講演情報
[T10-P-12]インド洋マリエ・セレスト断裂帯から採取されたエピドーサイトの形成条件と熱水組成への影響
*渉里 優花1、福山 繭子2、田村 明弘1、町田 嗣樹3、沖野 郷子4、森下 知晃1 (1. 金沢大学、2. 秋田大学、3. 千葉工業大学、4. 東京大学大気海洋研究所)
キーワード:
オフィオライト、エピドーサイト、熱水、海洋地殻
エピドーサイト(epidosite)は、肉眼観察でピスタチオグリーンを呈する岩石で、主に緑簾石と石英から構成される岩石であり、副成分鉱物として緑泥石、緑閃石、チタン鉄鉱、磁鉄鉱、硫化鉱物などを伴う(Banerjee et al., 2000 Geology)。様々な地質環境に産するが、特に海洋地殻相当部の熱水変質岩としてオフィオライト中に多く報告されることから、海嶺系での海洋底熱水システムでも形成されると考えられている(Gilgen et al., 2022 Lithos)。この海洋底熱水システムは、海水が拡大軸下に浸透し、マグマ系からの熱源と供給される物質による熱水となり岩石と反応し、金属鉱床を形成する一連の過程を指す。この海洋底熱水システムの中でエピドートの存在は、深部熱水上昇流の指標であるとともに、海底熱水性硫化物鉱床形成解明において重要な構成要素である (Richter and Diamond, 2022, Geochimica et Cosmochimica Acta)。しかし、現世の海洋プレートからのエピドーサイトの産出例は極めて少なく、トンガ前弧から回収されたエピドーサイトが挙げられる(Banerjee et al., 2000 Geology)。そこで本研究では、2024 年度白鳳丸航海調査(KH-24-4)におけるドレッジ採取によって中央インド洋海嶺の Marie Celeste 断裂帯(fracture zone)水深 5732mから回収されたエピドーサイト試料群を研究対象とする。この熱水変質岩試料から、形成場・形成深度・形成温度を推定するとともに、地球化学的特徴を明らかにし、それらの情報に基づいて熱水循環システムを検討することを目的とする。
エピドーサイトは、緑泥石に富む変質岩中にパッチ状または脈状(mm~cm スケール)の透水性・クラック分布・鉱物配列の違いを反映したと考えられる多様な産状を示す。さらに、緑泥石に富む領域では火成組織が部分的に残存し、斜長石の粒径は 0.1–1 mm 程度であった。残存原岩組織と近傍ドレッジでの未変質岩との比較から、原岩は玄武岩であり、玄武岩の熱水変質により斜長石はアルバイトへ、苦鉄質鉱物は主に緑泥石およびチタン石へ置換されたと推定される。微量元素組成から、エピドートは Cu および Zn に乏しく、特に Cuの含有量が乏しい。これらの傾向はエピドーサイト化の形成により、Cu および Zn などの金属元素が個相に固定されず、流体相へ移動しうることを支持する。全岩組成比較では、未変質玄武岩に対し変質玄武岩は、CaO/Al₂O₃ が大幅に減少し、Na2O/Al₂O₃、MgO/Al₂O₃ 、 FeO/Al₂O₃は増加することが示された。変質玄武岩での CaO/Al₂O₃ の著しい低下は、斜長石のアルバイト化に伴う Ca の流体相への放出(Seyfried et al.1988)で説明できる。一方でエピドーサイトでは CaO/Al₂O₃ が高く、Ca に富む流体がエピドーサイト形成に関与したことが強く示唆される。これらは、玄武岩のアルバイト化に伴う Ca に富む流体の生成が、エピドーサイト形成の主要プロセスであると結論づける。すなわち、玄武岩の熱水変質過程で斜長石がアルバイト化し、Ca²⁺が流体へ供給される。その後、Ca に富む流体が割れ目・高透水性領域を移動し、溶存シリカの供給を受けながら緑簾石+石英からなるエピドーサイトを形成したと考えられる。本試料は玄武岩起源である可能性が高く、エピドーサイトは従来想定されてきたシート状岩脈群基部に限定されず、より浅部の玄武岩質地殻内でも形成されうることを示唆する。そこで本研究では、エピドーサイトおよびそれらに関連した岩石の形成条件を推定し、これらの生成条件をもとに玄武岩と熱水との反応によりエピドーサイトを形成する際の熱水組成について検討を行う。
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