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[T1-P-14]三重県一志層群(下部中新統)の小断層から推定した複数時階の応力軌跡

*木下 英樹1,2、山路 敦1 (1. 京都大学、2. 応用地質株式会社)
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キーワード:

小断層解析、古応力、Hough法、応力軌跡、テクトニック時階

 日本海拡大期の西南日本孤では,グラーベンの方向に多様性があった(e.g., 楠橋・山路 2001; 小林ほか 2005; Itoh et al. 2006; Haji & Yamaji 2020; Kinoshita & Yamaji 2021).ではその時,弧内の応力場はどうなっていたのだろうか.その答えはいまだ不明確である.
広域応力場を知るには,応力情報の多地域での蓄積とその時期制約が必要である.西南日本弧の一部地域では,拡張性亀裂による応力情報の蓄積がすすんでいる(e.g., 山元 1991; 羽地・佐藤 2020; 安邊・佐藤 2021).しかし岩脈のような時期制約可能な応力履歴は空間的偏在性が強いため,小断層のように時期制約に弱みがあるものの,より普遍的に分布する構造を活用することで弧内応力情報の蓄積に貢献できると考えられる.
そこで本研究では, そうした構造盆地の一つである前期中新世の三重県一志堆積盆において小断層を多数観察し,Yamaji et al. (2024)の方法で5時階の応力軌跡図を描くことができた.この堆積盆は中央構造線の北側に位置する差し渡し20 kmほどの盆地であり,堆積年代が19Ma前後から17Ma前後の一志層群で埋められている(Hoshi et al., 2019).この地層はほとんどの場所で傾斜が緩いため,今回われわれは小断層データの頃動補正を行わなかった.小断層データは21カ所で計614条得られた. そのうちフルデータが156条に留まったため, 不完全データを活用できるHough法(Yamaji et al., 2006; Sato, 2006)を適用した. 堆積盆規模で広がる応力として得られたのは,①WNW-ESE引張,②N-S引張,③NW-SE圧縮,④N-S軸性圧縮,⑤NE-SW軸性圧縮という5時階の応力場である.しかし小断層では,母岩の年代以降の応力という時代制約しかないため,間接的にどの時期の応力場であるかを推定する必要がある.
上記の応力は一志層群の様々な層準の小断層から検出されたが, ①WNW-ESE引張だけは例外で,下部層でのみ検出された. この引張場は一志層群堆積盆形成時の応力(Kinoshita & Yamaji, 2021)と調和的な引張方向を示すことから, 堆積盆形成時の応力場である可能性が高い. 堆積盆縁辺部では引張方向が堆積盆の南東縁を画する地質図規模断層(白米山断層)に沿うようにカーブしており, この断層によるローカルな影響が窺える. ②N-S引っ張り応力は,生駒山地南部の15 Ma岩脈群が示す同方向の正断層型応力(羽地, 2026)に対比可能である.ところで山路ほか(2023)は, 同断層の断層ガウジのK-Ar年代から10 Ma頃の同断層の再活動を推定し,宍道褶曲帯(e.g., Kim et al., 2020)を形成した南北圧縮が一志地域でも検出されたものと考えた.今回,一志層群の小断層から推定された圧縮応力場(③NW-SE圧縮,④N-S軸性圧縮,⑤NE-SW軸性圧縮)のうち,水平軸性圧縮④⑤は逆断層型応力と横ずれ断層型応力のいずれにもなり得るが、褶曲を作りやすいのは③である.したがって,上記の三者のなかでは③が最も宍道褶曲の時期のものらしい.ただし,宍道褶曲帯の分布する日本海沿岸から一志地域にかけての応力勾配を想定すれば④⑤が当時の応力場である可能性もある.

文献 安邊・佐藤, 2021, 地質雑 127, 709–725; Haji & Yamaji, 2020, Island Arc 29, e12366; 羽地・佐藤, 2020, 地質雑 126, 621–630; Haji, 2026, JpGU, SGL27-P11; Hoshi et al., 2019, Chem. Geol. 530, 119333; Itoh et al., 2006, J. Asian Earth Sci. 27, 933–942; Kim et al., 2020, Basin Res. 32, 613–635; Kinoshita & Yamaji, 2021, Island Arc 30, e12418; 小林ほか, 2005, 地質雑 111, 286–299; 楠橋・山路, 2001, 地質雑 107, 26–40; Sato, 2006, Tectonophysics 421, 319–330; Yamaji et al., 2006, J. Struct. Geol. 28, 980–990; 山路ほか, 2023, JpGU, SCG54-P01; Yamaji et al., 2024, J. Struct. Geol. 185, 105186; 山元, 1991, 地調月報 42, 131–148.

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