講演情報

[T1-P-1]西南日本 超丹波帯-丹波帯における砕屑性ジルコン複合化学分析に基づく後期ペルム紀-ジュラ紀アジア大陸東縁部付加体成長史の解明

*安達 圭吾1、青木 翔吾1、福山 繭子2、昆 慶明3、土屋 裕太4 (1. 秋田大学大学院 国際資源学研究科、2. 秋田大学大学院 理工学研究科、3. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター、4. 蒜山地質年代学研究所)
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キーワード:

砕屑性ジルコン、U–Pb年代、微量元素、Hf同位体比


 後期ペルム紀〜前期三畳紀の東アジア大陸縁辺では, 中央アジア造山帯 (CAOB)東部と北中国地塊 (NCC)の衝突, および南中国地塊 (SCC)とNCCの衝突により, 広域的なテクトニック再編がなされた (e.g., Eizenhöfer et al., 2014). しかし, このような東アジア大陸縁辺の再編過程において, 後期ペルム紀~ジュラ紀における原始日本弧の付加体形成場については, 堆積物供給源の観点からその古地理的な位置が十分に制約されていない. 本研究では, 西南日本の後期ペルム紀~ジュラ紀付加体である超丹波帯および丹波帯に着目し, 陸源性砕屑岩中の砕屑性ジルコンのU–Pb年代測定, 微量元素組成分析, Hf同位体分析を行った. そして,得られた砕屑性ジルコンの年代学的・地球化学的特徴から後背地のテクトニクスや火成活動史を復元し, さらに周辺大陸地塊の既存火成岩記録と比較することで, 砂岩の供給源を制約し, 約1億年間にわたる付加体形成場の古地理変遷を復元した. 本研究で得られた砕屑性ジルコン年代およびHf同位体組成は, 砂岩の堆積年代に応じて明瞭に異なる特徴を示す. 上部ペルム~中部三畳系砂岩は, 300–240 Maに単峰性の年代ピークを示す. 上部ペルム系砂岩のεHf (t)値は主に正の値を示し, 多くは+5~+15の範囲に入ることから, 未成熟な島弧地殻の火成活動が主要な供給源であったと考えられる. 一方で, 一部のジルコンは−10~0程度の低いεHf (t)値を示し, 未成熟な島弧地殻成分を主体としつつも, 成熟した大陸地殻成分の寄与を伴っていた可能性がある. このような負のεHf (t)値を示すジルコンの寄与は, 下部~中部三畳系砂岩でより顕著となり, 時間の経過とともに成熟した大陸地塊成分の寄与が増加したことを示唆する. これに対して, 中部~上部三畳系砂岩では, U–Pb年代分布において300–200 Maと560–480 Maの二つの主要な年代集団からなるバイモーダルな特徴が認められる. 300–240 Maのジルコンは下部〜中部三畳系砂岩と同様のεHf (t)値を示す一方で,230–200 Maのジルコン集団は正のεHf (t)値を示し, 560–480 Maのカンブリア紀ジルコン集団は, −10~0の負~中立的なεHf (t)値を示す. また,一部のカンブリア紀ジルコンは, HREEの枯渇や特徴的なCe/U比・Th/U比を示し, ザクロ石を伴うSタイプ花崗岩またはミグマタイトに由来する可能性がある (Roberts et al., 2024). このようなジルコン集団は, 東部CAOBのBureya–Jiamusi–Khanka Block (BJKB)に分布するSタイプ花崗岩体および高温変成岩体 (Mashan Complexなど)に対応する (Yang et al., 2022).ジュラ系砂岩は, 全ての層準でペルム紀〜ジュラ紀 (290–160 Ma)に年代ピークが認められる. しかし, 層序的上位に向かって古原生代ジルコン (2000–1700 Ma)の割合が増加する傾向が認められる. また, Hf同位体組成にも大きな変化が認められ, 290–160 Maの年代を示すジルコン集団のεHf (t)値は, 下部ジュラ系砂岩の+5~+15から, 上部ジュラ系砂岩の−10~−25へと大きく低下する. 中部〜上部ジュラ系砂岩における古原生代ジルコンの増加に加え,ペルム紀〜ジュラ紀ジルコン集団に認められる著しく負のεHf(t)値は,現在の朝鮮半島を含むNCC東縁の古い大陸地殻の影響を示唆する. 以上の結果は, 後期ペルム紀~ジュラ紀にかけて, 原始日本弧の付加体形成場に対する堆積物供給源が大きく変化したことを示す. 後期ペルム紀~中期三畳紀頃, 付加体は主に若い島弧地殻に由来するペルム紀〜三畳紀火成活動の影響下にあり, 時間の経過とともにBJKBに近接した供給源からの砕屑物を受けるようになったと考えられる. 中期~後期三畳紀には, 供給源はBJKB縁辺へ移動し, カンブリア紀Sタイプ花崗岩およびミグマタイトに由来するジルコンが供給されたと解釈される. さらにジュラ紀には, 供給源は現在の朝鮮半島を構成する大陸地殻へ移動したと推定される.このような供給源の変化, すなわちBJKBを主とする東部CAOBからNCCを主とする朝鮮半島地殻側への遷移は, 後期三畳紀~前期ジュラ紀において東アジア縁辺に大規模な左横ずれ断層が発達し, 原始日本付加体が相対的に南方へ移動したことを示唆する.
【引用文献】[1] Eizenhöfer et al., (2014), Tectonics, 33, 441-463.
[2] Roberts et al., (2024), Earth and Planetary Science Letters, 633, 118638
[3] Yang et al., (2022), International Geology Review, 65:8, 1289-1319

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