講演情報
[T1-P-4]飛騨帯に分布する双六片状花崗岩のジルコンU-Pb年代
*黒澤 翔太1、常盤 哲也1、北野 なつこ1、森 宏1 (1. 信州大学)
キーワード:
ジルコンU-Pb年代、飛騨帯、飛騨花崗岩類
西南日本内帯の北東端に位置する飛騨帯は,東アジア大陸地殻の断片として,日本列島形成史を議論する上で極めて重要な情報を保持している.飛騨帯の基盤は主に飛騨変成岩類,宇奈月変成岩類,およびこれらに貫入する飛騨花崗岩類からなり,飛騨花崗岩類は,飛騨古期花崗岩類(約260~230 Ma)と飛騨新期花崗岩類(約200~180 Ma)に大別される(Takahashi et al., 2010).ただし,既存の年代データの多くが,従来の K–Ar法や Rb–Sr法で得られたものであり,飛騨花崗岩類の定置後に被った熱イベントによる年代の若返りや,熱水影響が懸念されている.そのため,高い閉鎖温度を有するジルコンU–Pb年代測定法による再検討が進められている(e.g., Yamada et al., 2021).本研究対象の双六片状花崗岩は,飛騨新期花崗岩中の捕獲岩体として産し,岩相・産状から飛騨古期花崗岩類と推測されていたが(原山ほか, 1991),詳細な形成年代は不明であった.そこで本研究では,双六片状花崗岩の形成年代を明らかにするため,岩体内の3地点から試料を採取し,LA-ICP-MSを用いたジルコンU‒Pb年代測定を行った.
年代測定の結果, 356.3 ± 3.0 Ma,363.6 ± 6.5 Ma,および348.5 ± 3.1 Maの加重平均年代(誤差2σ)が得られ,本岩体を形成した火成活動が約370~345 Ma(デボン紀後期~石炭紀前期)に及ぶことが明らかとなった.測定したジルコン粒子の多くは自形〜半自形でオシラトリー累帯構造を呈し,Th/Uは0.41〜1.21と高いことから,得られたジルコン年代は火成年代を示すと考えられる.また,全岩化学組成分析の結果,アルミナ飽和度は0.91であり,I-type花崗岩に分類される.
これらの結果は,双六片状花崗岩と飛騨花崗岩類の火成活動との間に,約1億年の年代差が存在することを示す.また,約370~345 Maに飛騨帯周辺で沈み込みに伴う島弧火成活動が存在した可能性を示唆する.しかし,日本列島における古生代花崗岩類の報告は, 黒瀬川帯や南部北上帯に代表される約 420~400 Ma(およそシルル紀後期~デボン紀前期)と,飛騨帯や舞鶴帯に分布する約 310~250 Ma(およそ石炭紀後期~ペルム紀後期)に大別され,その間の約400~310 Maの花崗岩類はほとんど報告されていない(中島, 2018).一方で,東アジア東縁部には小規模であるが,デボン紀後期~石炭紀前期の火成活動の報告がある.双六片状花崗岩の起源を検討するため,東アジア東縁部の各地質体と比較した.
北中国地塊,南中国地塊,Jiamusi地塊,Khanka地塊,およびBureya地塊では,デボン紀後期〜石炭紀前期は火成活動の静穏期とされている(e.g., Wu et al., 2011).これらの地域で局所的に報告されている同時期の火成岩は,受動的大陸縁辺や伸長テクトニクス環境を示すA-type花崗岩類が主体であり,双六片状花崗岩に特徴づけられるI-type花崗岩類の報告は極めて少ない.したがって,これらの地塊が双六片状花崗岩の起源とは考えにくい.
一方, Erguna地塊,Xing'an地塊,およびSongnen-Zhangguangcai地塊では,約360〜330 Maに古アジア海の沈み込みに由来する島弧花崗岩類が報告されている(e.g., Liu et al., 2017).特にSongnen-Zhangguangcai地塊南東部では,ペルム紀〜ジュラ紀花崗岩類を主体としつつ,デボン紀後期〜石炭紀前期花崗岩類が点在しており,飛騨帯における飛騨花崗岩類と双六片状花崗岩の関係と類似する.さらに,日本列島の基盤が大陸起源であり,日本海拡大を経て現在の位置に至ったことを考慮すると,より内陸側のErguna地塊やXing'an地塊よりもSongnen-Zhangguangcai地塊南東部が起源である可能性が高い.
引用文献: 原山ほか, 1991,地質調査所, 190; Liu et al., 2017. Gondwana Res., 43, 123–148. 中島 隆, 2018, 地質学雑誌, 124, 603–625; Takahashi et al., 2010, Gondwana Res., 17, 102–115; Wu et al., 2011, Jour. of Asian Earth Sci., 41, 1–30; Yamada et al., 2021, Jour. of Mineral. and Petrol. Sci., 116, 61–66.
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