講演情報

[T10-P-11]ODP Hole 735B Atlantis Bank掘削試料の全岩化学組成に着目した主成分分析

*二村 康平1、藤井 昌和1,2、赤穂 昭太郎2,3、栗木 哲2,3 (1. 国立極地研究所、2. 総合研究大学院大学、3. 統計数理研究所)
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キーワード:

海洋下部地殻、ハンレイ岩、主成分分析、海洋コアコンプレックス


 海洋下部地殻は海洋地殻の大部分を構成し、その主要構成岩であるハンレイ岩の全岩化学組成は、中央海嶺や背弧海盆におけるマグマ付加過程や地殻形成過程を理解するうえで重要な制約を与える。しかし、ハンレイ岩の全岩化学組成には、集積鉱物のモード組成、結晶分化作用、メルト-岩石反応、変質作用など、複数の過程が重複して反映されるため、その変動要因の評価は容易ではない。
そこで本研究では、南西インド洋海嶺のAtlantis Bankに位置するODP Hole 735Bに着目した。ODP Hole 735Bは、低速拡大海嶺における下部地殻セクションとして、最も連続的に回収された掘削孔の一つである。先行研究では、本コアは12の岩相層序ユニットに区分され、さらにユニットI–IV、V–VI、VII–XIIが、それぞれ 12.11 Ma、11.97 Ma、11.93 Maに形成された3つのハンレイ岩体としてまとめられている。これらの既存区分と全岩化学組成変動との対応関係を評価するため、ODP Hole 735Bから得られたハンレイ岩類858試料の全岩主要元素組成データに対し、組成データ解析に基づく主成分分析(PCA)を適用した。全岩化学組成は組成データであるため、PCAに先立ち、有心対数比変換(centered log-ratio transformation; CLR)を用いてデータを変換した。
第1〜第4主成分は、それぞれ全分散の45.8%、28.2%、10.5%、7.0%を説明する。PC1はSi–Al–Mg–Ca–Naに富む組成とTi–Fe–Mn–K–Pに富む組成を対比しており、斜長石・かんらん石・単斜輝石を含む鉱物組み合わせと、Fe–Ti酸化物および分化したメルトに関連する成分との相対的な寄与の違いを反映している可能性がある。PC2、PC3、PC4は、それぞれFe–Mn–Mg–CaとNa–K–P、Mg–Ca–PとSi–Ti–Fe–Na、Fe–Mn–Mg–KとTi–Al–Ca–Na–Pを対比する。
これらの組成軸と岩相構造との関係を評価するため、変化点検出および分位点回帰を用いて、PCスコアの掘削深度依存性を検討した。その結果、PC1はFe–Ti酸化物-かんらん石ハンレイ岩からなるユニットIVを境に顕著な変化を示し、この区間がPCスコアに基づいて組成的に明瞭に区別されることが示された。PC2は、掘削コア中部におけるノーライトに富むユニットから、かんらん石ハンレイ岩に富むユニットへの、より広域的な組成変化を示唆する。ただし、その地質学的意義についてはさらなる検討が必要である。PC3は、先行研究で提案された3つのハンレイ岩体へのコア区分と部分的に対応する、より広域的な下方への組成変化を反映している可能性があるが、この対応関係は暫定的である。PC4は深度に伴う変化が比較的弱く、岩相ユニット境界との明瞭な対応は認められなかった。
以上の結果は、組成データ解析に基づくPCAを変化点検出および分位点回帰と組み合わせることで、既存の岩相層序枠組みと対応する地球化学的構造を評価し、さらに細かなスケールの組成トレンド候補を抽出するための有用な探索的手法となることを示している。

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