講演情報
[T1-P-7]愛媛県松山市南東の中央構造線沿いのブロック構造の形成過程について
*窪田 安打1、竹下 徹2 (1. 応用地質株式会社、2. 岩手大学)
キーワード:
中央構造線、運動史、新第三紀、砥部フェーズ
1. 研究経緯 愛媛県松山市南東には、北傾斜のMTLに相当する砥部衝上断層に対して、南へ低角度で傾斜する北谷―花山衝上断層が分布しており、両断層に挟まれたブロックについて、竹下(1993,2010)は日本海拡大期における砥部フェーズ(15Ma)の圧縮場でポップアップした構造であると考察した。武田(1996)は左横ずれのセンスをもってsqueeze-upされたものであり、形成時期は砥部フェーズと考察した。筆者らは、砥部フェーズの運動像を研究する目的として、このブロックの形成過程を検討した。
2. 断層岩の構造解析
松山市久谷町の久谷川露頭(露頭A)南側の下部中新統の久万層群(砂岩礫岩層)と北側の上部白亜系の和泉層群(砂岩泥岩層)が断層接触しており、約3.3km西方に位置する砥部衝上断層から連続するMTLである。断層面の走向傾斜はEW 35°Nであり、gougeに条線や複合面構造が発達しており、久万層群のcataclasite(幅0.4~1.0m程度)を切る。研磨片観察によりtop-to-the NW~WNWの変形センスが確認された。久万層群のcataclasiteには、top-to-the SEの変位センスが確認された。 松山市窪野町の林道(露頭B)南側の三波川帯のマイロナイトが北側の和泉層群に衝上した断層が分布しており、北谷衝上(武田, 1996)と称されている。断層面の走向傾斜はN52°E 66°Sであり、和泉層群および三波川帯のマイロナイトが破砕したcataclasiteが幅1m程度で分布する。更に、露頭上部では、ほぼ水平の断層が前述の断層を切る構造が認められる。露頭及び研磨片における複合面構造および条線の解析から、前者はtop-to-the NEの変位センス、後者はtop-to-the Nの変位センスが確認された。東温市上林の林道(露頭C)北谷衝上の断層露頭であり、北側の和泉層群に南側の久万層群の礫層が衝上しており、更に礫層の上に三波川帯のマイロナイトが衝上している。和泉層群と久万層群の衝上断層は南~南東へ10-20°傾斜する低角度断層である。断層沿いのgouge にtop-to-the Eの変位センスが確認された。更に、久万層群とマイロナイト間の断層は南東へ10-20°傾斜しており、top-to-the NNEの変位センスが確認された。
3. 考察
露頭A及び窪田・竹下(2025)が示したMTL沿いの久万層群明神層の変形構造に基づくと、久万層群堆積期(18~15Ma)(新正・折橋, 2021など)の後にMTLにおいてtop-to-the SEの変位センスの右ずれ逆断層運動があったものと考察される。また、露頭B,Cの北谷衝上断層については、2つの断層運動として、top-to-the NE~Eの剪断センスの断層運動の後にtop-to-the N~NNEの変位センスの衝上断層が切る関係が認められる。露頭Cの久万層群礫岩は三波川帯結晶片岩由来の礫からなり、新第三紀の久万層群古岩屋層相当とされているため(新正・折橋, 2021など)、露頭Aの断層運動時期と同等と考えられる。更に、MTL及び北谷衝上は石鎚層群(14-10Ma)の岩脈の貫入を受けていることとから、久万層群古岩屋層堆積後~砥部フェーズ(15Ma)の断層運動であると考えられる。上記の断層運動のうち、北傾斜のMTLと南傾斜の北谷衝上断層が、同時期にそれぞれtop-to-the SEとtop-to-the N~NNEの変位センスを示すことは、両断層に挟まれたブロックが著しい短縮により相対的に東側へ絞り出されるように移動した場合に生じるセンスである。また、北谷衝上断層の前期運動であるtop-to-the NE~Eは、MTL沿いの左ずれの断層運動が部分的に生じていたものと推定される。竹下(1993, 2010)は、MTL沿いの久万層群明神層にENE-WSW方向の水平な軸を持つ転倒褶曲を報告しており、窪田・竹下(2025)はMTL沿いの久万層群明神層が右ずれ逆断層の変位センスをもつcataclasiteを報告している。これらは、砥部フェーズがNW-SE方向に軸を持つ圧縮場であったことを示している。また、北谷衝上の前期運動はKinoshita and Yamaji(2021)は日本海拡大に伴う時計廻り回転の前の左ずれ成分を伴う島弧平行伸長に関連する可能性がある。(引用文献) Kinoshita & Yamaji, 2021, Isl. Arc, 30.;窪田・竹下, 2025 日本地質学会学術大会講演要旨.;新正・折橋, 2021, 地雑, 127, 595-603.; 武田, 1996, テクトニクスと変成作用.; 竹下, 1993, 地論, 42, 225-244.; 竹下, 2010, 地学雑誌, 119, 347-361.
