の根が削剥されたとする「根無し蛇紋岩海山モデル」を提案した。しかし、その後蓄積された地質学的・岩石学的知見を踏まえた内部構造の検討は十分になされていない。
本研究では、Miura et al. (2004) で用いた反射法地震探査データを最新の解析手法により再解析することで、従来の解析では十分に捉えられていなかった母島海山表層から内部にかけての反射構造の詳細なイメージングを行い、母島海山内部構造と沈み込む小笠原海台との関係について検討した。
その結果、Miura et al. (2004) では不明瞭であった母島海山内部に、複数の西傾斜を示す反射面が系統的に認識された。また、母島海山直下には沈み込んだ小笠原海台上面に対応する可能性のある反射波も確認された。特に、西傾斜反射面の系統的分布は、海台衝突に伴う前弧斜面の変形過程を反映したテクトニックな構造(スラストの発達・小笠原海台の一部付加)の可能性がある。一方で、これらの反射面が母島海山の初生的な構造を反映している可能性も否定できない。これらの構造的特徴は、同海山がMiura et al. (2004) で認識されていたよりも複雑な内部構造をもつ地質体であることを示しており、海山自体の形成過程と、その後の小笠原海台沈み込みに伴う前弧域の変形過程を理解する上で新たな知見を与えるものである。
<謝辞>
本研究では、エネルギー・金属鉱物資源機構より提供いただいた平成12年度「大水深域における石油資源等の探査技術等基礎調査(小笠原諸島東方海域)」の物理探査データを使用した。ここに記して感謝申し上げる。
<文献>
Fujioka et al., 2005, Island Arc, 14, 616-622.
東ほか, 2005, 「海—自然と文化」東海大紀要海洋学部, 3, 61–76.
Ishii, 1985, In N. Nasu, K. Kobayashi, S. Uyeda, I. Kushiro, & H. Kagami (Eds.), Formation of active ocean margins, 307–342. Tokyo, Japan: Terrapub.
Ishiwatari et al., 2006, IslandArc, 15, 102–118.
Miura et al., 2004, Geology, 32, 541–544.
Miyata et al., 2020, 29, doi.org/10.1111/iar.12368.
長岡ほか, 1989, 水路部研究報告, 25, 73–91.
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