講演情報
[T1-P-12]太古代クラトン内部における鉱物充填引張脈の古応力場と岩相依存的な脈分布:南アフリカ・オークニー地震震源域近傍で掘削された岩石コア Hole A の解析
*濱垣 貴也1、橋本 喜孝1、細川 貴弘1、小笠原 宏2 (1. 高知大学、2. 立命館大学)
キーワード:
応力解析、鉱物充填引張脈、岩相依存性、太古代クラトン、脈間隔分布
安定した太古代クラトン内部で発生するプレート内地震は、長期にわたり冷却・安定化した地殻が、どのような応力条件下で脆性破壊を生じるのかを理解する上で重要である。本研究では、南アフリカ・カープヴァールクラトン上のウィットウォーターズランド盆地に位置し、2014年 M5.5 オークニー地震震源域近傍で掘削された岩石コアを対象として、鉱物充填引張脈の方位と分布から、古応力場および岩相による脈発達の違いを検討した。本研究で用いた岩石コアは、ICDP DSeis 計画(Drilling into Seismogenic zones of M2.0–M5.5 earthquakes in deep South African gold mines)によって、地下約2.9 kmの坑道から余震発生域に向けて掘削された全長817 mのコアであり、以下 Hole A と呼ぶ。Hole A は主に、変成シルト岩層、珪岩層、クラウン溶岩層、および貫入岩層から構成される。Hole A に発達する鉱物充填引張脈の方位・傾斜データを用いて、混合 Bingham 分布解析を行った。その結果、脈方位データは、2つの主要な古応力場、すなわちクラスタ1およびクラスタ2の混合として最もよく説明された。σ1 は最大主応力であり、岩石を最も強く圧縮する方向を示す。一方、σ3 は最小主応力であり、引張脈の開口方向と密接に関係する。引張脈は σ3 に直交する面として形成されるため、脈面の極はおおむね σ3 の方向を示す。クラスタ1では σ1 がほぼ鉛直、σ3 がほぼ水平となり、正断層型応力場として解釈される。一方、クラスタ2では σ1 がほぼ水平、σ3 が鉛直寄りとなり、逆断層型応力場として解釈される。特に、クラスタ1の σ1 とクラスタ2の σ3 はともに鉛直寄りであり、クラスタ1の σ3 とクラスタ2の σ1 はともに水平寄りである。すなわち、両クラスタは最大主応力軸と最小主応力軸が入れ替わるような関係を示す。このような応力軸の交換は、地震サイクルに伴う応力状態の変化、または間隙流体圧の変化を反映している可能性がある。応力型を岩相ごとに比較すると、変成シルト岩および珪岩では正断層型が優勢である。一方、貫入岩では正断層型よりも逆断層型が多く含まれる。これは、貫入岩中では水平方向の圧縮と、鉛直寄りの σ3 をもつ逆断層型応力場に対応する脈が相対的に多く記録されたことを示す。既存のコア記載では、Hole A に変成堆積岩、クラウン溶岩層、ドレライト質シル貫入岩が分布することが示されており、これらの岩相差は力学的性質の違いにも反映される可能性がある。したがって、貫入岩における逆断層型応力記録の偏りも、岩相ごとの物性差と関連して保存された可能性がある。そこで本研究では、応力型の本数比に加えて、岩相ごとの脈間隔 spacing 分布にも着目した。各岩相に属する脈を深度順に並べ、隣り合う脈どうしの間隔を求めた。さらに、ある spacing 以上の脈間隔がいくつ存在するかを累積頻度として数え、spacing と累積頻度の関係を両対数で比較することで、脈分布のフラクタル的傾向を検討した。その結果、変成シルト岩と貫入岩では、脈間隔分布に比較的明瞭なフラクタル的傾向が認められた。一方、珪岩は脈本数が多いにもかかわらず、両対数グラフ上での直線性が相対的に低く、脈間隔の分布は一つの単純なスケール則では説明しにくい。クラウン溶岩層でも高い直線性が得られたが、データ数が少ないため参考値として扱う。特に貫入岩では、短い spacing が卓越し、同時に少数の大きな spacing も含まれる。このことは、貫入岩中の脈分布が均一ではなく、密集区間と疎な区間を伴って発達したことを示す。さらに、貫入岩では逆断層型が正断層型より多く含まれるため、貫入岩は脈密度が高い岩相であるだけでなく、逆断層型応力場に対応する脈が相対的に多く記録された岩相である可能性がある。以上より、Hole A に記録された鉱物充填引張脈は、正断層型と逆断層型の2つの応力場の混合として説明されると同時に、脈および応力型の分布は岩相ごとの物性差に影響されていると考えられる。特に、変成シルト岩と貫入岩では脈間隔分布にフラクタル的傾向が認められ、脈が均一ではなく、不均質に発達した可能性が高い。本研究は、太古代クラトン内部の古応力記録が、応力場そのものだけでなく、岩相に規制された破壊・脈形成様式によって選択的に保存されることを示唆する。
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