講演情報
[T1-P-2]糸魚川-静岡構造線最北部において新たに発見した横川断層露頭の地質構造と断層発達史
*千葉 響1、宮脇 昌弘1 (1. 原子力規制庁)
キーワード:
糸魚川―静岡構造線、北部フォッサマグナ、長野県、断層岩、破砕帯
1.はじめに
北部フォッサマグナの形成と日本海拡大は、糸魚川-静岡構造線(ISTL)の活動と関係すると考えられている(例えば、高橋,2006;中嶋ほか,2021)。近年、ISTL最北部の横川断層では複数の活動段階が提案されているが、それらを制約する年代情報は乏しく、断層を切断する構造(胴切り断層)の実態も不明な点が多い(千葉ほか,2025)。本研究では、新たに確認された横川断層の露頭(トイガ沢露頭)を対象に詳細な構造記載を行い、横川断層の発達過程を明らかにした。
2.地質概要
調査地域は長野県小谷村北小谷のトイガ沢沿いに位置する。本地域では、横川断層の西側にジュラ系来馬層群蒲原沢層の堆積岩及び古第三系石坂層の流紋岩質凝灰岩、東側に新第三系中新統山本層の安山岩及び安山岩礫岩が分布し、これらの地層を安山岩・流紋岩の岩脈が貫入する(長森ほか,2010)。なお、一部の中新統は横川断層の西側にも分布する。近年の研究では、断層の切断関係、破砕部における複合面構造の解析等から、断層活動史は正断層・左横ずれ・右横ずれの3段階に区分されている(長森ほか,2010;千葉ほか,2025)。
3.実施内容
本研究では、トイガ沢露頭及びその周辺の地質構造の解明を目的として、トイガ沢露頭周辺におけるルートマップ作成、トイガ沢露頭の詳細スケッチ作成、断層面・条線・鉱物脈の記載、断層岩試料の詳細観察を行った。断層岩の区分は高木・小林(1996)に従った。
4.断層露頭の観察結果
トイガ沢露頭では、横川断層の西側に分布する石坂層流紋岩質凝灰岩と東側に分布する山本層安山岩の境界をなす主断層の破砕帯に斜長石に富む安山岩(斜長石安山岩)及び輝石安山岩が貫入する。このうち、斜長石安山岩は主断層に沿って貫入し、厚さは2m以上を有する。また、主断層の破砕帯は露頭上部において、輝石安山岩岩脈により貫入され連続しない。さらに、露頭下部において、主断層の破砕帯は東北東−西南西走向の断層(胴切り断層)によって切断される。胴切り断層は露出範囲が限られ、主断層の破砕帯と石坂層流紋岩質凝灰岩の境界として観察される。
山本層安山岩は大部分がプロトカタクレーサイト化しているのに対し、石坂層流紋岩質凝灰岩は断層近傍を除いて割れ目の少ない堅硬な岩体からなる。主破砕部は、幅約30cmの山本層安山岩のウルトラカタクレーサイト及び幅約1cmの範囲で斜長石安山岩のウルトラカタクレーサイトからなる。斜長石安山岩岩脈は、主すべり面に接する幅約10cmの範囲で部分的に破砕を受けて角礫化するが、破砕の程度は弱い。露頭上部に分布する輝石安山岩岩脈の貫入境界は破砕を受けていない。一方、胴切り断層に伴う主破砕部の幅は約40cmであり、主すべり面に沿って幅15cmの範囲でウルトラカタクレーサイト化している。
主断層の走向・傾斜は露頭内で変化し、北西-南東走向で高角に北東又は南西へ傾斜する区間と北北東-南南西走向で高角に西北西へ傾斜する区間が認められる。条線は高角度でプランジするものが卓越し、運動センスは正断層センスと逆断層センスを示す。胴切り断層は東北東-西南西走向で高角に南南東へ傾斜し、条線は低角度で東へプランジする。胴切り断層の運動センスは右横ずれセンスを示す。
5.考察及び今後の課題
本露頭では、主断層が輝石安山岩岩脈に貫入されることから、輝石安山岩の貫入以降、本露頭においてISTLは活動していないと考えられる。また、主断層に沿って貫入する斜長石安山岩岩脈は主断層の活動に伴う破砕を受けるものの、その程度が弱いことから、斜長石安山岩岩脈はISTLの活動史のうち後期に貫入した可能性が示唆される。胴切り断層は主断層を切断する状況は確認できたものの、斜長石安山岩岩脈との関係は露欠しているため確認できなかった。しかし、斜長石安山岩岩脈の延長方向の河床部に堅硬な石坂層流紋岩質凝灰岩が連続して分布することから、斜長石安山岩岩脈は胴切り断層によって切断されている可能性が高い。以上より、胴切り断層はISTLの最終活動後に活動したと推定される。
今後、露頭周辺に分布する安山岩岩脈の年代値を特定し、ISTL最北部の最終活動時期を明らかにする。さらに、断層及び鉱物脈を用いた古応力解析等を実施し、ISTL最北部及び胴切り断層のテクトニクスを解明する。
6.引用文献
千葉ほか,2025,地質雑,131,361-376.,長森ほか,2010,地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),産総研地質調査総合センター,130p.,中嶋ほか,2021,地質雑,127,165-188.,高橋,2006,地質雑,112,14-32.,高木・小林,1996,地質雑,102,170-179.