2. 断層岩の構造解析
松山市久谷町の久谷川露頭(露頭A)南側の下部中新統の久万層群(砂岩礫岩層)と北側の上部白亜系の和泉層群(砂岩泥岩層)が断層接触しており、約3.3km西方に位置する砥部衝上断層から連続するMTLである。断層面の走向傾斜はEW 35°Nであり、gougeに条線や複合面構造が発達しており、久万層群のcataclasite(幅0.4~1.0m程度)を切る。研磨片観察によりtop-to-the NW~WNWの変形センスが確認された。久万層群のcataclasiteには、top-to-the SEの変位センスが確認された。 松山市窪野町の林道(露頭B)南側の三波川帯のマイロナイトが北側の和泉層群に衝上した断層が分布しており、北谷衝上(武田, 1996)と称されている。断層面の走向傾斜はN52°E 66°Sであり、和泉層群および三波川帯のマイロナイトが破砕したcataclasiteが幅1m程度で分布する。更に、露頭上部では、ほぼ水平の断層が前述の断層を切る構造が認められる。露頭及び研磨片における複合面構造および条線の解析から、前者はtop-to-the NEの変位センス、後者はtop-to-the Nの変位センスが確認された。東温市上林の林道(露頭C)北谷衝上の断層露頭であり、北側の和泉層群に南側の久万層群の礫層が衝上しており、更に礫層の上に三波川帯のマイロナイトが衝上している。和泉層群と久万層群の衝上断層は南~南東へ10-20°傾斜する低角度断層である。断層沿いのgouge にtop-to-the Eの変位センスが確認された。更に、久万層群とマイロナイト間の断層は南東へ10-20°傾斜しており、top-to-the NNEの変位センスが確認された。
3. 考察
露頭A及び窪田・竹下(2025)が示したMTL沿いの久万層群明神層の変形構造に基づくと、久万層群堆積期(18~15Ma)(新正・折橋, 2021など)の後にMTLにおいてtop-to-the SEの変位センスの右ずれ逆断層運動があったものと考察される。また、露頭B,Cの北谷衝上断層については、2つの断層運動として、top-to-the NE~Eの剪断センスの断層運動の後にtop-to-the N~NNEの変位センスの衝上断層が切る関係が認められる。露頭Cの久万層群礫岩は三波川帯結晶片岩由来の礫からなり、新第三紀の久万層群古岩屋層相当とされているため(新正・折橋, 2021など)、露頭Aの断層運動時期と同等と考えられる。更に、MTL及び北谷衝上は石鎚層群(14-10Ma)の岩脈の貫入を受けていることとから、久万層群古岩屋層堆積後~砥部フェーズ(15Ma)の断層運動であると考えられる。上記の断層運動のうち、北傾斜のMTLと南傾斜の北谷衝上断層が、同時期にそれぞれtop-to-the SEとtop-to-the N~NNEの変位センスを示すことは、両断層に挟まれたブロックが著しい短縮により相対的に東側へ絞り出されるように移動した場合に生じるセンスである。また、北谷衝上断層の前期運動であるtop-to-the NE~Eは、MTL沿いの左ずれの断層運動が部分的に生じていたものと推定される。竹下(1993, 2010)は、MTL沿いの久万層群明神層にENE-WSW方向の水平な軸を持つ転倒褶曲を報告しており、窪田・竹下(2025)はMTL沿いの久万層群明神層が右ずれ逆断層の変位センスをもつcataclasiteを報告している。これらは、砥部フェーズがNW-SE方向に軸を持つ圧縮場であったことを示している。また、北谷衝上の前期運動はKinoshita and Yamaji(2021)は日本海拡大に伴う時計廻り回転の前の左ずれ成分を伴う島弧平行伸長に関連する可能性がある。(引用文献) Kinoshita & Yamaji, 2021, Isl. Arc, 30.;窪田・竹下, 2025 日本地質学会学術大会講演要旨.;新正・折橋, 2021, 地雑, 127, 595-603.; 武田, 1996, テクトニクスと変成作用.; 竹下, 1993, 地論, 42, 225-244.; 竹下, 2010, 地学雑誌, 119, 347-361.
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