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[T1-P-18]活断層と周辺の小断層から推定された鈴鹿山脈南部周辺の逆断層型応力★2026年度学生優秀発表賞受賞★

*豊留 一輝1、佐藤 活志1 (1. 京都大学大学院理学研究科)
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キーワード:

小断層、応力逆解析、活断層、鈴鹿西縁断層帯、鈴鹿東縁断層帯、第四紀


 若狭湾,大阪湾,伊勢湾を結ぶようにしてできる三角形の活断層密集地域は近畿三角帯と呼ばれ(Huzita, 1962),横ずれ断層と南北性の逆断層が混在して分布する.Tsutsumi et al. (2012)は,近畿三角帯から糸魚川静岡構造線にかけて分布する活断層群に対して応力逆解析を行い,ESE-WNW圧縮の軸性圧縮応力によってほぼ全ての活断層の運動センスを説明できることを示した.一方で,地震学的データに基づく応力逆解析では,近畿三角帯内部においても現在の応力場は空間的に変化していることが分かっている(例えば,Uchide et al., 2022).しかし,10〜100万年という地質学的な時間スケールにおける近畿三角帯内部の応力の空間不均一性について検討した研究はこれまでなされていない.そこで本研究では第四紀以降に活動した主断層とその周辺に発達する小断層という地質学的なデータを用いて,鈴鹿山脈南部周辺の応力を推定した.

 鈴鹿山脈は近畿地方東部の南北方向に延びる山脈であり,同じく南北方向に走る鈴鹿東縁断層帯と鈴鹿西縁断層帯の逆断層運動によって隆起してきたと考えられている.鈴鹿東縁断層帯の東方には東海層群が,鈴鹿西縁断層帯の西方には古琵琶湖層群が分布している.

 本研究では,鈴鹿西縁断層帯南部を構成する綿向山断層,鈴鹿東縁断層帯南部を構成する菰野断層,尾高断層について調査を行った.また,綿向山断層西方の古琵琶湖層群と菰野断層東方の東海層群中の小断層の方位データを収集した.調査範囲の東海層群および古琵琶湖層群は,共に鮮新世から更新世にかけての堆積物である(原山ほか,1989;宮村ほか,1981).調査の結果,綿向山断層の露頭を7地点,菰野断層,尾高断層の露頭を計4地点で確認した.また概ね水平な古琵琶湖層群を切る小断層を23条,概ね水平な東海層群を切る小断層を9条確認した.

 これらの主断層露頭および小断層から断層スリップデータ(断層面,条線の方向,運動センス)を取得した.本研究では,①古琵琶湖層群中の小断層から取得した断層スリップデータ,②東海層群中の小断層から取得した断層スリップデータ,③全ての主断層および小断層から取得した断層スリップデータの3つのデータセットに対して応力逆解析を行った.応力逆解析においては,①②のデータセットに対しては断層の滑りやすさ(fault instability)を考慮したHough法,③のデータセットに対しては従来のHough法を用いた(Sato, 2006; Sato, 2026).応力逆解析の結果,全てのデータセットからE-W〜ESE-WNW圧縮の逆断層型応力が検出された.①②の最適応力の応力比は0.36程度,③の最適応力の応力比は0.46程度であった.

 本研究で推定された応力の主応力軸の方向はTsutsumi et al. (2012)の結果と大きくは変わらない.しかし,応力比についてはTsutsumi et al. (2012)の結果が0.09であるのに対し,本研究では0.3〜0.5程度と大きかった.この結果は,広域的には逆断層型と横ずれ型の中間的な軸性圧縮応力が働いているが,鈴鹿山脈南部周辺というより狭い範囲では応力比が中程度の逆断層型応力が働いてきたことを示している.すなわち地質学的な時間スケールにおいても近畿三角帯内部において応力は空間的に変化している可能性が示唆された.また,本研究で推定された応力は地震学的データから推定された現在の応力と概ね調和的である.鈴鹿山脈周辺に発達する小断層群が山脈隆起時の応力を記録していると仮定すると,鈴鹿山脈は現在と同様の東西圧縮の逆断層型応力のもとで隆起したと考えられる.さらに,鈴鹿山脈の隆起はおよそ1.3 Maから開始したとされていることを踏まえると(横山,1995),本研究地域では100万年以上にわたって東西圧縮の逆断層型応力が継続的に働いてきたと考えられる.

引用文献
原山ほか,1989,御在所山地域の地質(1/5万図幅),地質調査所.
Huzita, K., 1962, J. Geosci., Osaka City Univ., 6, 103-144.
宮村ほか,1981,亀山地域の地質(1/5万図幅),地質調査所.
Sato, K., 2006, Tectonophysics, 421, 319-330.
Sato, K., 2026, J. Struct. Geol., 203, 105601.
Tsutsumi et al., 2012, Geophys. Res. Lett., 39, L23303.
Uchide et al., 2022, J. Geophys. Res. Solid Earth, 127, e2022JB024036.
横山,1995,移動する湖,琵琶湖―琵琶湖の生い立ちと未来―,法政出版, 312p.

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