北部フォッサマグナの形成と日本海拡大は、糸魚川-静岡構造線(ISTL)の活動と関係すると考えられている(例えば、高橋,2006;中嶋ほか,2021)。近年、ISTL最北部の横川断層では複数の活動段階が提案されているが、それらを制約する年代情報は乏しく、断層を切断する構造(胴切り断層)の実態も不明な点が多い(千葉ほか,2025)。本研究では、新たに確認された横川断層の露頭(トイガ沢露頭)を対象に詳細な構造記載を行い、横川断層の発達過程を明らかにした。
2.地質概要
調査地域は長野県小谷村北小谷のトイガ沢沿いに位置する。本地域では、横川断層の西側にジュラ系来馬層群蒲原沢層の堆積岩及び古第三系石坂層の流紋岩質凝灰岩、東側に新第三系中新統山本層の安山岩及び安山岩礫岩が分布し、これらの地層を安山岩・流紋岩の岩脈が貫入する(長森ほか,2010)。なお、一部の中新統は横川断層の西側にも分布する。近年の研究では、断層の切断関係、破砕部における複合面構造の解析等から、断層活動史は正断層・左横ずれ・右横ずれの3段階に区分されている(長森ほか,2010;千葉ほか,2025)。
3.実施内容
本研究では、トイガ沢露頭及びその周辺の地質構造の解明を目的として、トイガ沢露頭周辺におけるルートマップ作成、トイガ沢露頭の詳細スケッチ作成、断層面・条線・鉱物脈の記載、断層岩試料の詳細観察を行った。断層岩の区分は高木・小林(1996)に従った。
4.断層露頭の観察結果
トイガ沢露頭では、横川断層の西側に分布する石坂層流紋岩質凝灰岩と東側に分布する山本層安山岩の境界をなす主断層の破砕帯に斜長石に富む安山岩(斜長石安山岩)及び輝石安山岩が貫入する。このうち、斜長石安山岩は主断層に沿って貫入し、厚さは2m以上を有する。また、主断層の破砕帯は露頭上部において、輝石安山岩岩脈により貫入され連続しない。さらに、露頭下部において、主断層の破砕帯は東北東−西南西走向の断層(胴切り断層)によって切断される。胴切り断層は露出範囲が限られ、主断層の破砕帯と石坂層流紋岩質凝灰岩の境界として観察される。
山本層安山岩は大部分がプロトカタクレーサイト化しているのに対し、石坂層流紋岩質凝灰岩は断層近傍を除いて割れ目の少ない堅硬な岩体からなる。主破砕部は、幅約30cmの山本層安山岩のウルトラカタクレーサイト及び幅約1cmの範囲で斜長石安山岩のウルトラカタクレーサイトからなる。斜長石安山岩岩脈は、主すべり面に接する幅約10cmの範囲で部分的に破砕を受けて角礫化するが、破砕の程度は弱い。露頭上部に分布する輝石安山岩岩脈の貫入境界は破砕を受けていない。一方、胴切り断層に伴う主破砕部の幅は約40cmであり、主すべり面に沿って幅15cmの範囲でウルトラカタクレーサイト化している。
主断層の走向・傾斜は露頭内で変化し、北西-南東走向で高角に北東又は南西へ傾斜する区間と北北東-南南西走向で高角に西北西へ傾斜する区間が認められる。条線は高角度でプランジするものが卓越し、運動センスは正断層センスと逆断層センスを示す。胴切り断層は東北東-西南西走向で高角に南南東へ傾斜し、条線は低角度で東へプランジする。胴切り断層の運動センスは右横ずれセンスを示す。
5.考察及び今後の課題
本露頭では、主断層が輝石安山岩岩脈に貫入されることから、輝石安山岩の貫入以降、本露頭においてISTLは活動していないと考えられる。また、主断層に沿って貫入する斜長石安山岩岩脈は主断層の活動に伴う破砕を受けるものの、その程度が弱いことから、斜長石安山岩岩脈はISTLの活動史のうち後期に貫入した可能性が示唆される。胴切り断層は主断層を切断する状況は確認できたものの、斜長石安山岩岩脈との関係は露欠しているため確認できなかった。しかし、斜長石安山岩岩脈の延長方向の河床部に堅硬な石坂層流紋岩質凝灰岩が連続して分布することから、斜長石安山岩岩脈は胴切り断層によって切断されている可能性が高い。以上より、胴切り断層はISTLの最終活動後に活動したと推定される。
今後、露頭周辺に分布する安山岩岩脈の年代値を特定し、ISTL最北部の最終活動時期を明らかにする。さらに、断層及び鉱物脈を用いた古応力解析等を実施し、ISTL最北部及び胴切り断層のテクトニクスを解明する。
6.引用文献
千葉ほか,2025,地質雑,131,361-376.,長森ほか,2010,地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),産総研地質調査総合センター,130p.,中嶋ほか,2021,地質雑,127,165-188.,高橋,2006,地質雑,112,14-32.,高木・小林,1996,地質雑,102,170-179.
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン
